2019-7-16
405名が参加
第23回CTサミットが,2019年7月13日(土),刈谷市総合文化センターアイリスホール(愛知県刈谷市)で開催された。テーマには,「がんばるCT—Cool CT technology—」が掲げられた。今回の当番世話人は,代表世話人を務める辻岡勝美氏(藤田医科大学)。開会に当たって挨拶に立った辻岡氏は,愛知県では,これまで第1回,第9回,第16回と3回開催され,今回が4回目になると述べ,毎回,灼熱の暑さの中で開かれてきたことから,今回はあえて“Cool”をテーマにも盛り込んだと説明した。そして,実行委員長の鈴木省吾氏(刈谷豊田総合病院),副実行委員長の深田真司氏(JA愛知厚生連豊田厚生病院)と片岡由美氏(藤田医科大学病院)が,自身の教え子であると紹介した上で,「楽しい,役に立つ,そして,熱いCTサミットにしたい」とまとめた。
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プログラムは,教育講演「CTの被曝管理」3演題,ランチョンセミナー4演題,基調講演,特別講演,シンポジウム「最新のCT検査技術」5演題で構成された。最初に行われた教育講演「CTの被曝管理」では,井田義宏氏(藤田医科大学病院)と船間芳憲氏(熊本大学大学院)が座長を務めた。1番目に登壇した大沢一彰氏(済生会中和病院)は,「被ばく管理の動向と被ばく低減技術」をテーマに講演した。大沢氏は,まずCTの被ばくを考える上で重要となる国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告や,2015年に策定された「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定(DRLs 2015)」,2018年度の診療報酬改定で新設された画像診断管理加算3,2020年度からの被ばく線量管理の義務化について説明。さらに,CTの被ばく低減技術として逐次近似再構成法や人工知能(AI)を用いたノイズ低減を解説したほか,自動露出機構(CT-AEC)について取り上げた。大沢氏は,講演のまとめとして,被ばく管理には,システム構築と体制整備が重要であり,診療放射線技師の果たすべき役割の大きさを訴えた。
次いで登壇した柴田英輝氏(JA愛知厚生連豊田厚生病院)は,「被ばく低減施設の取り組みとグループ病院での被ばく管理」と題して,まず線量管理の義務化の流れや線量管理システムについて紹介した。その上で,日本診療放射線技師会の医療被ばく低減施設認定を受けるために同院で行った取り組みについて報告し,職員の意識醸成が図られたことなどを説明した。また,JA愛知厚生連8病院における線量値の収集や撮影条件の解析などの線量管理施策を紹介。線量管理は個人ではなく組織で取り組むことが重要だとまとめた。
続いて,小林育夫氏〔長瀬ランダウア(株)/福井大学〕が,「受動型個体線量計によるCT室の散乱線測定」と題して講演した。小林氏は,日本は世界的に見て医療従事者の被ばく線量が多いとデータを示して指摘。CTの被ばくについては,CT室内の散乱線分布を測定し,被ばくへの意識を高めることが重要だとして,比較的容易に実施できるジャングルジム法による測定方法を解説した。さらに,小林氏は,長瀬産業(株)のノイズ低減ソフトウエア“SafeCT”を取り上げたほか,医療従事者の放射線防護は,患者線量の低減が基本であると述べた。
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この後,会場を小ホールに移して,ランチョンセミナー1,2が設けられた。ランチョンセミナー1は梁川範幸氏(つくば国際大学)と村上克彦氏(福島県立医科大学附属病院)が座長を務め,キヤノンメディカルシステムズ(株)と第一三共(株)の講演。ランチョンセミナー2は,辻岡氏と大沢氏が座長を務め,GEヘルスケア・ジャパン(株)とシーメンスヘルスケア(株)の講演が行われた。また,ランチョンセミナー後には,機器展示会場で出展企業のショートプレゼンテーションも用意された。
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続く基調講演では,井田氏が座長を務め,辻岡氏が「たのしいCT開発の40年〜教育と研究〜」をテーマに講演した。辻岡氏は,ゴッドフリー・ハウンズフィールド氏の研究開発から,「EMI-Scanner」の誕生,国産初の「CT-H」〔(株)日立メディコ,現(株)日立製作所〕の稼働などのCTの歴史を説明。CTの世代分類として,断面方向,体軸方向のビーム形状による違いについて解説した。さらに,CTの重要な技術として,dynamic respiratory scan(DRS),ヘリカルスキャン,dynamic subtraction cine-CT angiography(DSC-CTA),CT透視,flow CT image,Time MIP & Time Stackを挙げ,自作ファントムなどを用いた研究を紹介した。このほか,辻岡氏は,クイズ形式でCT技術の説明を行い,新しい技術開発に向けた教育や研究の重要性にも言及した。
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次に行われた特別講演では,宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生病院)が座長を務め,片田和広氏(藤田医科大学)が「CT技術の明日はどっちだ」をテーマに講演した。片田氏は,エポックメイキングとなったCTの技術を示した上で,まず自身が開発に携わった面検出器CTについて詳述した。面検出器は,時相の均一性や被ばく低減を実現した国産初の最上位機種クラスの医療機器であるとし,製品化されたキヤノンメディカルシステムズの「Aquilion ONE」は,その後改良が重ねられ性能が大幅に向上したと述べ,現在研究が進められている立位CTの製品化に期待を示した。さらに,片田氏は,超高精細CTについても解説。今後,面検出器搭載の超高精細CTが開発されることで,大幅な低被ばく化が図られるとともに,超高分解能のデータを得られるようになると述べた。また,片田氏は,デュアルエナジーCTについても言及し,各社の技術開発により,CTの重要な技術となったがキラーアプリケーションがないのが課題であると指摘した。このほかにも片田氏は,逐次近似再構成技術や三次元画像診断,AIといった技術について臨床にもたらされる恩恵を示した上で,課題を整理した。講演にまとめに当たり片田氏は,CTはまだ発展途上であり,フォトンカウンティングCTの登場などに期待すると述べた上で,GPUなどのコンピュータパワーの重要性に触れ,「将来のCTは統計学である」と強調した。
