2017-9-21
会場となった栃木県総合文化センター
JSMRM 2017/第45回日本磁気共鳴医学会大会が,2017年9月14日(木)〜16日(土)の3日間の日程で,栃木県総合文化センター,宇都宮東武ホテルグランデ(栃木県宇都宮市)を会場に開催された。瀬尾芳輝氏(獨協医科大学)が大会長,楫 靖氏(獨協医科大学)が副大会長を務め,大会テーマには,「来た,見た,わかった。MR!@Utsunomiya」が掲げられた。瀬尾大会長は,初学者にとって難しく,専門領域以外はわかりにくいMRの基本を押さえつつ,最先端の研究成果を理解することを目標にして,テーマを決めたとしている。このテーマの下に構成されたプログラムは,特別講演が6題(Plenary Lectureが1題,共催のSpecial Lectureが5題)のほか,シンポジウムが韓国KSMRM,中国CSMRMとの共同シンポジウムを含め12セッション,アフタヌーンレクチャー,14テーマの教育講演などが設けられた。また,ユニークな試みとして,MRI関連企業の工場見学も用意され,東芝メディカルシステムズ(株)と(株)日立製作所ヘルスケア・マニュファクチャリング,古河電気工業(株)の見学が行われた。
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2日目の15日には,第1会場において,シンポジウム3「植込み型医療デバイスの安全なMRI検査を考える~より多くの方にMRIの恩恵を受けていただくための医療提供側の使命~」が行われた。まず座長の土`井 司氏(高井病院)が「MRI検査に判断が必要な植込み型医療デバイス」をテーマに発表し,MRI操作者の使命や能動型・非能動型植込み型医療デバイスの概要を解説。その上で,シンポジウムでは,安全にMRI検査を施行するために必要な知識と技術を各演者に発表してもらうと述べた。次いで,登壇した黒田 輝氏(東海大学)は,生体デバイスがMRIから受ける物理作用として,吸引力やトルク,発熱,意図せぬ刺激について解説した。また,清水 徹氏(日本画像医療システム工業会)は,条件付きMRI対応植込み型医療デバイスを植え込んだ患者に対する検査での安全なMRIの使用法を説明。小霜 彰氏(日本不整脈デバイス工業会)は,不整脈デバイス患者のMRI検査情報サイトなどの取り組みを紹介した。さらに,土橋俊男氏が,臨床現場での安全管理の実際について,検査室内での注意事項や医療機関全体での取り組みなどを解説。この後,総合討論も設けられた。
2日目の第1会場では,特別講演(Plenary Lecture)も設けられた。町田好男氏(東北大学)が座長を務め,巨瀬勝美氏(筑波大学)が「Historical evolution and future direction of MRI:What is the ultimate MRI? MRIの歴史的進化と将来展望 —究極のMRIを求めて—」をテーマに講演した。巨瀬氏は,1970年代から10年ごとに,MRIがどのような技術開発が行われ,臨床に用いられてきたか,MRIの歴史を解説。その上で,MRIはハードウエアとパルスシーケンスの開発によって技術が進歩してきたが,ハードウエア技術のこれ以上の進化は難しく,またパルスシーケンスも複雑化していると述べた。この課題を解決するためにも,MRIシミュレーターやAIの活用が今後重要になるとまとめた。
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さらに,2日目には,第1会場でシンポジウム4,5も開かれた。黒田氏と小畠隆行氏(放射線医学総合研究所)が座長を務めたシンポジウム4「これからのMRIガイド下医療」では,3名の演者が登壇した。まず,黒田氏が,MRIガイド下治療の原理や,thermal治療とnon-thermal治療について解説したほか,MR-LINIACの概要を解説した。次いで登壇した阿部圭市氏(東京女子医科大学)は,「経頭蓋集束超音波 現在と未来」と題して,本態性振戦や脳腫瘍,アルツハイマー病における治療の概要を説明した。また,3番目の演者である土屋貴裕氏(名古屋市立大学病院)は,放射線治療における治療計画にMRIを用いたMR simulation,MR Only simulation(MRCAT)について症例を交え紹介した。
シンポジウム5「高磁場MRIで見る脳機能・代謝の基礎と最前線」では,原田雅史氏(徳島大学)と福永雅喜氏(生理学研究所)が座長を務めた。まず,黄田育宏氏(脳情報通信融合研究センター)がCalibrated MRIにおける脳循環代謝カップリングについて,BOLD fMRIも含め解説した。また,2番目に登壇した小池耕彦氏(生理学研究所)は二個体同時計測fMRIによる社会的相互作用の研究成果を報告。3番目に登壇した小泉 愛氏(脳情報通信融合研究センター)は,人工知能技術とfMRIニューロフィードバック技術を用いた恐怖記憶消去の研究を紹介した。このほか,栗林秀人氏(シーメンスヘルスケア)が7T MRIを用いたヒト脳内でのグルコースの検出について,富安もよこ氏(放射線医学総合研究所)がin vivo脳MRSについて発表した。
3日目には,定番となった「匠の技」が2セッション設けられた。第1会場で午前中に行われたシンポジウム6「匠の技1:めまい,腰痛,胎児奇形」では,石藏礼一氏(兵庫医科大学)と桑島成子氏(獨協医科大学)が座長を務め,3名が発表した。まず,頭部(めまい精査)について,豊嶋英仁氏(秋田県立脳血管研究センター)が登壇し,めまいの分類とその割合などを解説した上で,検査プロトコール,脳出血,脳梗塞,椎骨動脈解離,椎骨脳底動脈不全といった症例ごとに検査のポイントを解説した。次いで,脊椎(腰痛精査)に関して発表した内田幸司氏(えだクリニック)は,クッションを用いたポジショニングの工夫やモーションアーチファクト,クロストークアーチファクトを低減するための撮像法,安静が困難な被検者での検査のコツなどを説明した。3番目に登壇した石黒秋弘氏(大阪はびきの医療センター)は,胎児(奇形)について,撮像前の注意点やコイルセッティング法,撮像時のテクニックを紹介した。各発表後には,安藤久美子氏(兵庫医科大学)の指定発言が設けられたほか,すべての発表には総括として,久保 均氏(福島県立医科大学)が指定発言を行った。
第1会場で午後に行われたシンポジウム8「匠の技2:匠の技 惜しげもなく大公開! のコーナー」は,竹原康雄氏(名古屋大学)と高濱潤子氏(奈良県立医科大学)が座長を務めた。最初に登壇した寺田理希氏(磐田市立総合病院)は,「肝臓MRIにおける撮像技術」をテーマに,EOB-MRIにおけるダイナミック撮像シーケンスや1.5Tと3T装置の違い,MRエラストグラフィでの1.5Tと3T装置の検査のポイントを概説した。2番目に発表した北川 久氏(東京慈恵会医科大学附属柏病院)は,「肝膵臓MRI検査時に必要な着眼大局,着手小局の技」と題して,MRCP撮像におけるシーケンスの工夫などを紹介した。続いて登壇した高津安男氏(大阪赤十字病院)は,骨盤内女性臓器における撮像のポイントとして,子宮筋腫や子宮腺筋症,子宮体がん,子宮頸がんなどの撮像法や画像所見の特徴を解説した。最後に登壇した秦 博文氏(北里大学病院)は,下肢動脈狭窄,腎動脈狭窄における非造影MRAと造影MRAの撮像条件の設定方法や造影タイミングの工夫などを説明した。
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なお,次回JSMRM 2018/第46回日本磁気共鳴医学会大会は,2018年9月7日(金)〜9日(日)の3日間,ホテル日航金沢,金沢市アートホール(石川県金沢市)を会場に行われる予定である。大会長は宮地利明氏(金沢大学),副大会長は小林 聡氏(金沢大学),テーマは「MRM Trek——Join Together Toward New Frontiers」に決まった。
●企業展示
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●問い合わせ先
JSMRM 2017/第45回日本磁気共鳴医学会大会
大会事務局〔獨協医科大学生理学(生体制御)〕
TEL 0282-87-2125
E-mail jsmrm45@dokkyomed.ac.jp