2023-1-24
独立型アームの「Hugo手術支援ロボットシステム」を
メディアに初公開
日本メドトロニック(株)は2023年1月16日(月),メドトロニック イノベーションセンター(神奈川県川崎市)にて「Medtronic days 2023 つながる,つなげる。」と題したメディア向けイベントを開催した。2022年12月にメドトロニックの国内法人の一つであるコヴィディエンジャパン(株)から発売された「Hugo手術支援ロボットシステム」を初めてメディア向けに公開したほか,移動式手術トレーニング施設やMR(複合現実)技術を活用したトレーニングツールなどのデモンストレーションや体験会が行われた。
イベントでは,Executive Vice President and President, Global Regionsのロブ テン ホート氏からのビデオメッセージによる開会挨拶に続き,日本のメドトロニック全体における顧客との戦略的パートナーシップ構築とソリューション提供をリードするEnterprise Accounts & ServicesのVice Presidentであるリズ カルナブーチ氏がメドトロニックのこれまでについてプレゼンテーションした。カルナブーチ氏は,1949年に医療器機修理から始まったメドトロニックにとって最初のイノベーションは電池式ペースメーカの開発であったと述べ,想像を超えるイノベーションを生み出し,加速させることが医療課題の解決に必要だと強調。「人々の痛みを和らげ,健康を回復し,生命を延ばす」という変わらぬミッションステートメントの下に,人と人をつなげて協働することでイノベーションを加速し,よりよいアウトカムを生み出していくという同社のビジョンを語った。
続いて,Cranial & Spinal TechnologiesのVice Presidentである前田 桂氏が,「今とこれから」として国内における取り組みや今後の展望を紹介した。前田氏は国内での取り組みとして,医療現場を支える物流,デジタルヘルス,イノベーションにおける国内連携の3つを挙げ,倉庫におけるRFID(無線自動識別)導入による生産性向上や患者データ利活用に向けた連携,国内企業やアカデミアとの連携といった,患者のよりよいアウトカムのための取り組みを紹介した。
また,Surgical Robotics Senior Marketing Directorである中川玲子氏がHugo手術支援ロボットシステムについて,Training/Education Directorでイノベーションセンター長の何川修一氏が移動式手術トレーニング施設「Mobile Training Lab」について紹介した後,各ソリューションの体験会が行われた。
■外科手術支援ロボット「Hugo手術支援ロボットシステム」
国内で2022年12月に販売を開始したHugo手術支援ロボットシステムは,独立型アームを特徴とする手術支援ロボット。アームカート,サージョンコンソール,システムタワーで構成され,術者は3Dグラスを掛けてサージョンコンソールから着座した状態でアーム操作を行う。最大4機のアームカートは手技や患者に合わせてフレキシブルに配置でき,患者に対して360°どこからでもアプローチが可能となっている。また,サージョンコンソールには3Dグラスをトラッキングするシステムを搭載し,術者がモニタから目をそらすと,ハンドコントローラを動かしたとしてもアーム動作が停止する安全機構が搭載されている。
なお,現時点では泌尿器科と婦人科を対象としている。
■移動式手術トレーニング施設「Mobile Training Lab」
Mobile Training Labは,アジアで初めて*X線透視装置を搭載したLabトラックで,2022年11月より稼働を開始している。多忙な医療従事者のトレーニングへのアクセスの課題を解決することをめざして開発された。
トラックにはX線透視装置(GE社製モバイルCアーム「OEC Elite」)が搭載され,独自開発の心臓シミュレータなどを使って,実際にX線を照射して実臨床に近いトレーニングを行える。また,カメラ,透視画像,音声によりイノベーションセンターと双方向のリアルタイム通信が可能で,講師が現地に行けない場合にも遠隔でのトレーニングが可能。メドトロニックが2017年から提供しているカプセル型リードレスペースメーカ「Micra」などの植込み手技や,血管内治療,脊椎手術のトレーニングに対応する。
*同社調べ
■複合現実トレーニング「HoloMe」
HoloMeは,MR技術を活用した器械出し看護師向けの教育ツール。器械出し看護師は,医療機器の組み立て方を熟知し,医師への手渡しのタイミングを把握して,手術の手順を見越して目配りする必要があるが,その目線の動きを学ぶことは容易ではない。そこで,熟練看護師の目線の動きを可視化してトレーニングに活用することをめざし,(株)日立ソリューションズ,(株)日立ソリューションズ・クリエイトとHoloMeを共同開発した。
HoloMeは,「Microsoft HoloLens 2」(マイクロソフト社製)を利用し,熟練看護師の目線の動きを録画して教材として活用できる。熟練看護師の動画を教材として見るだけでなく,非熟練看護師のトレーニング動画も録画して比較再生することで,継続的な改善を図ることも可能となっている。
■症例支援プラットフォーム「d-Case MASTER」
d-Case MASTERは,手術を支援するためのプラットフォームとして開発が進められている。クラウド上に画像をアップロードすることで,3D画像解析などのアプリケーションを利用できる。また,(株)アルムと共同開発を行っており,医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」を搭載し,オンライン上でエキスパートのノウハウを学べるコミュニティプラットフォームとしての展開も予定している。
体験会では,利用イメージとして,裸眼で画像の立体視が可能なソニー(株)の空間再現ディスプレイを用いて,DICOM画像を瞬時に3D画像に変換する(株)サイアメントのDICOMビューワ「Viewtify」を展示。手術手技の検討や治療シミュレーションにおける活用の可能性をアピールした。画像処理・解析アプリケーションを開発している企業とのパートナーシップを進め,さまざまなアプリケーションを利用できるプラットフォームとして開発を進めていく。
■脊椎手術支援ロボット「Mazor Xロボットシステム」
Mazor Xロボットシステムは脊椎手術に特化した手術支援ロボットで,術前計画ソフトウエア,ナビゲーションシステム(ワークステーション,カメラ),サージカルシステム(サージカルアームやスクリーン)などで構成される。脊椎固定術において,術前CT画像から構築した3D画像上で手術計画を作成し,その術前計画に基づいてロボットアームが動作することで,手術器具を正確な位置・角度に誘導することができる。さらに,スクリュー挿入の際には,リアルタイムで手術器具の位置情報が術前計画の画像に重ねて表示されるため,正確な深さに挿入でき,より安全な手技を支援する。
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
http://www.medtronic.co.jp/