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2017-12-26

クラウドとIoTで先進予防歯科サービスを提供。
左から山田氏，熊谷氏，淡島氏

サンスターグループオーラルケアカンパニー（サンスター）と富士通（株）は，スマートフォンと連動するスマートハブラシ「G・U・M　PLAY（ガム・プレイ）」と富士通の歯科医院向けクラウドサービスを連携させた先進予防歯科サービスのスタートに当たって，記者発表会を2017年12月25日（月）に富士通汐留本社（東京都港区）で開催した。当日は，予防歯科の第一人者で新サービスを先行導入した日吉歯科診療所理事長の熊谷　崇氏が「口腔から全身の健康へ向けた先進的な取り組み」を講演。また，サンスターグループオーラルケアカンパニーの淡島史浩氏と富士通第二ヘルスケアソリューション事業本部ビジネス戦略統括部新ビジネス推進室室長の山田直樹氏が，それぞれの事業の概要を説明した。

熊谷　崇 氏 （日吉歯科診療所）

淡島史浩 氏 （サンスター）

山田直樹 氏 （富士通）

富士通は，2016年から歯科医院向けのクラウドサービスを提供している。患者の口腔内写真や歯科X線写真，検査結果などの口腔情報をクラウドで保存し，患者への情報提供や歯科医師，歯科衛生士との情報共有を可能にするものだ。また，サンスターは2016年にIoTを用いたスマートハブラシG・U・M PLAYを発売した。センサーを搭載したアタッチメントをハブラシに装着して歯みがきの時間や回数，ブラッシングの状態などを記録し，スマートフォンのアプリなどを使って歯みがき習慣をサポートする。
今回の新サービスでは，この富士通のクラウドサービスとG・U・M PLAYを連携させることで日々の歯みがきの回数，時間などのデータの共有が可能になる。従来は患者に対して磨き方などの指導は行えても，実際に日々の口腔ケアの状況を把握することは難しかった。新サービスでは，歯科医師による定期的なプロフェッショナルケアと日々の患者自身によるホームケアを連動し，よりパーソナライズされた歯科指導が可能になる。

G・U・M　PLAYと富士通の歯科医院向けクラウドサービスの連携概念図

この新サービスを先行導入した日吉歯科診療所（山形県酒田市）の熊谷氏は，世界標準の「予防歯科モデル」による歯科医療に取り組み，予防歯科先進国であるスウェーデンのマルメ大学より名誉博士号を授与されている。日本では8020（80歳で自分の歯を20本残す）運動が進められているが，後期高齢者の89％が入れ歯になっているのが現状だ。熊谷氏は講演で，これは虫歯になってから治療を行う日本の歯科医療の限界で，すべての歯を残すKEEP 28をめざし“予防歯科”モデル（メディカルトリートメントモデル：MTM）に基づいた診療に取り組んできたことを紹介した。MTMでは，治療を行うだけでなく，患者個々の口腔内の状態を把握し，虫歯の原因となる細菌を除去して適切な治療を行う。唾液や歯周組織の状態やリスクなどの情報を患者に提供した上で継続的な“メインテナンス”を行うことで，実際に高い残存歯数となっていることを示した。
こういったメインテナンスのためのツールとして，日吉歯科診療所では2016年10月に富士通の歯科医院向けのクラウドサービスを導入。メインテナンスで用いられる口腔内写真，歯科X線画像やう蝕（虫歯）検査，歯周病検査，歯科衛生士のコメントなどを保存して患者自身がいつでも参照可能な環境を構築した。今回，日常の歯みがきのデータが連携することで，ホームケアを含めたきめ細かい歯科指導が可能になり，患者のモチベーションアップも期待される。熊谷氏はクラウドとIoTによるサービスによって質の高い予防歯科医療が提供できると同時に，さまざまなデータが蓄積されることで口腔健康と全身健康の関連に関するエビデンスの調査にも活用できると期待を述べた。

歯科医院でのG・U・M　PLAYの連携情報参照画面。長期（週単位）の表示（左）や1日（右）での時間や頻度を参照できる。