2018-12-10
X線動画撮影システムにおる動態撮影の技術や
臨床研究を報告
コニカミノルタ(株)は2018年11月19日(月)に,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」を発売した。このワークステーションと同社の可搬型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine」で構成されるデジタルX線動画撮影システムでは,15fpsで連続パルス照射を行い,その画像から動態画像を作成する。KINOSISは,この動態画像から横隔膜の動きを数値化するなど定量化が可能で,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断への適応が期待される。また,肺組織の動きによる信号値の変化を可視化することから,肺疾患における機能評価にも有用な情報をもたらすとされている。
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今回の発表に先立つ10月13日(土),コニカミノルタbizhub SQUARE(東京都千代田区)において,デジタルX線動画撮影システムの技術的特徴と臨床的有用性を展望する「X線動態画像セミナー」が開催された。当日は,4部構成でプログラムが組まれ,共同研究を行った公益財団法人結核予防会理事長/日本医科大学名誉教授の工藤翔二氏による基調講演のほか,共同研究を行いRSNA 2016でCertificate of Meritを受賞した金沢大学医薬保健研究域保健学系の田中利恵氏,Magna Cum Laudeを受賞した慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)の山田祥岳氏の受賞講演が行われた。さらに,臨床研究を行っている東海大学医学部付属八王子病院,金沢大学附属病院,滋賀医科大学医学部附属病院からこれまでの成果が報告された。
第1部の基調講演では,結核予防会複十字病院放射線診療部放射線診断科の黒﨑敦子氏が座長を務め,工藤氏が「呼吸器画像診断の常識を変えるX線動態画像」をテーマに講演した。工藤氏は,重力の影響を受ける肺循環を,デジタルX線動画撮影システムによる立位の動態画像で観察できることを評価し,血流動画像,換気動画像のアルゴリズムと症例画像を供覧した。その上で,工藤氏は,動態画像で横隔膜や胸郭の動きの可視化は,呼吸リハビリテーションの効果判定や横隔神経麻痺,COPDの診断に有用であるほか,立位で血流分布と換気分布を観察することで,血栓性肺塞栓症,COPDの局所分布異常,うっ血性心不全の診断が可能になると述べた。
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続く第2部のRSNA 2016受賞講演では,黒﨑氏が座長となり,まず田中氏が,Certificate of Meritを受賞した“Dynamic chest radiography using FPD System : Technique”をテーマに講演した。田中氏は,X線動態画像の撮影プロトコールについて解説し,15fpsで10秒間,合計150フレームの動態画像を,1.9mGy以下という低線量で取得できると述べた。また,デジタルX線動画撮影システムによって横隔膜・肋骨の動きの観察や,心機能の評価を行えるとして,肺シンチグラフィの代替検査になる可能性についても言及した。さらに,田中氏は動物実験の結果を踏まえて,肺の換気や血流をリアルタイムにピクセル値の変化としてとらえることができ,造影剤を使用せずに評価が可能になるとして,「静から動へ,形態評価から機能評価へ」向かう新たな技術であると述べた。次いで,山田氏がMagna Cum Laudeを受賞した“Dynamic chest radiography using FPD System : Clinical Usefulness”をテーマに講演した。山田氏は,COPDの多変量解析について解説を行い,デジタルX線動画撮影システムによる換気強調画像では肺の輝度値の変化をとらえることができるとし,ノーマル症例との比較を交えて,重症度評価の可能性を示唆した。さらに,血流強調画像では,心拍出による肺の輝度値を変化を動態画像で観察できることに加え,立位や座位での撮影データで診断を行えることを評価した。
