2017-6-26
ヘルスソフトウェアベンダーなどから375人が参加
一般社団法人ヘルスソフトウェア推進協議会(GHS)は2017年6月19日(月),渋谷区文化総合センター大和田さくらホール(東京都渋谷区)において,「IEC 82304-1(ヘルスソフトウェア—第1部:製品安全に関する一般要求事項)解説セミナー」を開催した。
主催したGHSは,医療系の3工業会である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA),一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA),一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)が中心となり,2014年8月1日に設立。同年施工された「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」で,医療機器プログラムの対象外となるヘルスソフトウェアについて,産業界向けに開発ガイドラインを策定し,その適用を推進している。GHSでは,ガイドラインの適合の度合いに応じて,Level-1〜3 の3種類のGHSマークを付与している。GHSマークを取得した製品は,2017年6月の時点で,電子カルテ,画像情報管理システムなど62製品存在する。
今回のテーマになったIEC 82304-1は,個人の健康管理や介護,看護,医療分野で広く使用されるさまざまなヘルスソフトウェアについての国際規格で,規格の制定にかかわった講師陣を中心に,GHS技術教育委員会のメンバーが医療機器プログラム,健康アプリ,ヘルスソフトウェア業界に先駆けて要求内容などを解説した。
開会に当たり,GHS運営会議議長の土居篤博氏が挨拶し,GHSが設立された経緯と近年のヘルスソフトウェア市場の広がりを紹介した。
この後,GHS技術教育委員会の酒井由夫氏が「IEC 82304-1を含むヘルスソフトウェア関連規格の構成とIEC 82304-1の位置づけ」と題して,IEC 82304-1と IEC 62304(医療機器ソフトウェア—ソフトウェアライフサイクルプロセス)の関係性と,IEC 82304-1が規制に使用される可能性を解説した。IEC 82304-1はヘルスソフトウェアの製品安全規格であり,規制対象の医療機器に対するIEC 60601-1(医用電気システムにおける製品安全規格) の医療機器プログラム版に相当する。なお,IEC 60601-1もIEC 82304-1も医療機器ソフトウェアのプロセス規格であるIEC 62304を引用している。さらに,近年のソフトウェア搭載医療機器は,バリデーション(妥当性確認)を含む製品安全規格と,開発プロセス,保守プロセスにおける作業や活動を規定したソフトウェアプロセス規格を組み合わせて,総合的に医療機器の安全性を担保している。酒井氏は,これらの説明を行った。
引き続き,IEC 82304-1のJIS化のリーダーであるフクダ電子(株)の関水英正氏が,IEC 82304-1のJIS化の状況と「IEC 82304-1の箇条及び細分箇条の概要」を,(株)島津製作所の飯島直人氏が「箇条4 ヘルスソフトウェア製品の要求事項」を解説した。
さらに,午後からは,酒井氏が「箇条5 ヘルスソフトウェア—ソフトウェアライフサイクルプロセス」を,飯島氏がIEC 82304-1の重要なポイントである「箇条6 ヘルスソフトウェア製品のバリデーション」の要求内容や,バリデーションとベリフィケーション(検証)の違いを説明。次いで,日本電気(株)の木原栄二氏が「箇条7 ヘルスソフトウェア製品の識別情報と附属文書」を,オリンパス(株)の高橋英成氏が「箇条8 ヘルスソフトウェア製品の市販後活動」の解説を行った。
当日は,375人が参加。参加者向けに行われたアンケートの回答者には,EUの新しい規制MDR/IVDR のソフトウェアに関する要求の解説と参考和訳が配布された。スマートデバイスやウエアラブルデバイスの普及などにより,医療機器プログラムやヘルスソフトウェアを手がけるベンダーの参入が今後増えることが予想されるが,安全性の確保が重要な課題となっている。今回のセミナーは,ベンダーにとって有益な機会であるとともに,医療安全の観点からも意義のある場だったと言えよう。
●問い合わせ先
一般社団法人ヘルスソフトウェア推進協議会
E-mail:info@good-hs.jp
http://good-hs.jp/information.html