2021-10-26
第10回目となるGlobal Standard CT
Symposium 2021はオンラインで開催
キヤノンメディカルシステムズ(株)は,2021年10月9日(土),第10回目となる「Global Standard CT Symposium 2021」をオンラインにて開催した。「被ばく低減技術の進歩とグローバルスタンダードCTの普及〜これからの10年に向けて〜」をテーマに3つのセッションが設けられ,8名の演者が講演した。
冒頭,同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,本シンポジウムの10年の歩みを振り返り,被ばく低減技術の進歩や普及状況などを報告した。また,人工知能(AI)技術開発の現状として,ディープラーニング応用画像再構成“AiCE”などについて述べたほか,次世代の画像診断機器として期待されているフォトンカウンティングCTの開発についても言及した。
Session1は粟井和夫氏(広島大学大学院)が座長を務め,「医療被ばくと低線量化への取り組み」をテーマに3名が講演した。檜垣 徹氏(広島大学大学院)は,「被ばく低減画像再構成法の進化」と題して,同社の被ばく低減技術の開発の歴史を振り返りつつ,AiCEの技術的な特徴などを紹介。AiCEは,処理速度が比較的速く,優れたノイズ低減効果を得られるため急速に普及が進んでいることから,次世代の被ばく低減画像再構成のスタンダードになりうると展望した。前田恵理子氏(東京大学医学部附属病院)は,「小児CTの被ばく低減:激動の10年を振り返って」と題して講演した。欧州と比較し,日本の小児CTの診断参考レベル(DRLs)の値は非常に高く,看過できない状況であるが,AiCEを用いることで線量を低減しつつ高画質が得られるとして,AiCEは線量低減のための一番の処方せんであると述べた。赤羽正章氏(国際医療福祉大学)は,「CTの被ばく管理と線量低減」と題して講演した。CT検査においては現在,必要最小限の線量での検査や損益バランスが重視される時代となり,より専門性の高い繊細な線量管理が求められている。赤羽氏は,被ばく管理において重要な対応について,同社のさまざまな技術を踏まえて詳述したほか,被ばく低減や線量管理に貢献する新技術開発への期待を述べた。
Session 2は吉岡邦浩氏(岩手医科大学)が座長を務め,「ADCTの進化と新たな未来」をテーマに2名が講演した。井田義宏氏(藤田医科大学病院)は,「Aquilion ONEによる撮影技術の革新と熟成」と題して講演した。Aquilion ONEに追加された技術として,差分処理技術“Lung Subtraction”や,金属アーチファクト低減技術“SEMAR”などを挙げたほか,Aquilion ONEで改良された技術として新しいデュアルエナジー技術“Spectral Imaging System”などを挙げ,それぞれの特長を詳述した。続いて,陣崎雅弘氏(慶應義塾大学)は,「Aquilion ONEの更なる進化〜臥位から立位へ〜」と題し,同社と共同開発を行った立位CTによる,重力下における人体の可視化についての研究成果を報告した。立位CTを用いることで,立位で症状が増悪あるいは顕在化する疾患の評価が可能になるとして,さまざまな領域における臨床的有用性を概説。その上で,健康長寿の観点から今後重要となる機能的疾患の評価に,立位CTが大きく貢献すると展望した。
本シンポジウムの最後となるSession 3は阿部 修氏(東京大学大学院)が座長を務め,「ADCTがもたらした臨床価値」をテーマに3名が講演した。平井俊範氏(熊本大学大学院)は,「Aquilion ONEの中枢神経疾患への臨床応用:当院における経験」と題して,同大学での研究成果について報告した。Aquilion ONEで撮影したCTPのデータからCTAを再構成可能であり,従来のCTAをほぼ代替可能であることや,脳深部刺激療法(DBS)術後評価におけるSEMARの有用性などが紹介された。真鍋徳子氏(自治医科大学)は,「冠動脈疾患におけるCTのこれから」と題して講演した。冠動脈疾患の評価におけるCTの役割は,今後さらに加速していくことが予想されている。真鍋氏は,冠動脈疾患評価におけるCTの有用性として,Aquilion ONEの広いカバレッジを生かしたCTPの活用や,医用画像処理ワークステーション「Vitrea」による心筋血流解析の有用性などを紹介。さらに,今後の展開として,AIやデュアルエナジー技術への期待を述べた。本シンポジウムの最後は,富山憲幸氏(大阪大学大学院)が,「Aquilion ONE 10年の歩み:胸部」と題して,国内ADCTユーザーによる多施設共同研究「ACTIve」の概要と成果を報告した。ACTIveによるこれまでの研究成果として,逐次近似応用再構成“AIDR 3D”を用いた超低線量CTによる肺がんCTスクリーニングの可能性を示唆したほか,連続回転により臓器の動態撮影を行う“Dynamic Volume Scan”を用いた自由呼吸下の胸部CTによって,肺がんの胸壁への癒着の評価が可能であることなどを紹介した。
●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
広報室
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