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この後,第3部の臨床研究報告へと進み,公立小松大学保健医療学部臨床工学科/金沢大学客員教授の真田 茂氏が座長を務め,5演題の発表が行われた。最初に東海大学医学部付属八王子病院呼吸器内科の坂巻文雄氏が,「当院における胸部動態撮影の進捗」をテーマに講演した。坂巻氏は,同院における呼吸器診療の検査・診断について解説を行った上で,特発性肺線維症(IPF)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断のポイントを説明した。また,坂巻氏は,デジタルX線動画撮影システムの臨床研究プロトコールを紹介し,COPD,気腫合併肺線維症(CPFE)など,動態解析が有効となる疾患の検討を行ったと述べた。さらに,坂巻氏は,症例画像を供覧して,COPD患者の横隔膜の動きを定量評価できる可能性について説明。本検査法の可能性として,腫瘍性病変のスクリーニング,COPDや間質性肺疾患の重症度・増悪リスク評価,肺循環障害の重症度・病型評価への適応が期待されると述べた。
2番目に発表した金沢大学附属病院呼吸器内科の大倉徳幸氏は,「胸部X線動態画像を用いた呼吸機能評価方法の検討」をテーマに,肺面積・肺面積変化率と呼吸機能の関係の検討結果を報告した。この検討では,肺面積は肺気量分画と強い相関があり,肺面積変化率は気流制限や肺活量低下とともに低下したほか,COPD患者のCATスコアと相関すると述べた。その上で大倉氏は,動態画像は呼吸機能検査や身体活動性評価の代替検査として期待されると報告した。
さらに,3番目の演者として発表した金沢大学附属病院呼吸器外科の田村昌也氏は,「胸部X線動態解析の肺切除術での活用」と題して,58症例での検討結果を報告した。田村氏は,肺切除症例における非侵襲的な呼吸機能評価法としてX線動態解析を用い,術前合併症,切除葉,術後合併症の有無ごとに肺面積変化率を比較。術前合併症の比較では肺線維症発症例,切除葉の比較では術後1週間,術後合併症有無の比較では術前合併症のあった患者で,それぞれ肺面積変化率が低下したと説明した。この結果を踏まえて田村氏は,動態画像が肺切除術後の肺機能評価や合併症予測に有用との見方を示した。
次いで,登壇した滋賀医科大学革新的医療機器・システム研究開発講座の谷 徹氏は,「胸部X線動態画像因子と循環系パラメータの相関性検討(動物実験)」と題して発表した。谷氏は,動物モデルを用いたデジタルX線動画撮影システムによる循環動態評価の実験結果について,輸液・脱血負荷により循環動態を強制的に変化させた動物モデルを作成し、動物モデルの適正確認を行った上で,FPDによる胸部X線動態画像因子と循環系パラメータとの間に相関性を示したことなどを報告した。
第3部最後の発表では,滋賀医科大学医学部附属病院呼吸器外科の花岡 淳氏が,「胸部X線動態解析による手術適用評価」をテーマに臨床研究の成果を報告した。花岡氏は,X線動態画像から算出される肺切除術の術後呼吸機能予測値と実測値を比較したほか,合併症の有無による術後呼吸機能予測値の違いについて検証した。この検証を踏まえ,動態画像による肺機能の局所異常評価に期待を示した。
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次に,第4部のディスカッションが行われた。黒﨑氏と東海大学医学部付属八王子病院画像診断科の長谷部光泉氏が座長を務め,「動態X線が持つ臨床価値とその将来性〜各専門領域から〜」をテーマに,出席者も参加して意見を交えた。呼吸器領域について,福島県立医科大学呼吸器内科学講座の柴田陽光氏,外科領域について谷氏,呼吸リハビリテーションに関しては結核予防会複十字病院呼吸ケアリハビリセンターリハビリテーション科の髻谷 満氏,整形外科領域は埼玉医科大学病院病院長の織田弘美氏が,それぞれの領域における動態画像の適応や期待に関して意見を述べた。また,今後の普及については,山田氏からCTと比較した場合に有用性を示せるかどうかがカギになるとの意見が出された。また,ディスカッションの最後に,工藤氏がデジタルX線動画撮影システムは,従来の形態評価から,動きを見ることで機能評価が可能になる今までにない新しい概念の技術であると述べ,その可能性に大きな期待を寄せた。
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