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東海大学医学部付属八王子病院が前立腺がんの低侵襲診療に関するプレスセミナーを開催

2018-2-5

前立腺がんの低侵襲診療がテーマ

前立腺がんの低侵襲診療がテーマ

東海大学医学部付属八王子病院は2018年1月31日(火),東海大学校友会館(東京都千代田区)において,前立腺がんにおける低侵襲の診断・治療に関する報道関係者向けのセミナーを開催した。超高齢社会が進む中,前立腺がんは60歳以上の日本人男性の1/2が罹患すると言われている。2013年の統計では,男性のがんの部位別罹患数において,胃,肺,大腸に次いで4番目に多く,2020年には1位になると予想されている。こうした状況の中,同院では,2013年からPSA検査の数値が“4”以上の被検者に対し,MRIと直腸的超音波検査(TRUS)の融合画像ガイド下生検による診断を行っている。この“MRI-TRUS融合画像ガイド下生検”は先進医療Aの承認を受けており,2017年11月の時点で症例数が572件となっている。さらに,早期前立腺がんと診断された症例に対しては,高密度焦点式超音波療法(HIFU)による局所療法を実施。これらの低侵襲な前立腺がん診療により,同院ではがん患者のQOLの向上を図っている。セミナーでは,検査から診断,治療までの最新技術とその臨床的有用性について,同院泌尿器科准教授の小路 直氏が講演した。

小路氏は,現在一般的に行われている前立腺全体に対する生検(系統的前立腺生検)では局在診断が不可能であり,さらに出血や感染症,痛み,見逃しといった問題があると指摘した。その上で,前立腺がんの診断では,患者の予後に影響を及ぼす0.5cc以上の体積を持つがん(significant cancer)の検出が重要であり,MRIで3mmスライス厚の撮像を行うことで,それが可能になったと述べた。現在同院では,生検前にT2WI,ダイナミック造影MRI,拡散強調画像,ADC map,1H-MRSのシーケンスでの評価を行い,がんが疑われる場合のみ生検を施行している。さらに,生検では,MRIと超音波の融合画像を作成し,穿刺位置を確認しながら手技を進められる「BioJet」(D&K Technologies社製)を用いて,高精度かつ安全な検査を実現している。これにより,系統的前立腺生検で35%だったがんの検出率が54%に向上。このうち,significant cancerについては,系統的前立腺生検で20%だったものが47%へと上昇した。小路氏は,これらの経験を踏まえ,MRI-TRUS融合画像ガイド下生検により,がんの有無だけでなく,詳細な情報が得られるようになったと述べた。

また,小路氏はHIFUによる前立腺部分治療についても解説した。HIFUはメスを用いずに,前立腺がんとその周囲だけを治療することで,排尿や性機能にかかわる部分をできるかぎり温存することが可能である。治療時間は1時間程度で, 治療後24時間以内に退院でき, 排尿や性機能への影響も少ないという。同院では,現在「高密度焦点式超音波療法を用いた前立腺癌局所療法」として臨床研究を行っており,2016年4月以降50症例以上の実績を積み上げてきた。小路氏はこれまでの成果を基にさらに症例を重ね,先進医療の承認,さらには保険収載をめざしたいと,今後の展望を述べた。

小路 直 氏(泌尿器科)

小路 直 氏
(泌尿器科)

   

 

●問い合わせ先
東海大学医学部付属八王子病院
事務課
TEL 042-639-1111
http://www.hachioji-hosp.tokai.ac.jp