2020-7-13
2020年成長戦略発表会の登壇者
(写真左から松葉香子氏,宮田裕章氏,多田荘一郎氏,
大越 厚氏)
GEヘルスケア・ジャパン(株)は,医療における人工知能(AI)の社会実装を早期に進めるために,他社にも開発環境を提供する「Edisonデベロッパー・プログラム」を日本国内でも開始する。さらに,全社横断的にデジタルソリューションを推進するための新組織「エジソン・ソリューション本部」を2020年7月1日(水)に発足させた。
Edisonデベロッパー・プログラムについて,同社では高品質なAIを開発するプラットフォームをパートナーと共有するサービスと位置づけている。迅速かつ効率的なAI開発を行うためのアプリケーションや,精度・品質を検証するためのツールを提供する。また,日常の検査・画像診断の中でAIを使用できるようにするために,ワークフローにAIを組み込む仕組みを用意する。この仕組みは「AIオーケストレーター」と呼ばれ,ある検査の画像診断に対して,どのAIを適用するか,最適な組み合わせを自動的に設定する。プログラミングツールとして提供され,コーディングなどの専門的な知識なくてもユーザー自身が容易に行うことができ,日常臨床の中で最適なAIの選択が可能になる。
GEヘルスケアでは,世界的にAIブランドの「Edison」を展開しており,開発環境である「Edison Platform」を用いて,CTなどの画像診断装置に搭載する「Edisonスマートデバイス」やソフトウエア単体として提供する「Edisonアプリケーション」としてAIの製品化を進めている。このEdisonデベロッパー・プログラムにより,自社だけでなく国内外の企業とのパートナーシップの下に医療分野のAI開発を進めていく。
また,エジソン・ソリューション本部は,医療機関や大学,研究機関,企業とのパートナーシップにより,プレシジョンヘルスの実現をめざすために新設された。同社では,かねてからパートナーシップの強化を進めており,奈良県立医科大学とロシュ・ダイアグノスティックスとの心不全リスクの早期発見・介入を促す診断法の開発,京都大学との核医学と放射線治療を融合したセラノスティクスの研究,慶應義塾大学と連携しAIデータサイエンティストの育成などに取り組んできた。エジソン・ソリューション本部では,このようなパートナーシップを加速させ,研究開発に有用なデータの蓄積やオープンプラットフォームの構築を図り,医療分野の課題解決に貢献するとしている。
7月7日(火)に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)で開催した「2020年成長戦略発表会」では,代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏が,「医療課題解決のための社会実装」と題して,プレシジョンヘルスの実現には,プラットフォームとパートナーシップによって人とモノがオープンにつながることが重要だと述べて,エジソン・ソリューション本部発足の背景を説明した。このほか,執行役員アカデミック本部長兼エジソン・ソリューション本部長の松葉香子氏がパートナーシップの実例を紹介。さらに,ヘルスケア・デジタル本部チーフ・デジタル・ストラテジストの大越 厚氏が,Edisonデベロッパー・プログラムの解説を行った。
2020年成長戦略発表会では,慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授の宮田裕章氏によるゲスト講演が設けられた。「コロナ危機の先にある新しい社会とヘルスケア」と題した講演の中で宮田氏は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックについて,経済の影響も含め世界史に残る出来事であると述べた上で,デジタルトランスフォーメーション(DX)は100年に一度の革命であり文明を根本的に変えるだろうと説明した。そして,データ駆動社会が進んでいる状況を踏まえて,COVID-19の感染拡大防止対策においてもデータは重要であると指摘。さらに,DXの本質は体験価値であるとし,従来のような「最大多数の最大幸福」ではなく,ビッグデータとAIで個人の価値をとらえて,個別化と包摂を可能にすることが大切だと言及した。その上で,宮田氏は,データは共有財であり,今後はオープンなデータ活用,データアクセス権が求められると述べ,医療を含めたパーソナルデータの活用による新産業の創出などが可能な社会の実現に期待を示した。
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