2019-12-16
「IoT時代の医療情報の利活用」をテーマに開催
第39回医療情報学連合大会(第20回日本医療情報学会学術大会)が2019年11月21日(木)〜24日(日)の4日間,幕張メッセ(千葉県千葉市)を会場に開催された。大会長は中川 肇氏(富山大学)が務め,大会テーマには「IoT時代の医療情報の利活用」が掲げられた。大会2日目の11月22日に行われた開会式で挨拶に立った中川大会長は,「本学会は,医療情報学の“連合”大会として多くの学会との共同企画が目玉の1つでもある。今回も大会企画,共同企画を含めて盛りだくさんの演題が集まった。学会のテーマは,“IoT時代の医療情報の利活用”としたが,これからの医療に情報システムがどのように関与し,寄与していくかを活発に議論していただき,その成果を持ち帰って医療の質の向上に役立ててほしい」と述べた。
開会式に続いて,2018年に新設された学術論文賞の表彰が行われた。学術論文賞は,医療情報学会会員のさらなる論文投稿を促すことを目的に設けられたもので,今年は6本の応募の中から3本の優秀賞が選ばれ,その中から最優秀賞を決定した。最優秀学術論文賞に選ばれたのは,Purnomo Husnul Khotimah氏(京都大学医学部附属病院)らの“Medication Episode Construction Framework for Retrospective Database Analyses of Patients with Chronic Diseases”〔IEEE J. Biomed. Health Inform., 22(6):1949-1959, 2018.〕。表彰では,Purnomo Husnul Khotimah氏のほか,優秀賞の島井良重氏(大阪大学),武田理宏氏(大阪大学)に,中島直樹学会長(九州大学)から表彰状が授与された(学術論文賞の詳細は,http://jami.jp/award/acaPaperAward2019.html
を参照)。
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今回の大会では,大会長講演,学会長講演,教育講演各1題,特別講演2題,大会企画5セッション,共同企画10セッション,特別共同企画1セッション,公募シンポジウム3セッション,公募ワークショップ12セッションなど多彩なプログラムが用意された。
22日(2日目)午後には,学会長講演「診療データは溜まるのか、貯めるのか」が行われ,2019年6月に新たに学会長に就任した中島氏が講演した。中島氏は,診療データの活用をさらに進めるために,目の前のニーズではなく,より大きな視点で進むべき方向を指し示す“Super Needs”を考えるべきとして,1) ポピュレーションマネジメント,2) 患者エンゲージメント,3) LHS(Learning Health System)の3つを挙げた。そして,いずれのキーワードにおいても医療情報基盤の構築が重要であり,日本ならではの精緻で質の高いデータの収集が,圧倒的な量を持つ“GAFA”や中国などに対抗する手段となりうると述べた。集団に対するリスク管理を行う“ポピュレーションマネジメント”は,日本では特定健診制度からスタートし,レセプト電算化を経てデータヘルス計画が立ち上がるなど世界の中でも一歩進んでいると評価した。同時に,さらなるデータ活用のためには,企業の健康経営や過疎地などでの運用を支援できるようなEHR(Electric Health Record)のあり方を議論する必要があるとした。2) 患者エンゲージメントは,“患者中心”からさらに1歩進んで患者自らが自分の意思で選択する“患者主体”の医療の構築をめざすもので,ビジネス分野における“顧客エンゲージメント”の考え方がベースとなっている。中島氏は,医療者と患者とのフラットな信頼関係構築のためには,双方向の情報基盤が必要でスマートフォンなどのモバイルデバイスを使ったPHR(Personal Health Record)が重要になると期待した。
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23日(3日目)には,中川大会長による大会長講演「医療情報にかかわる人材のさらなる重要性と社会的認知の必要性」が行われた。中川氏は,自身がこれまで取り組んできた医療情報学の教育や人材育成について振り返り,今後,医療情報に携わる人材に求められる役割やカバーすべき領域,学ぶべき知識の範囲について提言した。また,中川氏は現在,日本医療情報学会の医療情報技師育成部会の部会長を務めているが,医療情報技師についてもアンケート結果などによる現状認識と課題について言及した。中川氏は,学会として資格の認知度のさらなる向上を図るのと同時に,より専門性が高く医療現場での評価が高い“上級”資格の取得をめざしてほしいと述べた。
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2日目の大会企画1では,松村泰志氏(大阪大学)と美代賢吾氏(国立国際医療研究センター)が座長を務め,「画像レポート見落とし問題の対策と求められるシステム機能」が行われた。このセッションは,松村氏が研究代表者を務める2018年度地域医療基盤開発推進研究事業「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」研究班の活動成果の報告を中心とするもの。同研究班では,画像診断報告書の確認不足に起因する問題が取り上げられたことから,原因の把握や病院情報システムを含む運用などの対策についての検討を行ってきたが,その成果を報告した。
なお,今回の研究会の報告書を基に2019年12月11日に厚生労働省から「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」の事務連絡が発出された。
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3日目の大会企画2では,黒田知宏氏(京都大学)が座長を務め,「医療機関を取り巻く情報セキュリティの現状:何が脅威で、何を守るために、できることは何か」が行われた。美代氏がオーガナイズしたセッションで,2020年に開催される国際イベントを控え,年々増加するサイバー攻撃など情報セキュリティの現状と対策について,トレンドマイクロやパロアルトネットワークスなどの専門企業や,独立行政法人情報処理推進機構のJ-CRAT(サイバーレスキュー隊)の担当者が具体例を含めて講演した。医療機関の情報担当者に向けて実践的な対応策が紹介され会場は満員となっていた。
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●問い合わせ先
第39回医療情報学連合大会 大会事務局
富山大学附属病院 医療情報部
TEL 076-434-5005