2022-3-7
瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)
キヤノンメディカルシステムズ(株)は,2022年2月26日(土),「Advanced Imaging Seminar 2022 Online」を開催した。本セミナーは,同社の最新技術とその臨床応用における最新情報を紹介するイベントとして毎年春に行われている。今回は,「Outcomes driven innovation. キヤノンメディカルの高精細技術とその臨床応用」をテーマに,2021年同様オンラインのみでの開催となった。
冒頭,同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に尽力するすべての医療関係者に対して感謝の意を表した。その上で,同社ではディープラーニングを用いた画像再構成や読影支援,ワークフローの最適化などに人工知能(AI)技術をいち早く応用しているが,それらAI関連ソリューションを「Altivity」というブランド名で総称し,今後もさらなる発展に努めていきたいと述べた。
セミナーは,「Session1 頭頸部領域」「Session2 最新臨床応用」の2部構成で,それぞれMRI,CT,Healthcare ITの講演が行われた。Session1の座長は阿部 修氏(東京大学大学院)が務め,3演題が設けられた。
MRIは,柏木伸夫氏(大阪大学大学院)が「頭部領域のニューノーマル」と題して講演した。ディープラーニング応用画像再構成技術“Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”によって従来と別次元の高画質が取得できることや,3D撮像の高速化技術“Fast 3Dモード”を頭部MRAに適用することで撮像時間の大幅な短縮が可能であること,拡散強調画像(DWI)の歪み低減技術“RDC(Reverse encoding Distortion Correction) DWI”により診断精度の向上が期待できることなどが紹介された。
CTは,三上 毅氏(札幌医科大学)が「高精細CTによる脳血管障害シミュレーション画像の新たな展開」と題して,脳動静脈奇形(AVM),脳動脈瘤,脳血管バイパス術の術前プランニングや術後評価における同社の高精細CT「Aquilion Precision」の有用性を報告した。高精細画像を用いた画像支援によって,治療における最善の道の推定と危機管理が術前に可能になるとして,さらなる発展への期待を述べた。
Healthcare ITは,三浦正智氏(熊本赤十字病院)が「Abierto Reading Support Solutionを用いた急性期脳梗塞治療戦略」と題して,急性期脳梗塞の再開通療法における同社の読影支援ソリューション“Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)”の活用について詳述した。Abierto RSSでは,CTデータを受信すると,脳出血,脳虚血,脳灌流,脳血管の自動解析が短時間で行われるなど,超急性期の診療に有用なツールであることが紹介された。
休憩を挟んで行われたSession2では,4演題が設けられた。初めに行われたHealthcare ITでは,小林達伺氏(国立がん研究センター東病院)が座長を務め,井石龍比古氏(医療法人 住友別子病院)が「骨の経時差分を用いた転移性骨腫瘍検出の試み〜CT読影業務の負担軽減をめざして〜」と題して講演した。CTの比較読影において特に負担感の大きい骨の評価を容易にするAbierto RSSの技術として,骨の経時的な性状変化のみを強調表示するBone Subtractionを挙げ,技術的な概要や特長などを紹介した。
MRIでは,陣崎雅弘氏(慶應義塾大学)が座長を務め,2演題が行われた。まず,植田高弘氏(藤田医科大学ばんたね病院)が,「1.5T DLR-MRIの新たな可能性〜検査の安定性向上をめざして〜」と題して講演した。実際の症例画像を提示してAiCEの有用性を報告したほか,日常検査の質と安定性向上のために有用な技術として,新たなパラレルイメージング法である“Expanded SPEEDER(Exsper)”やDWIの歪み低減技術であるRDC DWIを紹介した。続いて,柿木崇秀氏(京都大学大学院)が,「3T DLR-MRIが実現する2D Thin Slice Imagingの臨床的有用性〜整形領域における最大活用〜」と題して講演した。通常の分解能やスライス厚の画像では病変検出および診断が困難な腱板断裂や軟骨・関節唇損傷などにおいて,高分解能かつ薄いスライス厚の2D画像が特に有用であると述べた上で,AiCEを適用した2D 1mmスライス厚画像やMPR画像のメリットを,症例を踏まえて報告した。
最後に行われたCTでは,城戸輝仁氏(愛媛大学大学院)が座長を務め,立神史稔氏(広島大学大学院)が「Deep learning reconstructionを用いた超解像画像再構成PIQEによる冠動脈CT評価」と題して講演した。ディープラーニングを応用した超解像画像再構成技術“Precise IQ Engine(PIQE)”は,高精細CTであるAquilion PrecisionのSuper High Resolusion(SHR)モード(0.25mm×1792ch)で撮影した画像を教師としてdeep convolutional neural network(DCNN)をトレーニングし,Area Detector CT(ADCT)に実装することで,ADCTの画像を高分解能化する技術である。立神氏は,画質評価の結果や実際の画像を多数提示した上で,冠動脈CTにおいて,PIQEはモデルベース逐次近似再構成法の“Forward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTion(FIRST)”より高分解能,かつAiCEより低ノイズを実現するとまとめた。
●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
広報室
https://jp.medical.canon