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第30回日本医学会総会 2019 中部が盛大に開催

2019-5-7

120周年の節目となった日本医学会総会

120周年の節目となった日本医学会総会

第30回日本医学会総会 2019 中部が,2019年4月27日(土)〜29日(月)の3日間,名古屋国際会議場/名古屋学院大学白鳥学舎,ウインクあいち(愛知県産業労働センター),名古屋大学博物館,ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場,いずれも愛知県名古屋市)を会場に行われた。日本最大級の医学系学術集会である日本医学会総会は,日本医学会と日本医師会が協力して4年に一度開催している。1902(明治35)年に第1回が開かれてから120周年という節目を迎えた今回,名古屋大学医学部長,同大学医学部附属病院院長などを歴任した齋藤英彦氏が会頭を務め,テーマには「医学と医療の深化と広がり〜健康長寿社会の実現をめざして〜」が掲げられた。

メイン会場となった名古屋国際会議場

メイン会場となった名古屋国際会議場

 

初日27日の午前,第1会場で開会式に続き行われた会頭講演において,齋藤会頭は,「医学・医療と生老病死:不変の精神と技術革新」と題して,健康長寿社会の実現に向けた技術革新の重要性について言及した。齋藤会頭は,まず日本人の平均寿命が延びている一方で,健康寿命との乖離も進んでいると指摘。医学・医療の原点は人の「生老病死」に寄り添うことであるが,長寿社会が進んだことで「生老病死」の境界がなくなりつつあると述べた。その上で,齋藤会頭は,健康長寿社会に寄与する技術革新として,「ゲノム医療」「ビッグデータ,人工知能」「ロボット技術」「再生医療」の4つを挙げ,その現状と将来展望について説明した。また,齋藤会頭は,健康長寿社会に向けて,疾病予防・介護予防の推進,診療報酬体系の見直し,技術革新による効率化・省力化,診療科・地域での医師偏在の是正,社会の理解・協力を得ての働き方改革,を提案した。
第1会場では,会頭講演の後に,日本医師会長講演,日本医学会長講演,2014年のノーベル物理学賞受賞者の天野 浩氏による開会講演が行われた。日本医師会長講演では,横倉義武会長が「日本医師会の医療政策〜健康な社会を作ろう〜」をテーマに,かかりつけ医を中心とした切れ目のない医療の提供による健康長寿社会の実現に向けた日本医師会の活動を説明。生涯教育プログラムなどを紹介した。また,日本医学会長講演では,門田守人会長が登壇。「社会と共に進化する日本医学会」と題して,現在132の分科会を抱える日本医学会の歩みを概説した上で取り巻く環境や課題について整理し,アカデミアとして社会的責務を果たすことが重要であると述べた。次に開会講演を行った天野氏は,「健康長寿社会を支えるトランスフォーマティブエレクトロニクス」を講演テーマに掲げた。そして,健康長寿社会の向けたイノベーションの実現には,企業の協力や人材育成が重要だとして,ワイヤレス電力伝送などのトランスフォーマティブエレクトロニクス技術の研究事例を紹介した。

サックスプレーヤーの浜崎 航氏によるオープニングアクト

サックスプレーヤーの浜崎 航氏による
オープニングアクト

愛知県知事の大村秀章氏,名古屋市長の河村たかし氏も出席した開会式

愛知県知事の大村秀章氏,名古屋市長の河村たかし氏も出席した開会式

 

会頭:齋藤英彦 氏

会頭:齋藤英彦 氏

日本医師会会長:横倉義武 氏

日本医師会会長:
横倉義武 氏

日本医学会会長:門田守人 氏

日本医学会会長:
門田守人 氏

     
愛知県知事:大村秀章 氏

愛知県知事:大村秀章 氏

名古屋市長:河村たかし 氏

名古屋市長:河村たかし 氏

開会講演:天野 浩氏

開会講演:天野 浩氏

 

今回の日本医学会総会では,ノーベル賞受賞者3名の講演を聴講できる貴重な機会に恵まれた。最終日29日には,第1会場において,2018年のノーベル医学生理学賞受賞者,本庶 佑氏による記念講演「がんを免疫力で治す」,2012年のノーベル医学生理学賞受賞者,山中伸弥氏の閉会講演2「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」が設けられた。
また第30回日本医学会総会 2019 中部の開催に当たっては,健康長寿社会の実現に向けて「健康社会宣言 2019 中部」が策定され,(1)未来の医療につながる基礎・臨床医学研究の推進,(2)多様な社会構成に対応できる医療環境の整備,(3)多様化する医療人の育成,配置,労働環境の整備,(4)国境の垣根を超えた医療の推進,の4つの柱が示された。学術講演のプログラムはこの宣言に関連し,基本構想として4つの柱「柱1 医学と医療の新展開」「柱2 社会とともに生きる医療」「柱3 医療人の教育と生き方」「柱4 グローバル化する日本の医療」で構成された。このうち,「柱1 医学と医療の新展開」では,人工知能(AI)やprecision medicineなどがテーマとなった。その中の,「1-1 AIとICTはどこまで医療を変えるか」では,27日に第2会場で「1-1-1 ビッグデータは医療の何をどう変えるのか」,第13会場で「1-1-2 遠隔医療が変える日本の医療」,28日に第11会場で「1-1-3 人工知能が切り開く未来医療」,第28会場で市民公開講座「~AIが命を救い,新薬を開発する! ~ 人工知能が切り開く未来医療」が設けられた。

座席を大幅に上回る聴講者で埋まった学術講演「1-1-1 ビッグデータは医療の何をどう変えるのか」

座席を大幅に上回る聴講者で埋まった学術講演
「1-1-1 ビッグデータは医療の何をどう変えるのか」

 

このほか,ポートメッセなごやで学術総合展示,名古屋国際会議場で学術テーマ展示と「メディカルメッセ in 第30回 日本医学会総会 2019中部」,名古屋大学博物館で「医学史展」が開かれた。また,3月30日(土)〜4月7日(日)には,市民展示として「健康未来EXPO 2019」がポートメッセなごやで開催された。
なお,次回は2023年の日本医学会総会では,春日雅人氏が会頭を務め,2023年4月21日(金)〜23 日(土),東京国際フォーラムをメイン会場に開催される。

基本構想の4つの柱で構成された学術テーマ展示(名古屋国際会議場)

基本構想の4つの柱で構成された学術テーマ展示
(名古屋国際会議場)

愛知県企業などが参加した「メディカルメッセ in 第30回 日本医学会総会 2019中部」(名古屋国際会議場)

愛知県企業などが参加した「メディカルメッセ in
第30回 日本医学会総会 2019中部」
(名古屋国際会議場)

   
学術講演会場となった名古屋学院大学白鳥学舎

学術講演会場となった名古屋学院大学白鳥学舎

ウインクあいち(愛知県産業労働センター)の市民公開講座会場

ウインクあいち(愛知県産業労働センター)の
市民公開講座会場

   
ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)の学術総合展示

ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)の
学術総合展示

「医学史展」が開かれた名古屋大学博物館

「医学史展」が開かれた名古屋大学博物館

   
共催した名古屋市科学館「血液ツアーズ 人体大解明の旅」

共催した名古屋市科学館
「血液ツアーズ 人体大解明の旅」