2023-12-13
4年ぶりに実地でも開催された
第16回3D PACS研究会
第16回3D PACS研究会が2023年12月10日(日),帝京大学板橋キャンパスおよびWebのハイブリッド形式で開催された。感染症対応により第13回〜第15回まではWebのみの開催が続いていたため,実地開催は4年ぶりとなる。今回は,テーマに「進化・多様化する医療画像への対応 〜より細かく より多様に〜」が掲げられ,4つのセッションと2題の教育講演,および協賛企業による機器展示が行われた。開会に当たり挨拶した当番世話人の小林隆幸氏(北里大学北里研究所病院)は,「フォトンカウンティングCTをはじめ,各モダリティの画像の高精細化,多様化が進んでおり,それに対応する形でさまざまな新しい技術が出てきている。今回のセッションでは新技術を多岐にわたって取り上げているので,医療画像の変化に対応するためのシステム構築の参考にしてほしい」と述べた。
セッション1「多様化するワークステーション・AI画像支援」では,代表世話人の立石敏樹氏(福井大学医学部附属病院)と武田聡司氏(国立病院機構災害医療センター)が座長を務め,3社から発表が行われた。1題目にAI戦略について発表したテラリコン・インコーポレイテッドは,AI画像診断の活用が不可欠となる中,3Dワークステーション単体のビジネスからAIプラットフォームを中心としたビジネスへシフトしていくとの方針の下,三次元画像解析プラットフォーム「iNtuition」と医療AIプラットフォーム「EUREKA」によりAIと画像診断をつないでいくと述べた。2題目に,キヤノンメディカルシステムズ(株)が読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(RSS)」を紹介した。臨床・運用・経営の3つの視点で価値を提供し,働き方改革や医療の質の向上をめざすAbierto RSSのコンセプトを説明した上で,oncology領域とneuro領域向けに提供しているアプリケーションを紹介した。最後に登壇したシーメンスヘルスケア(株)は,検査から読影までのワークフローを改善する画像診断ITソリューション「syngo.via」について説明した。自動画像処理機能「Rapid Results technology」では,画像認識技術を活用したZero-click postprocessingにより作業負担の軽減と再現性の高い画像の提供を可能にし,医療現場の働き方改革を支援することを紹介した。
セッション2とセッション3では,小林氏が座長を務めた。セッション2「ゼロからはじめるなるほど講座」では,富田博信氏(帝京大学)が「誰でもできる!ChatGPTの活用術 〜基礎原理と簡単取説〜」と題して,2022年の登場後,長足の進歩と急速な利用拡大をみせている生成AI「ChatGPT」の基礎と,一般公開されている最新モデル「GPT-4」について解説した。GPT-4は処理能力の向上や高精度化だけでなく,ニーズに合わせてプラグインをインストールできる「ChatGPTプラグイン」機能を利用できるようになった。これにより,検索や要約,画像認識,画像生成,動画生成,スライド作成,計算など,活用の幅が大きく拡大している。また,ユーザー自身でカスタムChatGPTを作成できる「GPTs」機能について,特徴や作成方法,運用例を説明した富田氏は,教科書やガイドラインなどを学習させることで専門知識についても高精度な回答を得られるとし,「静脈路確保の知識」などの作成例を紹介したほか,デモンストレーションでGPTsによる画像読影の可能性について紹介した。富田氏は,ChatGPTを活用するためにはプロンプトを学ぶことが最も重要であると述べ,Webで公開されているプロンプト集やYouTubeなどを使って自己学習できるので取り組んでみてほしいとまとめた。
続くセッション3では,5社から情報提供が行われた。インフォコム(株)は放射線情報システム「iRadシリーズ」,EIZO(株)は新製品の30.5型医用画像表示モニタ「RadiForce MX317W」,バイエル薬品(株)はAIプラットフォーム「Calanticデジタルソリューション」およびAIソフトウエアの「Plus.Lung.Nodule」と「Cal.Liver.Lesion」,フォトロンM&Eソリューションズ(株)は血流解析ソフトウエア「CAAS MR Solution 4D Flow」,(株)メディカルクリエイトは医療機器管理システム「3mec ver3」とスタッフの配置管理機能の個別開発について紹介した。
セッション4「多様化するデータ管理をどうするか」では,池田龍二氏(熊本大学病院)と荒木隆博氏(山形県立中央病院)が座長を務め,2題の発表が行われた。1題目として,(株)フィリップス・ジャパンが医用画像管理システム「Vue PACS」を紹介した。Vue PACSは,AIも活用されるようになりつつある読影業務を支援するシステムで,「Diagnostic Viewer」や「Workflow Orchestrator」など多彩な機能を提供する。「Image Management platform」はVNAとしても運用可能であり,あらゆるデータを統合管理・統合表示できることなどを紹介した。2題目として,フジキンソフト(株)が医用画像一元管理システム「t.VNA」を紹介した。t.VNAはDICOM保管に特化したプラットフォームで,複数のPACSに保管されているデータをt.VNAに統合することで,PACS更新の効率化や費用の削減を実現できることなどを説明した。
続いて2題の教育講演が行われた。最初に,座長を牛尾哲敏氏(滋賀医科大学医学部附属病院)が務め,鷲塚冬記氏(東邦大学医療センター大森病院)が「高精細CTの最新技術と臨床応用」と題し,キヤノンメディカルシステムズの高精細CT「Aquilion Precision」の技術概要と,冠動脈CTAと頭部CTAにおける有用性の検討について報告した。鷲塚氏は,高精細CTは全身領域で大きなアドバンテージを発揮するとしつつ,再構成マトリックスサイズが大きくなるほど画像転送時間が増加するため,同院では1024マトリックス以上のボリュームデータはPACSへ送信不可とするなど運用を工夫していることを紹介した。冠動脈CTAについては,心拍数に制限はあるものの,空間分解能の制限が克服されたことで精度向上や適応拡大が期待できるとした。また,頭部CTAはDSAに劣らない画像が取得可能になり,末梢血管の評価や詳細な術前シミュレーションが可能であると述べた。さらに,Aquilion Precisionは中〜低周波領域も改善することで,低コントラスト領域も含むあらゆる領域で有用であると締めくくった。
最後の演題では,金沢 勉氏(新潟大学医歯学総合病院)が座長を務め,福島啓太氏(杏林大学医学部付属病院)が「高精細3テスラMRIの最新技術と臨床応用」と題して講演した。福島氏は,MRIは従来,SNRや空間分解能,撮像時間などがトレードオフの関係であると言われてきたが,高精細MRIによりその常識が変化してきていると述べ,高いGmaxやディープラーニング画像再構成などの効果について,臨床画像や検討結果を供覧しながら解説した。また,同院で導入しているCompressed SENSEにAIを統合した「SmartSpeed Solution」(フィリップス)や超解像技術「Precise IQ Engine(PIQE)」(キヤノンメディカルシステムズ)の臨床的有用性について紹介した。
最後に閉会挨拶に立った代表世話人の立石氏は,演者や参加者,協賛企業への感謝を述べるとともに,今回,約120名の参加者の多くがWeb参加であったことも踏まえ,開催方法を検討していくとした。第17回は2025年1月にハイブリッドでの開催を予定している。
●機器展示
●問い合わせ先
3D PACS研究会
http://3dpacs.kenkyuukai.jp