2021-4-15
新たにグループに加わった
富士フイルムヘルスケアの山本社長と
富士フイルムの後藤次期社長・CEOのタッグ
富士フイルム(株)は,2021年3月31日に(株)日立製作所の画像診断関連事業の買収手続きを終了した。新たに100%子会社の富士フイルムヘルスケア(株)としてグループに加わり,画像診断領域において富士フイルムが従来から持つ製品群に加えて,幅広い製品ラインアップを提供できることになった。4月8日(木)に,富士フイルムのメディカルシステム事業部長で富士フイルムヘルスケア代表取締役会長の後藤禎一氏,富士フイルムヘルスケア代表取締役社長の山本章雄氏らが出席し,今後の画像診断領域(メディカルシステム事業)の事業戦略を説明した。なお,後藤氏は2021年6月の定時株主総会後に富士フイルムの代表取締役社長・CEOに就任することが発表されている(現在の古森重隆代表取締役会長・CEOは最高顧問となり一線から退く)。
富士フイルムグループは,これまで“ヘルスケア&マテリアルズソリューション”“ドキュメントソリューション”“イメージングソリューション”の3つのセグメントで事業を展開してきた。ヘルスケア領域の2019年度の売上高は5041億円で,全事業の22%を占める。ヘルスケア領域には,メディカルシステム,バイオCDMO,医薬品,化粧品などがあるが,そのうちモダリティや医療ITで構成されるメディカルシステム事業は過去10年間年平均で約7%の成長を続け,2019年度の売上高は約3500億円となっている。10年前には,X線診断システムやX線関連商材が中心だったが,Sonosite(携帯型超音波),和光純薬工業(検査試薬)などの企業買収と,PACSや人工知能(AI)技術を含めた画像処理技術への先進的な開発投資を進めることで,バランスのよいポートフォリオを構成してきた。
今回,富士フイルムヘルスケアのCT・MRI,据置型超音波診断装置,X線TVなどX線診断システムが加わることで,病院に対してワンストップのトータルソリューションを提案できるようになると後藤氏は次のように期待する。
「近年,装置単体ではなく,さまざまな製品を組み合わせ,病院経営に直結する提案が求められている。富士フイルムと富士フイルムヘルスケアの製品は重複が少なく,補完性の高いラインアップを構成できた。これをベースとして,グループ全体の販売力を強化し,2021年度目標の売上高は5000億円超を達成できる見込みだ」
さらに,後藤氏は両社のシナジーの中で,富士フイルムの持つ画像処理技術やAI技術を富士フイルムヘルスケアの製品群に搭載することで,これまでにない付加価値を創出できるとして次のようにコメントした。
「富士フイルムは,世界トップシェアのPACS(SYNAPSE)をプラットフォームとして,最新の画像処理技術やソフトウエア開発力に加え,AI技術を活用したソリューション開発を展開している。拡充された製品ライアップと,富士フイルムの画像処理,ソフトウエア開発,そしてAI技術を組み合わせることで,これまでにない付加価値の創出を実現していく」
AI技術とモダリティのシナジーの成果について,富士フイルムメディカルシステム開発センター長でメディカルシステム事業部ITソリューション部長の鍋田敏之氏は,「富士フイルムは医療AIのプラットフォームとして“REiLI”のブランド名で開発に取り組み,すでにさまざまな製品やソフトウエアに搭載している。富士フイルムのAI技術と富士フイルムヘルスケアのモダリティ技術は,製品ラインアップと同様に,重なりの少ない,補完的な関係になっており,両社の技術を融合させて新たな価値を提供できると考えている。その具体的な成果は,製品として2021年度中にも市場に投入したい」と述べた。
また,山本氏は,富士フイルムグループの一員として今後の方向性について,「富士フイルムヘルスケアが持つ画像診断モダリティの技術およびそのコア技術を,富士フイルムグループの高度な画像処理技術やAI技術と融合させることによって,付加価値の高いソリューションを実現したいと考えている。富士フイルムグループでしか提供できないような革新的なソリューションを創成し,さらなる成長に貢献したいと考えている」と述べた。
最後に,後藤氏はメディカルシステム事業の中長期成長目標について,2020年代半ばには売上高7000億円,ヘルスケア領域全体では1兆円をめざすと述べた。
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富士フイルムの事業領域は2021年度からヘルスケアが独立し,“マテリアルズ”“ビジネスイノベーション”“イメージング”の4つの事業セグメントに再編された。4月15日(木)に行われた「中期経営計画説明会」での発表では,中期最終年度である2013年度のヘルスケアの業績目標は,売上高8600億円,営業利益1030億円とされた。これを達成するとヘルスケア事業は,富士フイルム最大のセグメントに成長することになり,その中でも中核事業の一つであるメディカルシステムのこれからの展開が注目されるところだ。
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