2019-7-1
受賞コメントを述べる坂本和翔氏
(株)AZEは2019年6月29日(土),キヤノンSタワー(東京都港区)にて「AZE展2019—全国医用画像コンペティション—」の最終選考会を開催した〔キヤノンマーケティングジャパン(株)共催〕。AZE展は,医用ワークステーションを使用した解析画像および,その技術の臨床的な有用性を高めることを目的とした画像展で,2010年に第1回を開催。10回目となる今回が最後の開催となった。これまでの応募作品総数は905作品に上り,ワークステーションを活用した数々のアイデアや技術が共有されてきた。
(株)AZE代表取締役社長の奥野太郎氏は挨拶で,次のように述べた。
「2010年のスタート時から一貫して,臨床的有用性を高めるような作品を応募していただき,意見交換をしていただいて,それを情報発信していくことがAZE展のミッションだと考え,全国医用画像コンペティションと銘打ち開催してきた。10年間で,このミッションを一定レベルは達成できたのではないかと思い,今回でファイナルとして一区切りをつけることにした。これまで作品を応募いただいた,そして審査していただいた,すべての先生方に御礼を申し上げる」
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今回は全国から91作品の応募があり,一次審査を通過した15作品が最終選考に進んだ。最終選考会では,ニューカマー部門(初応募者が対象)6作品,マスター部門(応募経験者が対象)9作品のプレゼンテーションが行われ,審査委員長の望月輝一氏(愛媛大学医学部放射線科教授)をはじめとした6名の審査員による審査により,最優秀賞,部門賞,特別賞が決定した。
最優秀賞は,坂本和翔氏(医療法人社団高邦会福岡山王病院放射線室)の「下大静脈逆流に対するiNoirとオパシティ変動4D画像の有用性」が受賞した。坂本氏は2018年に続き,2年連続の最優秀賞受賞となった。受賞作品は,ADCTを生かした撮影体位の工夫や低線量撮影でのノイズ低減ソフトウエアの活用,オパシティ変動を利用した4D画像作成による視覚的連続性の向上などの取り組みにより,下大静脈逆流評価を可能にしたもの。講評では,「さまざまな機能・工夫が凝縮されており,日常臨床での努力が見られる」と,今後もさまざまにワークステーションを活用できると期待させるものであると評価された。
マスター部門賞は宮本良一氏(公益財団法人筑波メディカルセンター病院消化器外科)の「膵切除での術前解剖把握,残膵容積測定を可能とする3D画像支援の有用性」,ニューカマー部門賞は齋藤 誠氏(医療法人社団明芳会横浜新都市脳神経外科病院画像診療部)の「脳腫瘍に対しての開頭術前IVRにおける2段階注入CBCTを用いた支援画像」が受賞した。そして特別賞は,古賀千晶氏(医療法人社団健心会みなみ野循環器病院放射線科)の「フュージョン『加算』機能による画像解析」と,井川裕史氏(社会医療法人石川記念会HITO病院放射線科)の「胸髄硬膜動静脈瘻に対する手術支援画像」の2作品が受賞した。
また,AZE展とワークステーションの発展に継続的に寄与している人物に贈られるAZE賞には,小柳宜紀氏(独立行政法人労働者健康安全機構神戸労災病院中央放射線部)が選出された。小柳氏,また神戸労災病院からは,継続的にAZE展への応募があること,そして今回の小柳氏の応募作品は,過去の入賞作品を参考に日常臨床でワークステーションを活用した症例であり,AZE展のめざすところを体現しているとして,奨励賞としてAZE賞が贈られた。
表彰式で総評を述べた望月氏は,自身もワークステーションの黎明期に心臓CTを始め,また,AZE社とともにさまざまなことに取り組んできたと振り返った上で,最終選考に臨んだ入賞者を称え,「“プロフェッショナルは仕事で遊ぶ”。ワークステーションで一生懸命遊んで,患者さんに役立つ画像やソフトウエアを開発してもらえたらと思う」と言葉を贈った。また,AZE展については,「他社のワークステーションを使った作品も応募できる賞で,これはAZEのすばらしい姿勢だと思っている。AZEには,キヤノングループでもこの姿勢を貫き,持ち前の行動力を発揮してグループをより良くしていってほしい」と述べた。
<入賞作品プレゼンテーション>
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入賞作品プレゼンテーション後には,企業講演が2題設けられた。1題目に,キヤノンメディカルシステムズ(株)ヘルスケアIT第二事業部の神長茂生氏が「ヘルスケアIT領域でのAI技術への取り組み」と題して発表した。同社は,AI解析アプリケーションの開発を進め,「Abierto VNA」や「Abierto Cockpit」によりデータを統合し,放射線科や診療科でのAIドリブンなワークフローの実現をめざしている。神長氏はその概要を説明し,AIやマシンラーニングを用いたアプリケーション例,また,AI研究支援の取り組みについて紹介した。
2題目は,キヤノン(株)イメージソリューション第二事業統括部門の和 慎一氏が「8Kが拓く新たな世界」と題し,8Kの動向や8K HDRについて概説し,キヤノンの取り組みと医療分野での8K技術の可能性について講演した。
企業講演の最後に,キヤノンメディカルシステムズ(株)ヘルスケアIT事業統括部事業部長の加藤俊樹氏が登壇し,今後の事業方針について,次のように述べた。「キヤノンメディカルシステムズは2018年1月にキヤノングループの一員となったが,変わらぬ経営理念“Made for Life”のもと,キヤノンとの技術の融合を進めてきた。2018年4月にグループ入りしたAZEについても,同社の良きカルチャーと技術を大事にしながら,われわれの技術と融合させ発展させていくことが使命だと思っている」
なお,会場では実機展示も行われ,「AZE VirtualPlace」の新機能“マクロ機能”や“分離ツール”を紹介。また,小型で視野角の広い3Dプロジェクター「4KLCOSプロジェクター」(キヤノン)も展示され,参加者は4K 3D画像を体感した。
<企業講演>
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<実機展示>
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●問い合わせ先
(株)AZE
TEL 03-6368-4915
AZE展2019-全国医用画像コンペティション-
http://www.aze.co.jp/topics_detail6/azeten_2019.html