2021-8-31
Web開催となった第24回CTサミット
2021年8月21日(土),第24回CTサミットがWebで開催された(主催:CTサミット,後援:新潟CTテクノロジー研究会)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより2020年の開催を見送り2年ぶりとなった今回,テーマには「生かせ! Volume Data~Future Technology for Surgical Support~」が掲げられ,手術支援のためのボリュームデータを用いた画像作成のノウハウなどを共有する機会となった。開会に当たり挨拶した当番世話人の村上克彦氏(福島県立医科大学附属病院放射線部)は,2020年は朱鷺メッセ(新潟県新潟市)での開催予定であったが延期となり,2021年もやむを得ずWeb開催となったと説明。Web開催にもかかわらず大勢の参加があったとして,参加者に謝意を伝えた。なお,司会は,実行委員長の能登義幸氏(新潟大学医歯学総合病院診療支援部放射線部門)が務めた。
まず,新潟CTテクノロジー研究会によるシンポジウム「質の良い“Volume DATA”取得と“魅せる”画像のために~整形領域~」が行われた〔共催:GEヘルスケアファーマ(株)〕。宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生北見病院診療支援部) と小川正人氏(行橋中央病院診療支援部)が座長を務め,3名の演者が発表した。最初に本田啓明氏(立川綜合病院放射線科)が,「整形のVolume data取得に必要な知識」と題して,volume rendering画像などのためのアイソトロピックボクセルのデータ収集について解説した。本田氏は,整形外科領域のボリュームデータ取得には空間分解能の高さが重要であるとして,センター,オフセンターでの解像特性の評価結果,手関節の撮影における前腕回旋中間位でのオフセットの場合の空間分解能の測定結果などを報告した。次いで,神田英司氏(新潟市民病院放射線技術科)が,「ポジショニングで決まる“data”の取得法」をテーマに発表した。神田氏は,整形外科領域におけるCT検査のポジショニングのポイントについて,“Center”“Artifact”“Stable”をキーワード解説し,CT-AECの設定の要点を整理した。3番目に発表した松本一則氏(魚沼基幹病院医療技術部放射線技術科)は,「整形MPR・3DのためのVolume Dataの味付け—技を組み合わせて最高の一品を!—」をテーマに,再構成関数,撮影条件による画像の違いを説明した。
続いて技術講演が行われた〔共催:キヤノンメディカルシステムズ(株)〕。辻岡勝美氏(藤田医科大学医療科学部放射線学科)が座長を務め,熊野泰大氏(キヤノンメディカルシステムズヘルスケアIT事業部)が,「レンダリング技術の進展 Surface RenderingからGlobal Illumination」をテーマに講演した。熊野氏は,3D画像の臨床的な意義を説明した上で,CTとその撮影技術について解説。さらに,画像再構成法を紹介したたほか,3D画像処理やレンダリングの技術を取り上げた。
この後,特別講演へと進んだ。座長を村上氏が務め,杉本真樹氏(帝京大学冲永総合研究所Innovation Lab)が,「医療現場のデジタル革新:VR/AR/ホログラム手術支援/オンライン遠隔医療」と題して講演した。杉本氏は,CT画像からサーフェスレンダリングによるポリゴンモデルを作成し,virtual reality(VR)やaugmented reality(AR),mixed reality(MR)による手術支援を行うための手法を紹介した。そして,そのメリットとして,手術の時間短縮と質向上などを挙げた。
次いで,教育講演「脳外科手術の画像支援するための取り組み」が行われた〔共催:アミン(株)〕。座長を梁川範幸氏(つくば国際大学医療保健学部診療放射線学科)と大沢一彰氏(奈良西部病院放射線科)が務め,平野 透氏(札幌医科大学附属病院放射線部)が臨床に貢献する手術支援画像作成のノウハウを講演した。講演の中で平野氏は,画像作成のスキルを向上させること,医師とのコミュニケーションを図り求められている画像を知ること,チームワークにより良い画像を提供することの重要性を自身の経験を交えて述べた。
プログラムの最後は,平野氏と石風呂 実氏(東京健康科学大学ベトナム)が座長を務め,「活かせ!Volume data」と題したシンポジウムが行われた。最初に,「脊椎手術支援」をテーマに,高橋伸光氏(奥州市総合水沢病院放射線科)が発表した。高橋氏は,手術支援のためのボリュームデータ活用に求められる診療放射線技師の能力について,臨床力,読影力,撮影力,構築力,反省力に分けて解説した。2人目は,佐々木淳一氏(佐世保市総合医療センター放射線室)が,「肺動静脈分離撮影による肺がんの手術支援」と題して,胸腔鏡補助下手術(video-assisted thoracic surgery:VATS)のための支援画像作成のノウハウを紹介した。次に,三井宏太氏(佐賀県医療センター好生館放射線部)が,「ステントグラフト内挿術をフルサポート~手術支援から術後評価まで~」をテーマに発表した。三井氏は,大動脈瘤のステントグラフト内挿術について解説した上で,ボリュームデータの活用のための撮影のポイントを説明した。4演題目は,原田耕平氏(札幌医科大学附属病院放射線部)が,「大腸における手術支援」と題し,大腸がんにおける鏡視下手術の支援画像作成法を紹介した。原田氏は,外科医が求める情報を提供することが重要だとして,手術に必要な血管を抽出するテクニックなどを解説した。シンポジウム最後の発表では,大橋一也氏(名古屋市立大学病院診療技術部放射線技術科)が,「シン・泌尿器科領域」をテーマに,ロボット支援腎部分切除術(RAPN)のための3D-CT切除モデルといった手術支援画像の作成方法,経皮的腎砕石術におけるvirtual reality(VR)画像の意義などを説明した。
すべてのプログラム終了後には,代表世話人を務める辻岡氏が挨拶し,ボリュームデータから作成される画像は患者の未来を支援する画像であり,診療放射線技師は患者のQOL向上につながる画像を提供していくことが大事だとまとめた。なお,次回,第25回CTサミットは,2022年7月30日(土)に開催される。当番世話人は,梁川氏が務め,テーマは「CT画像の価値を高める」が掲げられた。
●問い合わせ先
第24回CTサミット
http://ctsummit.jp