2022-10-12
締結式に出席した左から堤 浩幸 氏(富士通SEVP),
大野英男 氏(東北大学総長),
冨永悌二氏(東北大学病院病院長)
東北大学と富士通(株)は,ウェルビーイング社会の実現に向けた戦略提携について合意し,2022年9月26日(月)に締結式を行った。締結式には,東北大学から総長の大野英男氏,副学長で東北大学病院病院長の冨永悌二氏,富士通から執行役員SEVP JapanリージョンCEOの堤浩幸氏が出席した。また,10月4日(火)に開催された「Fujitsu ActivateNow 2022」(https://event.jp.fujitsu.com/activatenow/ )において,3名が登壇してSpecial Session「共に創る サステナブルで豊かな社会」が行われた(10月31日18:00までオンデマンド配信中)。
今回の戦略提携は,東北大学の持つ多様な研究開発リソースと富士通の最先端テクノロジーや電子カルテシステムなどのノウハウを融合して,自律的な健康増進や疾病予防,高齢になっても健康でいられる社会を実現するためのソリューションの開発に取り組む。
締結式では,提携に至る背景や両者の持つ強み,デジタルツインやAIモデル,データアナリティクス手法の開発,人材交流や育成など共同研究の内容を説明した。また,Fujitsu ActivateNow 2022のSpecial Sessionでは,堤氏が富士通のpurposeである“Fujitsu Uvance”について説明し,富士通が社会課題の解決に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める企業に変わりつつあることを紹介,その具体的な例としてスーパーコンピュータ「富岳」を用いた津波のAI予測,市民参加型の街づくりにむけた取り組み(神奈川県川崎市),音の視覚化装置「エキマトペ」,スペースデブリの軌道解析などの事例を挙げた。そして,Uvanceのキーフォーカスエリアの1つである“Healthy Living”の領域での東北大学との戦略提携について,そのねらいや今後の取り組みについて,堤,大野,冨永各氏がディスカッションした。
東北大学では,2018年に2030年を見据えた大学のビジョンを示す「東北大学ビジョン2030」(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/profile/vision/01/vision002030/ )を発表,2020年にはニューノーマル時代に合わせてアップデートした「コネクテッドユニバーシティ戦略」(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/newsimg/news20200729_00.pdf )を策定している。そのビジョンを実現する場として“サイエンスパーク”の整備を進めており,青葉山新キャンパスでは2024年に次世代放射光施設「ナノテラス」が運用開始する。さらに星陵キャンパスでは大学病院や東北メディカルメガバンク機構,オープンイノベーション戦略機構などライフサイエンスの一大研究拠点が形成されている。東北大学では,このサイエンスパークをオープンイノベーションを加速させる場ととらえ,産学協創による事業を創出し成長させるためのプラットフォームとなることをめざしている。大野氏は,富士通との戦略提携について,「人のぬくもりとテクノロジーの融合が最も重要となるヘルスケアの分野からスタートするが,本学の学際的な総合知と富士通のデジタルテクノロジーを融合することで,2030年に向けてより大きなイノベーションが生まれることを期待している」とコメントしている。
東北大学病院は臨床研究中核病院であり,臨床研究推進センターは国内最大規模の臨床研究支援機関として130名以上の専門スタッフが在籍して医薬品や医療機器の開発を進めている。同院では,昨今の医療課題に対応するため,2019年に“スマートホスピタルプロジェクト”(https://www.hosp.tohoku.ac.jp/release/etc/23913.html )をスタート。先端医療を調和した患者にやさしい医療の提供だけでなく,医療従事者もやりがいのある環境づくりをめざし病院職員のウェルビーイングを宣言してさまざまな取り組みを進めている。冨永氏は,これらのビジョンを実現するには産学連携の取り組みが必須であり,東北大学病院が持つバックグラウンドとして,東北地域という医療課題の集積地にあること,100万都市から地域医療までパッケージとして開発できること,関連研究機関との連携が容易なことなどを挙げた。また,開発のインフラとしては,企業の研究者が臨床現場でニーズ探索を行う「アカデミックサイエンスユニット」(https://www.asu.crieto.hosp.tohoku.ac.jp ),研究開発の実証フィールドとなる「オープンベッドLab」(https://www.shp.hosp.tohoku.ac.jp/OBL/ )などを構築している。さらに特徴的な点として,産学連携室には16名のスタッフによるデザインチームが組織されている。冨永氏は,「デザインチームのスタッフが企業や自治体など外部の方々と医療現場を結び,ホリスティックなデザインを提供できる」とデザイン思考で研究開発を進められるメリットを強調した。
富士通は,自身の持つさまざまな最先端技術,DXの見知,トップシェアの電子カルテシステムとそのエコシステムを,東北大学と共創することでウェルビーイング社会を実現する新たな環境を構築するべく研究・開発を行う。そのベースとなるが,Uvanceのカテゴリーの1つである“Healthy Living”だ。Healthy Livingがめざすのは,デジタルテクノロジーによって一人ひとりが自分のめざしたい健康像を把握し,シームレスなヘルスケアサービスの提供によって,健康増進や予防,治療の選択を自律的に行える世界を構築することだ。東北大学との提携では,その実現のため,医療情報や健康情報の予測・可視化するデジタルツインの構築,疾患の可能性を検知するAIモデルの開発,データ基盤整備とデータアナリティクス手法の開発などを進める。堤氏は,「大学や社会の課題を見据えて,オープンなスタイルで研究,開発の体制を構築し,デザイン思考をベースに取り組まれている東北大学との提携によって,新たな価値を創造するプロジェクトをスタートできることに期待と同時に責任も感じている。提携はヘルスケア領域からスタートするが,そこから生まれるイノベーションが,地域や組織,領域を超えて広がっていくことを期待している」と述べた。
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