2020-7-16
富士通(株)は,2021年3月に開始されるオンライン資格確認の導入に向け,医療機関を対象とするオンラインセミナーを2020年7月14日(火)に開催した。オンライン資格確認は,マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号などにより,オンラインで資格情報の確認ができるシステム。また,患者の同意を得た上で,薬剤情報や特定健診情報を閲覧することが可能になり,既往歴や服薬歴の把握により,医療の質や安全に資することが期待される。2021年3月の利用開始(薬剤情報の閲覧は同年10月から)に向け,医療機関向け専用ポータルサイト(https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp )が開設され,準備が進められている。セミナーでは,オンライン資格確認の内容や同社システムでの導入に向けた準備などについて解説が行われた。
最初に,厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室室長の山田章平氏が「健康保険証の資格確認がオンラインで可能となります〜オンライン資格確認導入の手引き〜」と題し,オンライン資格確認の仕組みやメリット,導入のスケジュールなどについて解説した。山田氏は,オンライン資格確認のメリットとして,(1)窓口での保険資格情報の入力が不要(保険証の場合は最小限の情報のみ入力)になる,(2)資格過誤によるレセプト返戻に伴う作業の削減,(3)来院・来局前の一括照会が可能になる,(4)照会番号によるレセプトコンピュータなどとの紐付けができる,などを指摘。また,保険者への申請がなくても限度額情報が取得できるため,限度額以上の支払いが不要になるなど,患者にとってもメリットがあると述べた。さらに,患者の同意があれば,医師や歯科医師,薬剤師などの有資格者が薬剤情報や特定健診情報を閲覧することが可能になる(マイナンバーカード使用の場合のみ)が,災害時には特例措置としてマイナンバーカードによる本人確認を経ずに情報閲覧が可能となり,災害対策としても期待できるとした。
また,利用開始までのスケジュールやよくある質問などをまとめて紹介した上で,今回のシステムは,マイナンバーカードのICチップを用いて認証を行うもので,マイナンバー自体を医療機関が扱うことはなく,安全性が確保されていると強調,各医療機関での導入を呼びかけた。なお,各医療機関・薬局での導入にあたっては,社会保険診療報酬支払基金から顔認証付きカードリーダーが無償提供されるほか,必要なソフトウエア・機器の導入,ネットワーク環境の整備などにかかる費用の一部が補助される。
山田氏は,オンライン資格確認はデータヘルスの基盤になるシステムであるとし,当初は対象外である公費負担医療の資格確認の追加や,受診歴のある医療機関名や手術歴など,閲覧可能情報の拡大を順次行っていき,電子処方箋の導入も実現させたいと述べた。また,システム運用の鍵となるマイナンバーカードの普及率については,マイナポイント付与などの普及策により,システムが開始される2021年3月時点では普及率も上がっているのではないかとの認識を示した。
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次に,富士通ヘルスケアソリューション事業本部第二ソリューション事業部マネージャーの三田浩司氏が,同社システム使用施設における導入ステップや,導入時の検討事項などについて解説した。オンライン資格確認の導入にあたっては,無償提供される顔認証付きカードリーダーに加え,窓口で使用する資格確認端末の購入や,受付・会計システムや電子カルテシステムなどの対応が必要になる。三田氏は,2020年3月の稼働に向けて想定される導入スケジュールや,同社が行う対応について紹介した。
また,資格確認を行うタイミングやカードリーダーの設置場所,患者への説明など,運用フローから想定される検討事項について紹介した。特に,同社システムの運用フローでは,閲覧が同意された特定健診/薬剤情報は電子カルテサーバに自動保存することを想定している。しかし,データの保存や常時,閲覧を可能とすることは,オンライン資格確認システムでの同意の範囲には含まれておらず,それらに関しても同意を取得する必要があるとし,注意を促した。三田氏は,視聴する医療機関の関係者に対し,補助金申請期限(2023年3月31日までに事業完了)を踏まえつつ,導入を検討してほしいと述べた。
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最後に,(株)富士通マーケティング マーケティング公共ビジネス本部官庁第二ビジネス統括部第二ビジネス部担当課長の道家章詞氏が,申請の手続き方法や同社が開発した顔認証付きカードリーダーについて紹介した。社会保険診療報酬支払基金が開設した医療機関向けポータルサイトでは,オンライン資格確認の利用申請や補助金申請のほか,顔認証付きカードリーダーの申し込みなどが行える。顔認証付きカードリーダーについては,基金の認可を受けた製品が,診療所と薬局には各1台,病院には3台まで無償で提供される予定である。富士通グループ(PFU)は,省スペース型カードリーダー「Caora」を開発,現在,支払基金による審査が行われている。道家氏は,Caoraの特徴として,複数台の確認用端末への接続が可能で操作が容易なほか,マイナンバーカードの裏面を下側にし,人の目に触れないようにするなど,セキュリティ面にも配慮されているーーなどの点を紹介した。
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セミナーでは,視聴者からチャットを通じて多くの質問や意見が寄せられ,一部はセミナー開催中に演者からの回答が示された。なお,今回のセミナーは,7月16日(木)から8月20日(木)にアーカイブ配信され,期間中はオンデマンドで常時視聴できる(https://www.event-info.com/fujitsu-healthcareseminar/ )。
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