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第11回3D PACS研究会,「AIにつなげる技術」をテーマに開催

2018-12-12

100名を超える参加者があった研究会の様子

100名を超える参加者があった研究会の様子

第11回3D PACS研究会(代表世話人:国立病院機構宮城病院・立石敏樹氏)が,2018年12月9日(日),「AIにつなげる技術」をテーマとして東京大学医学部附属病院の大会議室で開かれた。当番世話人は,北里大学北里研究所病院の小林隆幸氏が務めた。ネットワーク型の3Dワークステーションの登場を機にスタートした同研究会は,検査受付から撮影,画像作成・提供まで実践的に扱う研究会として活動している。開会に当たって挨拶した小林氏は第11回研究会のテーマについて,「現在,大きな話題を集めている人工知能(AI)だが,活用のためには過去からの画像処理技術の流れを理解して,新しいことに取り組むことが必要だ。“故きを温ねつつ”最新の話題も取り入れてAIをどのように活用するか考える機会にしたい」と述べた。

当番世話人:小林隆幸 氏(北里研究所病院)

当番世話人:小林隆幸 氏
(北里研究所病院)

   

 

開会挨拶後のセッションは,全体テーマと同タイトルのシンポジウムで,滋賀医科大学医学部附属病院の牛尾哲敏氏と新潟大学医歯学総合病院の金沢 勉氏を座長として4題の講演が行われた。「医療画像情報管理の将来ビジョン」と題して講演した熊本大学医学部附属病院の池田龍二氏は,これからの診療業務やシステム導入でポイントとなる,AI,ブロックチェーン,Digital Twin,RPA(Robotic Process Automation)の4つのキーワードを中心に,その概要や課題を含めて抑えるべきポイントを紹介した。池田氏は,ガートナー社が発表している先進技術の社会への浸透度を示す“ハイプ・サイクル(日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年=https://www.gartner.co.jp/press/pdf/pr20181011-01.pdf )”なども紹介し,キーワードの新規性に惑わされることなく,技術を見極めることが重要だと述べた。その上で,データ管理や情報活用のためには,今の電子カルテシステムや放射線情報システム(RIS)で本当にいいのか,AIやRPAなどを取り入れて効果的で効率的なシステムをベンダーとともに構築することが必要だとした。
そのほかの演題では,シーメンスヘルスケア(デジタルサービス事業部・松島輝昌氏)が,「Siemens Healthineers のAI技術への取り組みのご紹介」として,「Smart X-Ray Tube」や,胸部CT画像,胸部単純X線画像,前立腺のMRI画像を用いた診断支援システム,Digital Twinによる症状予測モデリングなど,AIを用いた最新の取り組みを紹介した。日立製作所(ヘルスケアビジネスユニット・白勢竜二氏)は,「MRIの変遷〜AIへの可能性」と題して,従来からの画像処理技術とディープラーニングを組み合わせた“Hybrid Learning”による,撮像自動位置決め,繰り返し再構成,マルチ定量値画像“QPM”,読影支援などの開発の方向性を説明した。さらに,EIZO(開発&技術リサーチ営業技術担当・前田一哉氏)が「医用モニタの変遷と今後の表示デバイス〜CRTからLCD,そしてOLEDへ」として,医用画像モニタの進化の歴史を振り返りつつ,最終的な解析結果の表示装置としてのモニタのこれからについて概説した。

座長:左から金沢 勉 氏(新潟大学),牛尾哲敏 氏(滋賀医科大学)

座長:左から金沢 勉 氏(新潟大学),
牛尾哲敏 氏(滋賀医科大学)

池田龍二 氏(熊本大学)

池田龍二 氏
(熊本大学)

 

 

松島輝昌 氏(シーメンスヘルスケア)

松島輝昌 氏
(シーメンスヘルスケア)

白勢竜二 氏(日立製作所)

白勢竜二 氏
(日立製作所)

前田一哉 氏(EIZO)

前田一哉 氏
(EIZO)

 

