2019-7-16
盛況だったシンポジウム15
「在宅医療介護連携における情報共有~ICTのもつ可能性~」
第1回日本在宅医療連合学会大会が2019年7月14日(日),15日(月)の2日間,京王プラザホテル,工学院大学新宿キャンパス(東京都新宿区)で開催された。同学会は,2019年5月に日本在宅医学会と日本在宅医療学会が合併して発足した。記念すべき第1回目の大会テーマには,その意味も込めて,「ひとつになる 医療 福祉 介護 行政との協働 連携から統合へ まちづくりに向けて」が掲げられた。14日に行われた開会式において,大会長を務める森 清氏(社会医療法人財団大和会東大和ホームケアクリニック院長)は,在宅医療は地域と一つになることが重要であり,多職種連携や町づくりの視点が求められていると,大会テーマに込められた意味を説明した。このほか,開会式では,副大会長の蘆野吉和氏(社会医療法人北斗地域包括ケア推進センター長)も挨拶を行った。
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今大会の事前の登録者数は2863人で,一般・公募演題の応募数は498演題に上った。プログラムは,14日午前に在宅医療における重要なテーマに関する企画が用意され,午後からはその各論へとつながるセッションが組まれ,2日間で起承転結となるように構成された。
重要なテーマの企画として,14日9時からはシンポジウム15「在宅医療介護連携における情報共有~ICTのもつ可能性~」が行われた。座長は,二ノ坂保喜氏(にのさかクリニック)と高林克日己氏(三和病院)が務めた。最初に基調講演として,唐澤 剛氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授/佐久大学客員教授)が「情報化を活用した地域包括ケアネットワークの構築とごちゃまぜによる地域共生社会づくり」をテーマに講演した。唐澤氏は,人口の急速な減少などの日本の課題を整理した上で,地域包括ケアシステムについて,縦軸(医療介護連携)と横軸(生活支援)に分けて概念を説明。さらに,見える関係づくりについて事例を挙げて解説した。このほか,唐澤氏は,石川県金沢市の「Share金沢」などを例に,「多様性×交流=ごちゃまぜ」による地域共生社会づくりの重要性を説いた。
基調講演に続き,最初の演者として,松村 健氏(公立昭和病院)が「東京でのテーラーメイド医療介護情報連携」と題して発表した。松村氏はALSの在宅医療を例に挙げて,ICT利用の考え方を説明した上で,小平市医師会との間で構築した地域医療連携ネットワークについて紹介。標準技術に基づき,地域の特性に合わせたテーラーメイドのICT活用が重要だと述べた。
2番目に発表した目々澤 肇氏(公益社団法人東京都医師会)は,「医療介護連携を中心とした東京都医療ICTネットワークの構築」と題して,東京総合医療ネットワークの構築について報告した。東京総合医療ネットワークは,富士通(株)の「HumanBridge」と(株)エスイーシー「ID-Link」を連携させる形で,2018年11月から本格運用を開始している。現在,8病院での運用がされており,423例のデータ共有が行われているという。目々澤氏はその構築から現在に至る経緯を報告したほか,今後の展開を紹介。さらに,医療介護連携向けSNS利用におけるBYOD対策となる「Virtualブラウザ」などについても概説した。
続いて,後藤 暁氏(後藤医院/飯田医師会)が,「医療資源の乏しい二次医療圏での在宅医療介護連携における情報共有〜情報インフラとしてのICTの可能性〜」と題して発表した。後藤氏は,医療資源が乏しい長野県の飯伊医療圏において構築した飯田下伊那診療情報連携システム「ism-Link」の構築から運用,その後のシステム拡張について報告し,多職種連携においてICTは欠かせないツールであると述べた。
4番目の演者である細田 亮氏(くぬぎ山ファミリークリニック)は,「ゲーミフィケーションを活用しICT導入に苦手意識のある訪問看護ステーションにICTを導入した事務員の試み」をテーマに報告した。細田氏は,同クリニックが開設した訪問看護ステーションにおいて,事務職員がICTに不慣れな看護師に対して行った操作訓練などを紹介。システム稼働後6か月で,残業時間の大幅な削減を図り,業務の効率化だけでなく,チームビルディングにも有効であったと説明した。
次に発表した沼口 諭氏(大垣市医師会)は,「訪問看護ステーションを主体とした在宅患者を面で支えるICT連携〜かかりつけ医の24時間連携をめざして〜」と題して発表した。沼口氏は,岐阜県大垣市が構築した訪問看護向けのシステム「芭蕉@在宅ネット」について,これまでの運用経験を紹介。24時間の連携体制を構築するために,大垣市民病院の救急外来と連携した在宅医療を展開していることを報告した。
最後に,二ノ坂氏が「地域におけるネットワークづくり〜人とICTの融和・発展を」と題して発表した。二ノ坂氏はクリニックにおける地域とのつながりについて,自然なネットワークづくりが大事だとして,「ふくおか在宅ホスピスをすすめる会」などの活動を紹介。さらに,在宅医療におけるICTについて,多職種が平等につながるというメリットを挙げた上で,人と人とのネットワークづくりを基本にだれもがつながる仕組みが必要であるとまとめた。
この後,総合討論が行われ,ICTの費用負担や標準化,利用者を増やすノウハウ,顔の見える関係づくりについて,意見を交換した。
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