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ハートフローが“ハートフローFFRCT”の保険収載に合わせ記者発表を開催

2018-12-6

活発な質疑応答の様子

活発な質疑応答の様子

ハートフローが開発した非侵襲的冠動脈診断“ハートフローFFRCT解析”が,2018年12月1日より保険収載された。ハートフローFFRCT解析は個別の患者に対応し,通常の冠動脈CTスキャンデータを用いて患者の冠動脈3Dモデルを構築。先進アルゴリズムにより血管狭窄が心臓への血流に与える影響を解析する。撮影したCTデータを専用ネットワークを通じて同社センターに転送するとさまざまな解析が行われ,数時間後に報告書がオンラインで医療機関に提供される。解析には人工知能(AI)のディープラーニングの手法が用いられており,自動的に作成された冠動脈モデルを同社のアナリストが検査,修正するため,提供されるデータは精度の高いものとなっている。すでに国内における製造販売承認を取得しているほか,米国,EU,カナダでも承認されており,2万5000件超に対し実施されている(2018年10月31日時点)。

保険収載を機に,12月4日(火)に丸の内ビルディング(東京都千代田区)で行われた記者発表では,ハートフロー・ジャパン合同会社マーケティング部ディレクターの上木原和隆氏の挨拶の後,ハートフロー創設者兼最高技術責任者のチャールズ・A・テイラー氏が,「個別患者に適応した心疾患ケア」と題して講演した。

冠動脈疾患による年間死亡者数は世界で1800万人に上り,関連する医療費は2030年までに1兆ドルになると予測される。非侵襲的負荷検査の結果,冠動脈疾患が疑われる患者に対して,現状では,侵襲的冠動脈造影が施行されるが,対象患者の半数以上に臨床的関連性のある疾患は認められないことが論文で報告されている。テイラー氏は,結果的に過剰診断につながっているとして,患者の負担や医療費の面での問題を指摘した。その上で,テイラー氏は,ハートフローFFRCTが臨床にもたらす有用性を概説。日本では胸痛などを訴える患者に対し,まず冠動脈CT検査などの解剖学的検査を行い,疑い例に対しドレッドミル心電図やストレスMRIなどの機能的検査を行う。それに対しハートフローFFRCT解析は,CTデータを基に解剖学的および機能的情報を1回の検査で提供可能となる。さらにテイラー氏は,欧州で行われたPACIFIC試験の結果,ハートフローFFRCTはPETや冠動脈CTA,SPECTなどの他の非侵襲的検査を上回る診断精度を示し,また,PLATFORM試験でも,ハートフローFFRCT導入により不要な侵襲的カテーテル診断(ICA)の大幅な削減効果が示されたことを紹介した。

最後に,同社の今後の研究開発活動について,治療開始前に治療の予後予測を行うためのツール(ハートフロー・プランナー)や冠動脈疾患の新たな評価手法の開発,冠動脈プラークの解明などを目標として挙げ,今後,日本でハートフローFFRCTが患者への適切な治療の提供に寄与することを期待したいと述べた。

上木原和隆 氏(ハートフロー・ジャパン)

上木原和隆 氏
(ハートフロー・ジャパン)

チャールズ・A・テイラー 氏(ハートフロー)

チャールズ・A・テイラー 氏
(ハートフロー)

 

 

続いて,横井宏佳氏(福岡山王病院循環器センター長)が,「心疾患患者への最適な診断及び治療」と題して講演した。2018年度の診療報酬改定では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の算定要件として機能的虚血評価が導入された。その背景には,安定冠動脈疾患に対するPCI施行前の虚血検査の実施状況のバラツキがある。虚血検査の一つである冠血流予備量比(FFR)は,FAME1,FAME2試験などにより有用性が認められているものの,侵襲性のため十分に普及していなかった。

横井宏佳 氏(福岡山王病院)

横井宏佳 氏
(福岡山王病院)

   

 

今回保険収載されたハートフローFFRCTは,非侵襲的なことに加え,従来のFFRと比較して診断精度が高く,不要な検査の削減効果があることが複数の臨床試験で明らかとなっている。なかでも,日本を含む世界38施設,5083例を対象に行われたADVANCE試験では,ハートフローFFRCT導入により全体の63%の患者で治療法が変更され,カテーテル治療が見送られた1588例には重大な事象は発生しなかったと報告されている。

横井氏が所属する福岡山王病院でも,ICAを予定する109例を冠動脈CTAのみのケアコホート(50例)とハートフローFFRCTガイド例(59例)で比較したところ,通常のケアコホート例では全例にICAを実施したのに対し,ハートフローFFRCTガイド例ではICA実施は19例(32%)にとどまり,非閉塞性疾患におけるICAの大幅な減少が認められた。また,ICA非実施例に重大な事象の発生は確認されず,海外での試験と同様の結果が得られたとした。さらに,ハートフローFFRCT導入により冠血流予備量比(FFR)/瞬時血流予備比(iFR)が35%,冠動脈造影検査(CAG)が55%減少しており,横井氏は,ハートフローFFRCTのコスト削減効果と,医師が必要な治療に集中できる点を高く評価した。横井氏はまとめとして,ハートフローFFRCTの導入が進めば,より低コストで最適な治療が可能になるとの期待を示し,わが国の豊富なCTデータを活用して,より良い医療の提供につなげていきたいと抱負を語った。

最後に再び上木原氏が挨拶に立ち,ハートフローFFRCTをCAGのゲートキーパーとして確立していくとともに,将来的にはインターベンション治療に生かされる製品づくりをめざしていきたいと締めくくった。

※タイトルのハートフローFFRCTのCTは下付きです。

 

●問い合わせ先
ハートフロー・ジャパン合同会社
担当者:上木原
TEL 03-3539-3730
https://www.heartflow.com/jp

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