2022-7-19
岸田文雄内閣総理大臣が映像で祝辞
公益社団法人日本診療放射線技師会(JART)は,2022年に創立75周年を迎えた。これを記念して7月16日(土),経団連会館(東京都千代田区)にて記念式典を開催した。
JARTの前身である日本放射線技師会は,1951年の診療エツクス線技師国家資格制度開始に向けて,47年7月13日に設立された。51年には社団法人日本エツクス線技師会となり,68年の診療放射線技師及び診療エツクス線技師法公布を経て,翌年社団法人日本放射線技師会に改称。2021年には,現在の名称に変更された。この間,85年には第1回全国放射線技師総合学術大会が開催され,2002年には新生涯学習システムが構築されるなど,診療放射線技師教育にも力を入れてきた。また,2011年の東日本大震災では,放射線サーベイヤーチームを福島県に派遣するなど,災害医療においても診療放射線技師の使命を果たすべく取り組んできた。さらに,2014年,2021年の診療放射線技師法の一部改正により診療放射線技師の業務の拡大が図られたことを受け,これに伴う講習会や研修を行い,チーム医療の推進,医師の働き方改革に貢献してきた。
主催者挨拶として登壇した上田克彦会長は,JARTの歩みを振り返り,診療放射線技師について,結核対策の中で国家資格化が議論された経緯があり,現在も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療において多くの業務を行っているなど,感染症対策とともに歩んできたと述べた。そして,時代ごとの社会の要請に応えるため,技術向上に務めてきたと説明した上で,現在の医療において放射線診療はなくてはならないものであり,検査を行う診療放射線技師,画像診断を行う放射線科医,放射線治療を行う放射線治療医,医療機器を開発する企業など関係者が力を結集して,国民を守るための活動をしてきた強調した。さらに,上田会長は,これからも放射線診療の関係者や看護など幅広い領域の職種との連携を推進し,チーム医療の一員として日本の医療に貢献していくと決意を述べた。
続いて,元厚生労働大臣で,2022年3月に自由民主党内に設立された「国民に最善の医療を届けるために診療放射線技師を支援する議員連盟」の会長を務める根本 匠衆議院議員が祝辞を述べた。根本議員は,東日本大震災での被災地における診療放射線技師の活動について触れた。そして,国民に放射線に対する正しい理解をしてもらうための活動や,COVID-19のワクチン接種におけるアナフィラキシーショックへの対応など,ますますの活躍を期待したいと述べた。さらに,岸田文雄内閣総理大臣,後藤茂之厚生労働大臣が映像で祝辞を贈った。岸田内閣総理大臣は,COVID-19診療での職務に感謝の意を表した上で,全世代型社会保障の実現,社会保障制度の発展に向け,チーム医療の一端を担う診療放射線技師の役割に期待を示した。また,後藤厚生労働大臣は,世界に冠たる日本の医療を維持していくためには,医療者が専門性を生かして質の高い医療を提供することが必要だと述べた。そして,そのためにもタスクシフト,タスクシェアが重要であり,今後も研さんを積み,国民の期待に応えてほしいとエールを贈った。
このほか,古賀 篤厚生労働副大臣,島村 大厚生労働大臣政務官,深澤陽一厚生労働大臣政務官など,多数の議員が出席。また,一般社団法人日本病院会の相澤孝夫会長,公益社団法人日本医師会の釜萢 敏常任理事,公益社団法人日本看護協会の福井トシ子会長が祝辞を述べた。
来賓の祝辞に続いて,厚生労働大臣表彰が行われた。診療放射線業務功労者として57名が表彰を受けた。その中から成田浩人氏が受賞代表者として古賀厚生労働副大臣から表彰状を授与された。成田氏は,医療は立ち止まることなく一歩一歩前進しなければならないとし,今後も診療,教育,研究にまい進したいと謝辞を述べた。
この後,祝電が披露され,さらに2021年度から開始された厚生労働大臣指定告示研修の協力企業への感謝状贈呈へと進んだ。企業を代表して富士フイルムメディカル(株)の川原芳博代表取締役社長が上田会長から感謝状を贈られた。記念式典の最後はJART顧問を務める畦元将吾衆議院議員が閉式の挨拶を行い,式典を終了した。
記念式典に続いて,記念講演会が行われた。「日本の医療の将来」と題して,厚生労働省の初代医務技監で,国際医療福祉大学学長の鈴木康裕氏が講演した。鈴木氏は,超高齢社会から人口減少社会へと向かう現状を説明し,医療における財政難,労働人口減少といった課題を指摘。一方で,日本は高齢化率が高いものの医療費の伸びはコントロールされており,質の高い医療を低コストで提供できていると説明した。そして,医師など医療者の過重労働の解決する技術として,人工知能(AI)やゲノム医療などについて説明した。さらに,鈴木氏は,医師の働き方改革に言及し,業務拡大と質的向上,多職種連携の推進といった診療放射線技師が今後進むべき道を示した。
記念式典での来賓の祝辞や鈴木氏の記念講演でも触れられたとおり,医師の働き方改革に向けたタスクシフト,タスクシェアに向けて,診療放射線技師の役割はますます重要になる。JARTには,今後も教育などの活動を通じて求められる診療放射線技師像を明確にし,医療者だけでなく,国民のニーズに応えていくことが,次の80周年に向けて期待される。
●問い合わせ先
公益社団法人日本診療放射線技師会
http://www.jart.jp