2019-8-30
SpaceOARハイドロゲルは,経直腸超音波ガイド下で
会陰部から注入して固形化する。
スペースは約3か月間保持され,ゲルは約半年〜1年で
吸収,体外排出される。
オーグメニックス(株)は,2019年8月28日(水),AP東京丸の内(東京都千代田区)でプレスセミナー「前立腺がんに対する最新放射線治療と副作用低減の取り組み~患者様のQOL向上へ向けて~」を開催した。
前立腺がんに対する放射線治療は,根治治療の1つだが,隣接する直腸の出血など,副作用の低減が課題となっている。オーグメニックスが販売する「SpaceOARハイドロゲル」は,前立腺と直腸の間にゲルを挿入してスペースを作り,直腸を物理的に前立腺から遠ざけることで照射線量を低減させる。米国で行われた臨床試験では,SpaceOARハイドロゲルを使用した強度変調放射線治療(IMRT)施行例で,直腸晩期有害事象の低減や,性機能保持率の向上が認められている。日本では,2018年6月に保険適用され,2019年8月までに全国の80施設で2800例以上に対し使用されている。SpaceOARハイドロゲルを使用することで,より強度の放射線照射が可能になり,照射回数の減少につながることが期待される。ボストン・サイエンティフィック ジャパン(株)のオーグメニックス事業推進部ジェネラルマネジャーの倉谷頼典氏は,SpaceOARハイドロゲルを用いたスペーサ留置術は非常にイノベーティブなものであり,同製品の浸透に注力していきたいと述べた。
プレスセミナーでは,東京大学医学部付属病院放射線科准教授の中川恵一氏が,「前立腺がんに対する最新放射線治療と副作用低減の取り組み〜患者様のQOL向上へ向けて〜」と題して講演を行った。
中川氏は,日本は先進国で唯一,がん死亡率が上昇している背景には,がんに関する知識不足やヘルスリテラシーの低さがあるとし,特に大人へのがん教育は喫緊の課題であると指摘した。特に,その有用性にもかかわらず,放射線治療の実施率が欧米の約半数に留まっているのは,放射線治療に対する知識・理解不足に要因があるのではないかと述べた。さらに,女性の社会進出や高齢者の就労率の上昇により,働く世代のがんが増加している背景を踏まえ,働きながら受けられる放射線治療の重要性が今後ますます高まるとした。
放射線治療は,体幹部定位放射線治療(SBRT)やIMRTなど,高精度照射技術の進歩が著しく,高齢や併発症がある患者でも治療可能なこともあり,特に前立腺がんでは,手術と並ぶ根治治療として選択されている。半面,IMRTでも直腸への照射を完全に避けることはできず,依然として副作用によるQOL低下が問題となっている。中川氏は,副作用低減のための新しい手法である,SpaceOARハイドロゲルを紹介した。SpaceOARハイドロゲルは,ポリエチレングリコールをベースとした合成吸収性材料。経直腸超音波ガイド下で会陰部から針を刺入し,針先が直腸周囲脂肪組織の中にあることを矢状方向および体軸方向の超音波画像で確認したら,生理食塩液でスペースを作り,そこにハイドロゲル10mLを注入,固形化させる。固形化したゲルは,約3か月間安定することから,一連の治療が終了するまでスペースが維持される。ゲルは,約半年〜1年で吸収され,体外へ排出される。東大病院で2017年2月から実施した臨床試験では,前立腺がん患者40例に対しSBRTと併用した結果,手技に伴う合併症はほとんどなく,米国での臨床試験と同様に,直腸の線量を大きく軽減したことなどが報告された。
なお,オーグメニックスは,2018年10月にボストン・サイエンティフィック ジャパンと統合し,2020年1月以降は,ボストン・サイエンティフィック ジャパンが同製品を販売する予定になっている。
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