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続くシンポジウム「最新のCT検査技術」では,平野 透氏(札幌医科大学附属病院)と石風呂 実氏(広島大学病院)が座長を務めた。まず,頭部・頸部について,大村知己氏(秋田県立循環器・脳脊髄センター)が「脳組織の評価における新しい技術と概念 〜コントラストは敵か味方か?!〜」をテーマに発表した。大村氏はテクスチャ特徴量解析による早期虚血変化の検出やデュアルエナジーCTによる仮想単色X線画像を用いた脳梗塞の描出,急性脳虚血のCT firstプロトコールについて症例を交えて解説した。次いで,心臓について,山口隆義氏(華岡青洲記念心臓血管クリニック)が,「サブトラクション技術を用いた心筋性状評価」と題して発表した。山口氏は,CTによる心筋バイアビリティの評価を行うための撮影法として開発した“SMILIE”について解説。遅延相から冠動脈相をサブトラクションして遅延造影画像を得るという原理や実際の症例画像を提示した。次いで登壇した村松 駿氏(大原綜合病院)は,胸部について,「超高精細CTと呼吸動態CTの有用性」をテーマに発表した。村松氏は超高精細CTのSHRモードによる胸腔鏡下手術の術前評価やdynamic volume scanを用いた呼吸動態CTによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)における肺機能の評価を報告した。4番目に登壇した野水敏行氏(富山労災病院)は,四肢について,「四肢領域が手に入れた新しいCT技術の活用と展望」と題して発表した。野水氏は,金属アーチファクトの低減技術である“SEMAR”(キヤノンメディカルシステムズ)や,医用画像ワークステーション「Vitrea」(キヤノンメディカルシステムズ)の“Global Illumination”の使用経験を報告したほか,不顕性骨折を早期発見する撮影法として開発したBone Bruise Image(BBI)について解説した。最後の発表では,三好利治氏(岐阜大学医学部附属病院)が腹部について,「最新CT装置による腹部CT検査の変化」をテーマに発表した。三好氏は,腹部領域におけるデュアルエナジーCTの仮想単色X線画像や密度画像について解説。形態情報だけでなく組成や機能などの付加情報を得られると述べたほか,今後の展望として,画像解析法の確立や新しい造影剤の登場,フォトンカウンティングCTへの期待を述べた。
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すべての発表後には,一般演題(ポスター発表)の表彰式へと進んだ。7演題の発表があった区分A(国際発表)では,谷 和紀子氏(神戸大学医学部附属病院)らの“Influence of reconstruction algorithm for nodule detection on different dose level CT examinations with and without Sn X-ray beam prefiltration”がMagna Cum Laudeを受賞した。また,9演題が発表された区分B(国内発表)では,後藤光範氏(宮城県立がんセンター)らの「口腔領域の造影CT検査における非剛体サブトラクション:撮影軌道の異なる画像の差分処理に金属アーチファクト低減処理は有効か?」がMagna Cum Laudeに選出された。この後,辻岡氏と次回当番世話人の村上氏が挨拶して第23回CTサミットは閉会となった。次回,第24回CTサミットは,2020年7月4日(土)に朱鷺メッセ(新潟県新潟市)で開催される予定である。
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●問い合わせ先
第23回CTサミット
http://ctsummit.jp
●協賛企業(順不同)
・セッション共催企業
キヤノンメディカルシステムズ株式会社,第一三共株式会社,GEヘルスケア・ジャパン株式会社,シーメンスヘルスケア株式会社
・機器展示企業
キヤノンメディカルシステムズ株式会社,GEヘルスケア・ジャパン株式会社,株式会社日立製作所,株式会社フィリップス・ジャパン,株式会社根本杏林堂,メディキット株式会社,シーメンスヘルスケア株式会社
・広告掲載企業一覧
キヤノンメディカルシステムズ株式会社,エーザイ株式会社,東洋メディック株式会社,シーアール中部株式会社,株式会社インナービジョン
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●一般発表(ポスター)表彰
Magna Cum Laude
A(国際発表)
Influence of reconstruction algorithm for nodule detection on different dose level CT examinations with and without Sn X-ray beam prefiltration
谷 和紀子 氏(神戸大学医学部附属病院)
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B(国内発表)
口腔領域の造影CT検査における非剛体サブトラクション:撮影軌道の異なる画像の差分処理に金属アーチファクト低減処理は有効か?
後藤光範 氏(宮城県立がんセンター)ほか
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Cum Laude
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A(国際発表)
Machine learning to identify lymph node metastasis from thyroid cancer in patients undergoing contrast-enhanced CT studies
舛田隆則 氏(土谷総合病院)ほか
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B(国内発表)
舌癌CTにおける義歯の金属アーチファクトは開口位によって回避できる
永澤直樹 氏(三重大学医学部附属病院)ほか
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Certificate of Merit
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A(国際発表)
Movie Projection Systems for Pediatric CT Examinations : Effects on Examination Time, Motion Artifacts, and the Need for Restraints.
永澤直樹 氏(三重大学医学部附属病院)ほか
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B(国内発表)
ツインビーム方式デュアルエナジーの解析精度評価用ファントムの作成〜想定被写体における線減弱係数のエネルギー依存を再現する試み〜
杣 薫織 氏(宮城県立がんセンター)ほか
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