2017-11-20
PepperとAIを使った共同研究をスタート。
左から片山氏,高尾氏,手塚氏
(株)フライトシステムコンサルティングと(株)ジェナ,東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座は,医療分野においてAIとロボット(Pepper)を用いた共同研究を2017年度からスタートする。フライトシステムコンサルティングとジェナが持つ,スマートデバイスやロボット,AIなどの技術開発力を生かし,Pepperを利用した患者の受付業務や認知症の診断支援といった医療向けのコミュニケーションシステムの開発と評価を行う。2017年11月17日(金)に六本木アカデミーヒルズ(東京都港区)で,フライトシステムコンサルティング代表取締役社長の片山圭一朗氏,ジェナ代表取締役の手塚康夫氏,東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座准教授の高尾洋之氏が出席して共同研究の概要に関する記者向け説明会を開催した。
説明会では,最初に高尾氏が先端医療情報技術研究講座の産学コンソーシアムである「メディカルITメディアラボ」での取り組みを含めて,医療分野におけるICT活用の現状と課題について概説した。高尾氏は,医療ICTの導入が進まない理由として,セキュリティや個人情報データの取り扱いが厳しく参入障壁が高いこと,費用対効果など有用性を証明することが難しいことなどを挙げ,メディカルITメディアラボでは工学系の大学研究機関や企業と積極的に連携しながら医療分野でのICT利用について研究,開発を進めていると述べた。高尾氏が中心となって開発された医療用コミュニケーションアプリの「Join」は,医療機器プログラムとして認証を受け日本で初めて保険収載された。現在は,15大学100病院で稼働しているが,Joinを通じた情報共有や連携によって実際に診療時間の短縮などの具体的な効果が出ていることを紹介した。今回のロボットとAIの活用についても,病院内での受付や問診などのコミュニケーションの場面で,患者サービスの向上や医師不足の解消,働き方改革の可能性などを探っていきたいとした。
続いて,手塚氏と片山氏がそれぞれ会社の概要を説明した。ジェナはモバイルアプリケーションの開発で多くの実績を持ち,慈恵医科大学にはBeaconと連携した院内ナビゲーションアプリを導入している。また,AI技術ではワトソンを利用したAIチャットボット「hitTO(ヒット)」や皮膚科領域の画像解析などを開発している。また,フライトシステムコンサルティングはジェナと,Pepperのアプリ開発や管理を簡単に行えるPepper向けCMS「Scenaria(シナリア)」 を開発した。
今回の共同研究では,1)Pepperで変わる検診センターの未来,2)Pepperで変わる血圧測定の未来,3)Pepperで変わる認知症医療の未来の3つをテーマとする。いずれもPepperを仲介役とすることで顔認証やAIを利用した対話機能によって,対人間とは異なる患者(受診者)の変化や新たなデータ収集の可能性などを探るものだ。片山氏は今回の共同研究でPepperを利用する意味について,「クラウドによってさまざまな機能を利用できること,エンターテインメント性が高いこと」などをメリットに挙げた。高尾氏は,認知症の問診などはまだまだ時間のかかる,未来を見据えたテーマだとしながら,「2025年問題で医師不足をはじめスタッフの負担を軽減する働き方改革は医療業界でも喫緊の課題になりつつあり,今回の共同研究でその解消の可能性についても探っていきたい」と述べた。
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