2021-8-31
放射線治療支援システム
「SyncTraX SMART version」
(株)島津製作所は,2021年8月30日(月)にがんの放射線治療支援システム「SyncTraX SMART version」を発売した。同システムは,同社の動体追跡システム「SyncTraX FX4 version」をベースに開発されたもので,4組のX線管とFPDにより,治療中でも短時間で高精度な位置決めを実現する。発売に先立ち,8月27日(金)に同社の本社(京都市中京区)およびオンラインで記者説明会が行われ,システムの概要紹介やデモンストレーションなどが行われた。
SyncTraX SMART versionは,4組のX線管と12インチのFPD,X線高電圧装置,操作用コンソールなどで構成され,FX4 versionと同様に,バリアン社製治療装置「TrueBeam」と組み合わせて使用する。治療装置と連動し,ガントリやカウチの角度に応じて4組のX線管とFPDのうち最適な2組を自動選択し,2方向からX線撮影を行うため,高精度の位置合わせが可能となる。また,カウチを移動し複数の方向から照射するノンコプラナー照射時や治療中に患者が動いてしまった際も,カウチやガントリを動かすことなく位置決めや再照射が行えるなど,治療中のさまざまな場面に対応できる。加えて,大視野12インチFPDの採用により位置決めの指標となる骨部分を広範囲で取得でき,位置決め精度が向上している。なお,オプションとして動体追跡機能の追加も可能である。
記者説明会に登壇した医用機器事業部グローバルマーケティング部放射線治療ビジネス担当シニアマネージャーの三品幸男氏は,放射線治療は根治治療の一つとなり,画像誘導放射線治療(IGRT)のニーズが増加しているとした上で,「より高精度なX線照射を最小限の人手で効率的に行える自動位置決めシステムは大変重要であり,SyncTraX SMART versionは現場のニーズに応えるものだ」と述べた。
また,記者説明会では,同社と国立循環器病研究センターが共同開発した,リアルタイムPCR装置を用いたRNF213遺伝子p.R4810K多型検出技術についての発表も行われた。RNF213遺伝子p.R4810K多型は,日本を含む東アジア人が多数保有する遺伝子多型で,近年の研究により,脳梗塞の発症や再閉塞リスクとの関連が示されており,RNF213遺伝子p.R4810K多型の判定は脳梗塞の病態や病型の把握に有用であると考えられている。
今回発表された技術は,1μLの血液からRNF213遺伝子p.R4810K多型を1時間以内に測定するもの。同社独自の“Ampdirect”技術を用いることでDNA精製が不要になり,簡便かつ迅速な測定が可能になった。9月からは,受託分析子会社の(株)島津テクノリサーチで同技術を用いた受託分析サービスを開始し,将来的に体外診断用薬品としての製品化をめざす。国立循環器病研究センター脳神経内科部長の猪原匡史氏は,「同技術により,脳梗塞疑いで救急搬送後,血管内治療を開始するまでにRNF213遺伝子多型を測定できれば,血管内治療の適用を検討する上で,層別化するリスクの一つとして組み込まれる可能性がある。今後の2〜3年間で運用のための仕組みづくりに取り組んでいきたい」と抱負を述べた。
●問い合わせ先
(株)島津製作所
https://www.shimadzu.co.jp/