午後のセッションⅣ「被ばく管理」は,座長を務めた国立病院機構東埼玉病院の武田聡司氏が,「ある意味,AIよりも先に診療放射線技師が取り組まなければならない喫緊の課題だ」とコメントしてスタートした。
最初に,AZEの赤木信裕氏が日本画像医療システム工業会(JIRA)経済部会診療報酬委員会副委員長の立場で,「被ばく線量管理について〜H30年度診療報酬改定と法制化について」を講演した。赤木氏は,線量管理と線量最適化への取り組みが,2018年の診療報酬改定で画像診断管理加算の施設基準として盛り込まれたこと,また,「医療放射線の適正管理に関する検討会」において2020年4月の施行をめざして線量の管理・記録を義務づける医療法の関係省令改正が進められていることを紹介した。省令改正では,管理や記録のための体制づくりや業務従事者の研修の実施なども求められており,各医療機関での早急な対応が迫られている。続いて,各社から医療被ばく線量管理システムをプレゼンテーションした。紹介されたのは,バイエルの「Radimetrics」,PSPの医療被ばく線量管理システム「iSED(アイセド)」,フォトロンM&Eソリューションズの「被ばく管理レポート」,フィリップス・ジャパンの「DoseAware,DoseWise Portal」。

座長:武田聡司 氏(国立病院機構東埼玉病院)

座長:武田聡司 氏
(国立病院機構東埼玉病院)

赤木信裕 氏(AZE)

赤木信裕 氏
(AZE)

 

 

続いて,済生会川口総合病院の富田博信氏,東京大学医学部附属病院の井野賢司氏が座長を務め,特別講演「人工知能(AI)が変える医療の現場」が行われた。米国TeraRecon社のカルロス・グレゴリ・スミス氏が,同社が提供するAIソリューションとして「ENVOY AI」,「NORTHSTAR AI Results Explorer」などを紹介した。ENVOY AIは,TeraRecon社が2016年に買収したAIのマーケットプレイス&プラットフォームで,LunitやVUNO,エルピクセルなど40社以上の70のアルゴリズムが登録されており,米国の9つのヘルスケアセクターですでに利用が始まっている。また,「NORTHSTAR」は,TeraRecon社が提供するAIの解析結果を読影環境に統合するためのブラウザ。さらに,同社のワークステーションである「iNtuition」への統合も進めていることを紹介した。

座長:左から井野賢司 氏(東京大学),富田博信 氏(済生会川口総合病院)

座長:左から井野賢司 氏(東京大学),
富田博信 氏(済生会川口総合病院)

カルロス・グレゴリ・スミス 氏(米国TeraRecon社)

カルロス・グレゴリ・
スミス 氏
(米国TeraRecon社)

 

 

最後のセッションは小林氏を座長として,「画像診断におけるディープラーニング入門」と題して,国際医療福祉大学三田病院放射線診断センターの吉岡直紀氏が講演した。吉岡氏は,最初にディープラーニングの基礎編として畳み込みニューラルネットワーク(CNN)について概説し,代表的なCNNアーキテクチャとしてVGGネットやResNetなどを紹介した。その上で,実践編としてPCベースで可能なディープラーニングの環境作りについて説明し,実際に学習済みの環境を用いて動物の画像の識別をデモした。さらに,現在取り組んでいる,ディープラーニングを用いたCT画像での大動脈の抽出と自動計測のシステムについて紹介した。

吉岡直紀 氏(国際医療福祉大学三田病院)

吉岡直紀 氏
(国際医療福祉大学三田病院)

   

 

そのほか,共催企画としてモーニングセミナー「造影剤安全性に関する最近の話題〜ESURガイドラインVer.10.0を中心に」(エーザイ),ランチョンセミナー「心電図の基礎」(フクダ電子)が行われた。また,展示会場では,AZE,アイ・エス・ビー,インフォコム,エーザイ,EIZO,シーメンスヘルスケア,テラリコン・インコーポレイテッド,日立製作所,PSP,フィリップス・ジャパン,フォトロンM&Eソリューションズ,フクダ電子南東北販売,メディカルクリエイト,リマージュジャパン(順不同)などが3Dワークステーションや医療被ばく線量管理システムなどを展示した。
次回の3D PACS研究会は,池田龍二氏を当番世話人として,2019年12月15日(日)に熊本で開催の予定。

協賛企業による展示も行われた。

協賛企業による展示も行われた。

 

 

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