2017-12-8
次世代の超高精細医用VRの研究を紹介
立命館大学は2017年12月7日(木),立命館東京キャンパス(東京都千代田区)において,プレスセミナー「次世代の超高精細バーチャルリアリティの基盤技術で医用画像革新へ—ビッグデータ活用による超高精細立体透視化」を開催した。同大学では,教育はもとより研究力の強化にも力を入れており,2020年に向けた学園の中長期ビジョンとして「学園ビジョンR2020」を掲げ,特色あふれるグローバル研究大学をめざすことを基本課題の一つとしている。また,文部科学省が,「高度な知のプロフェッショナル」として社会にイノベーションをもたらす博士人材の育成を目的とし,2018(平成30)年度からの本格実施をめざす「卓越大学院プログラム」事業への申請準備も進めている。今回のプレスセミナーでは,本大学が構想する「ICTを活用したアクティブライフデザインをリードする超創人材育成プログラム」に関連する研究の一つとして,次世代の超高精細バーチャルリアリティの基盤技術としての活用が期待される人体の内部立体構造透視化技術について,情報理工学部教授の田中 覚氏が紹介した。
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通常,三次元CGの作成に当っては,三角形や四角形などのポリゴンを描画単位として曲面を平面の集合で近似する手法が用いられているが,田中氏らが開発した「確率的ポイントレンダリング」では,ポリゴンよりも小さな描画単位としてポイント(点)を用いる。あらゆるものの内部や表面,線や辺をすべてポイントで描くため,使用するアルゴリズムが1つですむほか,ポイントを融合してから一気に描画することで,より正確かつ高精細な透視可視化(半透明CGなど)や融合可視化(外部構造と内部構造の融合画像など)が可能となる。また,本手法は確率論に基づくため,三次元形状を記述した大規模データの精密透視可視化に適しており,データが大きいほど高精細さが向上する。田中氏らはこれまでに,京都・祇園祭の山鉾や古民家,遺跡などの文化ビッグデータ(数千万〜数億点のデジタルデータ)を可視化して,デジタルアーカイブを進めてきた。
同時に,医療の分野においては,CTやMRIなどの医用画像から得られる大規模・高解像度データを活用した,より高精細な立体透視化の研究が進められている。田中氏は,医用可視化技術の三次元化,バーチャルリアリティ(VR)化は進んでいるものの,いまだ人体内部の精密分析は二次元画像が中心であり,精密化・大規模化されたデータが生かしきれていないとし,医療分野における確率的ポイントレンダリングの有用性を解説。特に,融合可視化の自由度の高さを強調し,「病変部のボリュームデータ(立体)+スライス(横断面)+スライス(縦断面)」の融合や,「頭蓋骨サーフェス(表面)+脳ボリューム(立体)」「臓器+スライス画像+放射線分布」などの画像例を示しながら,異なるモダリティのデータの融合も含め,あらゆるものの融合が可能であると述べた。さらに,現在進められている次世代の超高精細医用VR(ステレオ立体視+高精細半透明可視化)の研究について紹介し,透明物体に対するステレオ立体視の効果や正確性についてはまだ研究途上であるが,確率的ポイントレンダリングによる透明可視化は従来法よりも正しい奥行き感を表現可能なことが確認されつつあると述べた。
●問い合わせ先
立命館大学広報課
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