2019-9-11
会場風景。症例検討では活発な意見が交わされた
第8回湯島乳腺画像研究会が2019年9月6日(金),お茶の水医学会館(東京都文京区)で開催された。湯島乳腺画像研究会は,乳がん画像に関する最新情報の紹介や,症例検討を通じた日常臨床に関する疑問の解消,参加者のレベルアップなどを目的として,年に1回開催されている。8回目の開催となった今回は,55名の参加者があり,講演のほか3題の症例検討が行われた。
司会の獨協医科大学放射線部の久保田一徳氏の挨拶の後,特別講演として,京都府立医科大学放射線診断治療学の後藤眞理子氏が,「乳房MRI:最近の話題−Ultrafast MRI・拡散強調像など−」と題して講演した。後藤氏はまず,乳がんの広がり診断における乳房MRIについて,診断精度は高いものの,偽陽性病変も多く過剰手術の原因となりうるとし,その理由として,画像診断ではエビデンスレベルの高い論文が少ないことを挙げた。他方で,術前MRIは適切な術式選択には有用であり,second look USや2018年に保険収載されたMRIガイド下生検によるMRI detected lesionの適切なマネジメントが重要であるとした。
続いて,乳房MRIの最近の話題として,乳房造影MRIによる乳がん検診について解説した。なかでもAbbreviated MRI(短縮MRI)は,乳がん検出率を維持しつつ撮像・読影時間の削減が可能で,乳がんMRIスクリーニングへの適応や,対象の拡大が期待できるとした。さらに,高濃度乳房(デンスブレスト)に対するAbbreviated MRIとトモシンセシスのがん検出率を比較する国際的な前向き試験が実施されていることなどを紹介。その結果次第では,乳がん検診の個別化の流れにつながるのではないかと述べた。また,Ultrafast MRIに関する最新研究などを報告し,臨床応用への可能性を示唆した。拡散強調画像(DWI)については,いくつかの研究報告があるものの,スクリーニングにおける乳がん検出感度は造影MRIと比較して低いとし,高いレベルのエビデンスが待たれると述べた。
|
|
後半は司会を東京医科歯科大学放射線診断科の藤岡友之氏に交代し,一般演題と症例検討が行われた。一般演題では,都立駒込病院外科(乳腺)の岩本奈織子氏が,「検診マンモグラフィ要精査症例における3次元乳腺密度評価と精査結果」について講演した。岩本氏は,マンモグラフィ検診での異常症例の85%が高濃度乳房であり,高濃度乳房では偽陽性率の上昇や病変がマスキングされるなどの問題があることから,高濃度乳房の検診対策が喫緊の課題であるとした。また,乳腺密度評価ソフトウエア「Volpara density grade(VDG)」の日本人女性におけるデータ蓄積や検討の必要性を指摘した。
|
|
最後に,症例検討として昭和大学病院乳腺外科の垂野香苗氏,がん研究会有明病院画像診断部の五味直哉氏,東京医科歯科大学放射線診断科の森 美央氏が症例を供覧,活発な意見が交わされた。
|
|
|
●問い合わせ先
湯島乳腺画像研究会事務局
東京医科歯科大学医学部放射線科
担当:藤岡,森
TEL 03-5803-5311
mail: radiology.mrad@tmd.ac.jp
ホームページ:http://www.tmd.ac.jp/med/mrad/index.html