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GEヘルスケア・ジャパンが「医療現場のワークフロー変革セミナー」を開催

2018-10-9

ワークフローを改善する事例を紹介

ワークフローを改善する事例を紹介

GEヘルスケア・ジャパン(株)は2018年9月15日(土),ナレッジキャピタルカンファレンスルーム(大阪市)において,「医療現場のワークフロー変革セミナー」を開催した。このセミナーは,医療分野のIT化が進む中,放射線部門などでも医用画像管理の効率化や蓄積されたデータの有効活用が求められている状況を踏まえ,同社の最新ソリューションの導入事例を紹介する機会として設けられた。「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)」や人工知能(AI),働き方改革など,最近のホットトピックスも盛り込まれ,医師や診療放射線技師などが多数会場に足を運んだ。

会場後方では“Applied Intelligence”のデモンストレーションを実施

会場後方では“Applied Intelligence”の
デモンストレーションを実施

 

 

最初に,同社代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏が「GE Healthcare Japanのデジタル戦略」と題したプレゼンテーションを行った。多田氏は,まず創業者トーマス・エジソン氏の言葉を引用して,GEは最も困難な課題を解決する企業をめざしていると述べた。その上で,GEという巨大組織で経営のスピード化を図るために,“FastWorks”“PD@GE”“Brilliant Factory”といった取り組みにより,リアルタイムに状況を把握し,柔軟で俊敏な行動変容を遂げている現状を説明した。さらに,リアルタイムで工場の稼働状況を分析するBrilliant Factoryで得た知見を基に,2016年にサービスを開始した“Brilliant Hospital”について,“Asset Performance Management”と“Applied Intelligence”の2つのソリューションを紹介。また,GEのAI技術として,“Image-Base Analytics”“Operational Analytics”“Clinical Analytics”の3領域の技術開発動向を説明した。

多田荘一郎 氏(代表取締役社長兼CEO)

多田荘一郎 氏
(代表取締役社長兼CEO)

   

 

次いで,内閣官房健康・医療戦略室参事官の田中謙一氏が次世代医療基盤法について講演した。田中氏は,同法施行の目的として,現状ではアウトカムに関するデータの利活用に課題があること,質の高い大規模データの収集が研究開発の国際競争に影響すること,個人情報保護法施行による匿名加工医療情報の円滑な利活用の仕組みが必要であることなどを説明した。また,田中氏は,同法の施行により,認定事業者の情報基盤の拡充と利活用が促進され,患者に最適な医療を提供できるようになるといったメリットにも言及。その上で,私見として同法の運用に当たっては,ほかと比較した医療の特質を理解すること,情報通信技術の利活用は手段であり,自立支援を基本とした地域包括ケアシステムの構築が目的であることを心得ておくことが重要だとまとめた。

田中謙一 氏(内閣官房健康・医療戦略室)

田中謙一 氏
(内閣官房健康・医療戦略室)

   

 

休憩を挟み,3番目に登壇した京都大学医学部附属病院医療情報企画部副部長の岡本和也氏は,「京大病院における問診票の取得方法に関する改善提案」をテーマに講演した。同院では,ソニー(株)のデジタルペーパーと連携サーバソフトウエアを組み合わせた問診票アプリケーションの実証実験を放射線部で行った。検査室で被検者にデジタルペーパー上の問診票・同意書に入力してもらい,これらを(株)ファインデックスの文書作成システム「DocuMaker」とスキャン画像管理システム「C-Scan」と組み合わせることで,ペーパーレス運用を可能にした。岡本氏は,その結果を踏まえ,放射線部の職員からの高評価を得ていることから,今後本格的な運用を検討していると述べた。

岡本和也 氏(京都大学医学部附属病院)

岡本和也 氏
(京都大学医学部附属病院)

   

 

4番目の講演では,大阪国際がんセンター放射線診断・IVR科副技師長の川眞田 実氏が登壇。「VNA+OCDB(Open Connect Database)によりもたらせること」と題して,2017年から稼働している第4期PACSについて紹介した。同センターでは,2001年に第1期のPACSが稼働し,その後2006年にGE社製PACSに更新,2011年からの第3期システムを経て,2017年からvendor neutral archive(VNA)とOCDBによる統合画像参照システムを運用している。以前は,放射線科のPACSに加え,内視鏡,マンモグラフィ,血管撮影装置,超音波の画像保管システムを導入しており,データを一元管理できなかったことから,非効率的な運用となっていた。川眞田氏は,VNAにより各画像検査データを一元管理して,OCDBを介してDICOMビューワや医用画像ワークステーションに画像を配信するシステムとすることで,効率的に比較読影が可能になったほか,ワークステーションでの画像処理速度が向上するなどのメリットが得られていると述べた。

川眞田 実 氏(大阪国際がんセンター)

川眞田 実 氏
(大阪国際がんセンター)

   

 

次いで,公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院情報システム部部長の藤川敏行氏が,「地域共同利用型PACSの紹介」をテーマに講演した。同院では,ストレージ容量不足などの問題からPACSを更新することとし,放射線部門のPACSと脳血管撮影装置の画像保管システムを統合した。この際,近隣医療機関のデータも保管可能にして,データセンター上で共同利用できるようにした。県内にデータセンター,宮崎県にバックアップセンターを置き,岡山情報ハイウェイを用いて,自院だけでなく他社PACSを導入している医療機関との間で,データを共有できるようにした。藤川氏は,患者IDの名寄せなどの運用方法を解説したほか,遠隔読影システム,所見確認システムについても紹介した。現在,この地域共同利用型PACSは,同院以外で5施設が参加しており,IDの名寄せは6万3500件に上っているという。

