2023-9-26
2020年に開業したパシフィコ横浜ノースでの
開催を予定している
日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は2023年9月22日(金),「進化を続ける放射線治療-さらなる機能温存と適応拡大」をテーマとするプレスカンファレンスをTKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)で開催した。本年11月30日(木)~12月2日(土)に横浜市で開催する第36回学術大会のハイライトや放射線治療の最新情報などを紹介することを目的とし,司会は同学会広報委員長の岡嶋 馨氏(近畿大学奈良病院放射線科)が務めた。
最初に,同学会の理事長である宇野 隆氏(千葉大学画像診断・放射線腫瘍学)が挨拶に立ち,放射線治療の現状と学会について紹介した。宇野氏は,日本人の死因の約3割をがんが占める中,女性では乳がんや子宮頸がんなどの婦人科がん,男性では前立腺がんや肺がんなど,放射線治療の対象となるがんが増加しているとした上で,特に就労期女性や高齢者を中心に放射線治療のさらなる貢献が期待されるとした。また,同学会は専門医の養成に取り組み,2023年8月時点で1398名が認定されているものの内科や外科に比較してその数はまだ少ないと指摘。放射線治療患者数自体も約25%と海外より少なく,医療費に占める放射線治療の費用は0.4%であることも挙げ,今後,放射線治療の普及に努めていくとした。
続いて,第36回学術大会の大会長を務める茂松直之氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室)が大会の概要やハイライトについて紹介した。第36回学術大会は,パシフィコ横浜ノース(神奈川県横浜市)で「威風凛然」をテーマに開催,肺がんオリゴ転移の放射線治療に関するInternational Lectureや,医師の起業や放射線科医師に必要な再生医療の基礎知識について特別講演が行われる。また,心室頻拍に対する放射線治療やVR/ARの医療応用など新たな領域をテーマとするシンポジウムや,日本核医学会や日本緩和医療学会,日本放射線影響学会との合同シンポジウムが行われるほか,最終日には「がんを乗り越える逆境力」をテーマに子宮頸がんサバイバーなどを招いた市民公開講座を予定している。2022年まで同学会の理事長を務めた茂松大会長は,今大会を通じてがん治療における放射線治療の存在感を示していきたいとした。
次に,同学会理事の大野達也氏(群馬大学医学部腫瘍放射線学講座)が「組織内照射と腔内照射の併用が婦人科腫瘍の治療成績を向上させる:今後の普及のカギとは」と題して,婦人科腫瘍に対する放射線治療の現状について解説した。婦人科腫瘍の中でも子宮頸がんは全病期で放射線治療の適応となり,適応患者数が多い。外部照射と小線源治療を併用する根治的治療が行われ,小線源治療は数mm単位で任意の点,時間で線源を配置できる。しかし,従来のX線画像による治療計画では子宮や直腸,膀胱を認識できず,治療の個別化に限界があった。大野氏は,これらの現状を解説した上で,新たに登場した三次元画像誘導小線源治療について紹介した。三次元画像誘導小線源治療は,CTやMRIにより三次元治療計画を行い,標準的な腔内照射に補助的に組織内照射を追加する組織内照射併用腔内照射(ハイブリッド小線源治療)を行うことで,標的の形や体積に応じた線量処方で治療の個別化を実現,国内外の施設で良好な治療成績が認められている。半面,今後の課題として地域の実情に応じた集約化や婦人科腫瘍医師と放射線科医師をはじめとする多職種間の連携の実現,手術手技や鎮静・鎮痛への習熟などがあるとし,学会主導の人材育成への取り組みなどを紹介した。
最後に,同学会理事の澁谷景子氏(大阪公立大学放射線腫瘍学教室)がMR画像誘導即時適応放射線治療について講演した。MR画像誘導即時適応放射線治療はMRシステムとリニアックを融合した次世代型高精度放射線治療システムで,多様なコントラストで腫瘍や臓器を明瞭に描出でき,最適な治療計画を照射直前に作成し,かつリアルタイムに監視しながら照射が行える。澁谷氏は,従来適応が難しかった臓器・腫瘍への治療が可能になり,また1回ごとの安全な線量増加の実現により,治療期間の大幅な短縮や難治がんの治療成績の向上が期待されるとした。さらに,形態学的な情報に加え,機能的・生物学的な情報の取得などMRIの進化に伴う新たな技術を治療に応用できる可能性があると期待を示した。
●問い合わせ先
公益社団法人日本放射線腫瘍学会事務局
TEL 03-3527-9971 FAX 03-3527-9973
https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/
第36回学術大会 https://www.congre.co.jp/jastro2023/