2018-4-13
画像診断におけるAI活用の最前線を紹介
エルピクセル(株)は2018年4月12日(木),東京大学伊藤国際学術研究センター(東京都文京区)において,「最先端医療×AI〜医療画像診断の未来〜」をテーマにしたイベントを開催した。2014年に設立された同社は,人工知能(AI)を用いた画像解析ソフトウエア・システムを手がけるベンチャー企業として,近年急速に存在感を示している。画像診断装置・医療IT関連企業との協業を進めており,イベントを開催した4月12日(木)には,富士フイルム(株)が同社と提携し,画像診断支援技術をPACSに搭載するための開発を行うとアナウンスした。今回のイベントでは,同社代表取締役の島原佑基氏が事業展開についてプレゼンテーションを行ったほか,東京慈恵会医科大学放射線医学講座准教授/IT戦略室室長の中田典生氏,(株)エムネス代表取締役/霞クリニック院長の北村直幸氏が講演した。開会に当たって挨拶した島原氏は,今回のようなイベントを通してAIや医療の業界を盛り上げたい述べた上で,AIはブームではなく,これからの時代をつくっていくものであると強調した。
この後のトークセッションでは,まず中田氏が放射線医学におけるAIの現状と将来展望について講演した。中田氏は,放射線医学は,X線の発見,CT・MRIの発明という3つの技術革新によって進歩してきたとし,AIが4番目の技術革新になると述べた。その上で,北米放射線学会(RSNA)においてもAIのセッションは盛況であり,機器展示でもAI関連企業の出展が増えていると説明した。さらに,中田氏は,医療分野でのAI活用に向けた行政の施策について触れ,経済産業省が策定する開発ガイドラインや厚生労働省が策定する審査ガイドライン,医薬品医療機器総合機構における医療機器認証の流れも解説した。また,中田氏は,医療分野におけるAI活用の課題として,ビッグデータから質の高い“教師あり学習”のデータを抽出することを挙げ,これを解決するためにはAIアルゴリズムマーケットのような仕組みが必要になると指摘した。講演のまとめとして中田氏は,画像診断におけるAIの技術革新はすでに始まっており,今後AIを活用する人と活用しない人の2極化が進むと述べた。
次いで登壇した北村氏は,「Deep Learningを用いた医療画像診断の可能性〜試行事例紹介〜」をテーマに講演した。北村氏は,エムネスの画像診断システム「LOOKREC」を導入したメディカルチェックスタジオが脳ドックで運用している頭部MRAの脳動脈瘤検出支援システムについて紹介した。メディカルチェックスタジオでは,画像診断にAIの診断支援技術を用いることで,低コストでの脳ドックを可能としている。さらに,北村氏は,脳の白質病変の定量化,乳腺領域の造影MRI検査,膝関節MRI検査などにおけるAI活用事例を提示。講演を終えるに当たり,今後のAI開発には,画像診断医と技術者とのコミュニケーション,教師あり学習のための正確なデータ,臨床で試行しながらの精度向上が重要であるとまとめた。
この後,島原氏が同社の画像診断支援技術である“EIRL”と,今後の事業展開について説明した。島原氏は,EIRLの特長として,少ない教師データで高精度な画像認識ができることや,メーカーや機種を問わない優れたロバスト性などを挙げた。また,内視鏡画像,病理画像の診断支援など,現在研究開発を進めている技術も解説したほか,同社と提携する大学や研究機関,画像診断装置・医療IT関連企業も紹介。最後に,AIによる画像診断支援が当たり前となる世の中にしたいと抱負を述べた。
画像診断分野でのAI活用に向けた研究開発が急ピッチで進んでいるが,それを牽引しているのがエルピクセルのようなベンチャー企業であろう。今後も同社をはじめとしたAIベンチャー企業の動向が注目される。
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