2020-5-26
講演を行う原 聖吾 氏(左)と佐近康隆 氏(右)
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は,2020年5月21日(木),ヘルステック領域における取り組みについて,オンライン説明会を行った。同社が2006年に提供を開始したAWSクラウドは,多くの製薬企業や製薬企業向けサービス提供者,医療機関,保険者などのインフラを支援する。また,新型コロナウイルス感染症の流行に伴って需要が急増しているオンライン診療でも,AWSクラウドが活用されている。説明会では,AWSジャパンインダストリー事業開発部シニア事業開発マネージャー(ヘルスケア・ライフサイエンス)の佐近康隆氏と,自社のオンライン診療サービスでAWSを利用している(株)MICINの代表取締役CEOの原 聖吾氏が登壇し,ヘルスケア領域におけるAWS活用の広がりやAWS活用のメリット,AWSを活用したオンライン診療の取り組みなどについて解説した。
AWSは,ヘルスケア領域で多くの顧客を持ち,その活用の幅も広がりつつある。その一例として佐近氏が紹介したのが,京都プロメド(株)が手掛ける遠隔画像診断と,(株)アルムが運営する医療従事者向けコミュニケーションアプリ「Join」の連携である。京都プロメドが,2020年4月末に,AWS上に遠隔画像読影ツールの構築を行い,AWS上でJoinと連携を開始。それにより,すでにJoinを利用中の医師は,新たなシステムを導入することなく,AWS上で京都プロメドの読影システムを利用することが可能になった。
また,佐近氏は,ヘルスケア領域におけるAWS活用のメリットとして,(1)低コスト,(2)新しい取り組みの加速(インフラ調達の俊敏性など),(3)運用負荷の軽減(豊富で統合されたマネージドサービス),(4)最先端で幅広いAI/機械学習(ML)サービス,(5)高いセキュリティの確保の5点を挙げる。3点目の運用負荷の軽減については,国際的な医療情報交換の次世代標準であるHL7 FHIRに対応したサーバーレスアーキテクチャを提供することで,顧客はアプリケーションのロジック開発に注力できる。また,AWSが最も重視するセキュリティについては,医療情報3省ガイドラインにAWS上で対応するための考え方などを,AWSのパートナー企業が作成した「医療情報システム向けAWS利用リファレンス」を策定,最新ガイドラインに対応する改訂版が7月に公開される予定であることなどが紹介された。
続いて,AWSを活用した取り組みとして,MICINの原氏が,同社のオンライン診療サービス「curon(クロン)」について紹介した。2016年4月に提供を開始したcuronは,2020年5月時点で3500件以上の医療機関に導入されている。サービス開始時よりAWSを活用しており,そのメリットとして原氏は,エンジニアリソースが限られたスタートアップにとって,豊富なマネージドサービスが必要な機能を用意に実現できる点を挙げる。
さらに,新型コロナウイルス感染症拡大に伴うオンライン診療サービスの需要の変化にも,AWSは強みを発揮している。2020年2月以降,新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬の臨時的な取り扱いとして,オンライン診療の対象疾患の拡大や初診オンライン診療の容認などが臨時で認められた。curonも導入施設が急増し,皮膚科や小児科など,従来の対象疾患領域外の診療科からの問い合わせも相次いでいる。原氏は,AWS活用により,新機能・サービスの迅速な開発や立ち上げのほか,アーキテクチャを変更することなく容易に急激なユーザー増加への対応が可能であったと述べ,AWSの利点を強調した。
また原氏は,オンライン診療は患者と医療従事者双方にとって,「感染拡大防止ツール」という付加価値があるとする。MICINでは,説明会の同日,需要が急増している電話での服薬指導時の代金未回収リスクや配送手配をサポートする調剤薬局専用サービス「curonお薬サポート」を正式にリリースした。今後,ビデオ通話機能などを段階的に追加し,オンライン診療や服薬指導,医薬品の配送などを一気通貫で行えるサポートシステムを提供していく予定だ。原氏は,今後も発生が懸念される新興感染症のパンデミックに備え,オンライン診療を整備し,強靭なインフラ基盤として機能する仕組みを構築したいと述べ,講演を締めくくった。
●問い合わせ先
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
https://aws.amazon.com/jp/health/