藤川敏行 氏(倉敷中央病院)

藤川敏行 氏
(倉敷中央病院)

   

 

6番目の講演では,東京都保健医療公社大久保病院放射線科医長の服部貴行氏が登壇した。服部氏は,「読影効率向上の機能を有した最新PACS Viewer」と題し,「Centricity Universal Viewer」の使用経験を報告した。同院では2018年3月にPACSを更新し,同時にCentricity Universal Viewerを導入。さらにクラウドサービスの「医知の蔵」も採用した。服部氏は読影におけるビューワの課題として,マウス操作の煩雑さを指摘し,より楽に,簡便に,直感的に操作できることが重要だとして,Centricity Universal Viewerに搭載された,読影者や読影内容によって画面レイアウトを自動的に変更するなど学習機能を備えた“Smart Reading Protocol(SRP)”の有用性を説明。さらに,Centricity Universal Viewerに採用された比較画像との自動位置合わせ機能の“Image Registration”についても解説した。服部氏は,実際の読影でのレイアウトなどについて,疾患別に具体的な解説も行った。

服部貴行 氏(大久保病院)

服部貴行 氏
(大久保病院)

   

 

次に,昭和大学大学院保健医療学研究科教授の加藤京一氏が「放射線技術部門から病院経営をサポート!〜Applied Intelligence〜」と題して講演した。昭和大学病院では,院内のビッグデータを用いて業務の効率化,最適化を図り,職員のワークライフバランスを実現するとともに,収益の増加を図るために,医療データ分析サービスのApplied Intelligenceを導入した。診療放射線技師をターゲットに,同大学への貢献を最終目的に,「時間がない〜患者のための医師サポート〜」をプロジェクトテーマとして,人員配置や各課との連携強化に向けた業務の可視化に取り組んだ。加藤氏は,CT検査データからドリルダウンで,診療科別の入院・外来検査の比率などを可視化することで,課題を浮かび上がらせ検査オーダに合わせた人員配置とした経緯を解説。さらに,再撮影率低減のための教育,時間外検査や類似症例別検査の分析結果と業務改善への活用などを紹介し,職員満足度向上を図ったことを報告した。

加藤京一 氏(昭和大学)

加藤京一 氏
(昭和大学)

   

 

この後休憩を挟み,同社技術本部研究開発部の植竹 望氏が,「GEにおける医療Artificial Intelligence(人工知能)分野での取り組み紹介」と題して,AI技術の研究開発動向を説明した。植竹氏は,まず機械学習,ディープラーニングなどAIの学習手法について説明したほか,第一次・第二次ブーム,ディープラーニングによる第三次ブームの状況について解説した。また,植竹氏は,医療分野でのAI応用について,人の判断や認知の一部を行うものと,人に新たな気づきを与えるものに分けられるとの認識を示した。その上で,植竹氏は,超音波診断装置に搭載された“Kidney Segmentation”やMRIのノイズ除去,造影MRIでのコントラスト向上といった画質改善のAI技術,Centricity Universal ViewerのSRP,読影時に電子カルテ上にある重要な情報をビューワに表示する“Imaging Related Clinical Context(IRCC)”といった読影効率を向上するAI技術を紹介した。また,故障予兆を検出してダウンタイムを減少させるBrilliant Hospitalも取り上げた。

植竹 望 氏(技術本部研究開発部)

植竹 望 氏
(技術本部研究開発部)

   

 

最後となる9番目の講演では,帝京大学千葉総合医療センター病院長の和田佑一氏が登壇。「クラウドサービスを用いた地域医療連携促進の取り組み」と題して,「Centricity 360 Suite」の導入の目的や運用のメリットなどを解説した。同センターは,市原二次保健医療圏の中核病院として,2018年に地域医療支援病院の指定を受けた。一方で,診療報酬の観点からは,総合入院体制加算3,地域医療支援病院加算,入院時支援加算を算定する上で医用画像の効率的な管理・共有が重要となるため,従来のCDなどの可搬型媒体の運用に代えて,クラウド型のCentricity 360 Suiteをパイロットで採用することとした。実際の運用では,従来どおりCDで出力を行い,それを専用PCでデータセンターへアップロードするようにしており,高いセキュリティを保ちつつ高い利便性を実現している。和田氏は,ネットワークでの患者情報の共有が可能となることで,今後CDなどの作成・取り込み業務が軽減され,転院是非の事前相談,専門医への画像を用いた相談が容易となり,参加施設から優先的に患者紹介を受けるきっかけにもなると指摘。患者中心の医療連携をすばやく可能にすると述べた。

和田佑一 氏(帝京大学千葉総合医療センター)

和田佑一 氏
(帝京大学千葉総合医療センター)

   

 

すべての講演後には,同社ヘルスケア・デジタル事業本部チーフコマーシャルオフィサーの三井俊男氏が挨拶し,盛況のうちに閉会となった。

三井俊男 氏(ヘルスケア・デジタル事業本部チーフコマーシャルオフィサー)

三井俊男 氏
(ヘルスケア・デジタル事業本部チーフコマーシャルオフィサー)

   

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
コミュニケーション本部
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp