2017-8-28
Prodiva 1.5T CXとCompressed SENSEに
焦点を当てた講演会
(株)フィリップスエレクトロニクスジャパンは2017年8月26日(土),コクヨホール(東京都品川区)において,「Philips MRI先端技術講演会2017」を開催した。この講演会では,第一部「1.5T MRI新製品の運用および臨床応用」と第二部「Compressed SENSEシンポジウム&パネルディスカッション」で構成され,同社MRIの最新技術の動向とその臨床応用の現状が報告された。
開会に当たり,代表取締役社長の堤 浩幸氏が挨拶した。堤社長は,フィリップスでは2025年までに年間30億人の人々の生活を向上させるというビジョンを示した。そして,日常生活の健康から,予防,診断,治療,在宅ケアに至る継続的な医療を実現するための“Connecting care”について説明。医療機関の医療機器やシステム,家庭の健康関連製品を,クラウド基盤の「Philips HealthSuite Digital Platform」で連携させるソリューションを提供すると述べた。
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次いで,DIビジネスマネージャーの門原 寛氏が,2017年7月に発表されたばかりの最新1.5T MRI「Prodiva 1.5T CX」の製品説明を行った。Prodiva 1.5T CXは,日本チームが開発に加わり、日本ユーザーのニーズを取り入れて開発された。“dSync technology”“Breeze Workflow”“ROI(Return On Investment)”をコンセプトに開発を行っている。dSync technologyとしては,送信系・受信系のハードウエアをデジタル通信する“dSync”プラットフォームを採用し,高画質と撮像時間の短縮を図った。また,Breeze Workflowでは,コイル素子を自動選択する“SmartSelect”,撮像の位置合わせを自動化する“SmartExam”,マルチシーケンス検査などを簡便化する“SmartLink”を搭載。ROIについては,最小設置面積25m2のコンパクト設計と,“ゼロボイルテクノロジー”によるヘリウムガスの補充不要を実現した。また,寝台の最低高を47cmとして,高齢者など体の不自由な被検者でも乗り降りをしやすくしたほか,新型コイルにより,ポジショニングを容易にした。これにより検査スループットも向上する。
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門原氏の製品説明に続き,第一部の「1.5T MRI新製品の運用および臨床応用」が行われ,Prodiva 1.5T CXの世界でのファーストユーザーである聖隷三方原病院の初期使用経験が報告された。まず,検査運用の実際について,同院画像診断部の診療放射線技師である松本卓弥氏が登壇した。松本氏は,1.5Tの前装置からProdiva 1.5T CXに更新したことで,撮影室の面積を31.2m2から26.6m2へと16%縮小でき,操作室と患者待ち合いを拡張することができたと報告。さらに,新開発のインターフェイスである「dS-Interface」によりコイルの接続が簡便になったと述べたほか,「Flexible MSK M/S coil」によってポジショニングやセッティングも容易になったと説明した。また,コイルのセッティングが画質の向上にもつながっており,導入以降,四肢関節など整形領域の検査が増加していると言及。さらに,被検者へのアンケート結果を示し,負担や不安を軽減できていると述べた。このほか,whole body DWIの検査時間が平均18分20秒,撮像時間が9分12秒で可能であることなどを解説した。
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次いで,Prodiva 1.5T CXの臨床応用について,放射線科の高橋 護氏が発表した。高橋氏は,Prodiva 1.5T CXの優れている点として,撮像部位に死角がないことを挙げ,頭部や肝臓,心臓MRI,MRマンモグラフィなどの症例画像を提示し,幅広い領域で高画質画像を描出できていると述べた。また,高橋氏は,ASLやMRS,4D PCAといった3T装置に適している撮像でも良好な画像が得られていると説明。VISTAにおいても,T1強調(ダイナミック),T2強調,STIR,STIR-TRANCEといったシーケンスで,有用な画像を撮像できているとした。高橋氏は,新開発されたコイルにも言及し,軽くしなやかになったことで,撮像部位に密着させてセッティングできるため,高画質画像が得られていると強調。さらに,高橋氏は,Prodiva 1.5T CXの最も優れた点としてwhole body DWIを挙げて,その画像を供覧し,撮像時間が短縮され,検査時間も大幅に短くなったとした上で,画質についても特にEPI diffusionがきれいに描出されていると説明した。
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この後,休憩を挟んで,防衛医科大学校病院の新本 弘氏が座長を務め,第二部「Compressed SENSEシンポジウム&パネルディスカッション」が行われた。まず,フィリップスエレクトロニクスジャパンの小原 真氏が,現在開発を進めている高速撮像のアプリケーション“Compressed SENSE”について説明した。ISMRM 2016やRSNA 2016,JRC 2017(2017国際医用画像総合展)でも注目を集めたCompressed SENSEは,同社のパラレルイメージング法である“SENSE”に,近年開発が進んでいる高速撮像技術であるcompressed sensing(CS)を組み合わせたアプリケーション。画質の劣化を抑えつつ,高速撮像により,検査スループットを大幅に向上する。
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小原氏の技術解説に続き,体幹部・心臓における使用経験について,熊本中央病院の野田誠一郎氏が発表した。野田氏は,3T装置による体幹部,1.5T装置による心臓領域でのCompressed SENSEの画像を供覧した。そして,Compressed SENSEは,検査時間の短縮や検査の質の向上に寄与するとして,検査数の増加にもつながるとまとめた。次いで,登壇した東京女子医科大学病院の阿部香代子氏は,脳神経領域におけるCompressed SENSEの有用性を報告した。阿部氏は,脳神経領域におけるMRI検査は1回の検査で多岐にわたるシーケンスを施行するため,Compressed SENSEには,撮像時間の短縮が期待されると述べた。特にMRAやMRVは,従来の半分以下の撮像時間で,診断に適した画像が得られていると説明。また,撮像時間を変えない場合は,より高画質な画像となっていると指摘した。その上で,Compressed SENSEは,短時間撮像ができることに加え,高画質画像を撮像でき,臨床応用の幅が広がるだろうとの見解を示した。4番目には,肝臓におけるCompressed SENSEの使用経験を,岐阜大学医学部附属病院の五島 聡氏が報告した。五島氏は,MRCP,肝細胞相撮像,ダイナミック造影MRIにおけるCompressed SENSEを使用した画像を不使用の画像と比較して,短時間での撮像ながら,高画質が得られていると説明。Compressed SENSEは“モンスター”アプリケーションであり,さらに臨床の可能性が広がると述べた。そして,この技術を短時間化に生かすのか,撮像時間を変えずに高画質化を図るのか,さらなる検討が必要であるとまとめた。
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この後,新本氏の進行により,小原氏,野田氏,阿部氏,五島氏の4名に加え,岐阜大学医学部附属病院の梶田公博氏,東京女子医科大学病院の後藤康裕氏が参加し,パネルディスカッションが行われた。Compressed SENSEの適した領域やシーケンスについて話し合われたほか,さらなる短時間化,高画質化への期待などの意見が出された。会場からも質問もあるなど,時間を超過するほどの盛り上がりを見せ,Compressed SENSEの早期製品化への期待の高さがうかがえる場となった。
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なお,当日はProdiva 1.5T CXも展示され,休憩時間には,多くの参加者が装置周辺に集まり,新製品に関心を示していた。
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