2017-5-24
開業医などが多数参加した第2回セミナー
2017年5月21日(日),大手町フィナンシャルシティグランキューブ(東京都千代田区)において,診療所の医師などを対象に,「在宅医療×遠隔診療×AI」と題した「第2回リンクアセミナー」が開催された。主催は,ヘルスケアIT関連製品とその導入事例などを取り上げるWebサイト「LINQUA」と,医療用メッセージングツール“MediLine”を手がける(株)シェアメディカル。今回は,診療所の医師にとっても関心の高い“在宅医療”と“遠隔診療”,そして“AI”という,3つのキーワードを掲げて,4部構成でプログラムが組まれた。
開会に当たり,LINQUAで医療アドバイザーを務める柴垣圭吾氏(医療法人明洋会柴垣医院理事長)が挨拶した。柴垣氏は,現在,医療の効率化が求められているが,それを実現させるためにはITの活用が重要であると述べた。そして,今回のテーマについて触れ,医療分野のAI活用はまだ先の話と思っていても,すぐに臨床の場で使われるようになり,診療所にも大きな影響を与えるだろうと,セミナー開催のねらいを説明した。
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この後,LINQUAのプロデューサーである大西大輔氏(MICTコンサルティング代表)が司会を務め,3題の講演と対談が行われた。第1部として,中村哲生氏(医療法人永生会特別顧問)が登壇し,「2017 医療の未来 在宅医療と遠隔医療の今後の発展」をテーマに講演した。中村氏は,今後の在宅医療について,“薄利多売”による効率化,医療機関と訪問看護ステーションの組織化といったポイントを解説。さらに,診療報酬が高く,開業資金を低く抑えられるというメリットを紹介した。その上で,今後の在宅医療は差別化が重要であるとして,24時間365日体制で診療できることなどの要件を挙げた。さらに,中村氏は,在宅医療で効率化を図れるのは移動時間と事務の業務であるとし,ITの活用は人件費を抑え,業務効率が向上すると述べた。
次いで,第2部の講演が行われ,演者として鷲田直輝氏(国際医療福祉大学医学部医学科腎臓内科学講座主任教授)が登壇。慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科などが取り組んだ腹膜透析患者の治療方針決定支援システムについて講演した。高齢化に伴う医療現場のマンパワー不足が指摘される中,在宅医療のニーズが高まっている。そこで鷲田氏らは,高度医療である腹膜透析を在宅医療で行うためのシステムを開発。大学病院と在宅医療現場をオンラインで結び,ビデオチャットで治療支援を行う“シンクロ診療”により,省力化・効率化を図りつつ,安全な腹膜透析が可能になったと,鷲田氏は説明した。さらに,鷲田氏は,このシステムを用いて多人数参加型医療を提供するPKC構想を紹介した。
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第3部の講演では,「医療分野におけるAIの活用」をテーマに峯 啓真氏(シェアメディカル代表)が登壇した。峯氏はまずMediLineを医療者用のLINEだと紹介した。そして,医療分野でのIT導入における諸問題を挙げた上で,その解決にAIを用いたシステムが有用であるとし,IBMのWatsonについて解説。さらに,MedilineとWatsonを組み合わせ,Mediline上でやりとりされた情報を収集し,職種ごとに要約を生成する仕組みを紹介した。
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第4部は,「遠隔診療の未来」と題し,島 佑介氏〔(株)メドレーCLINICS事業部長・プロダクト統括医師〕と小川智也氏〔MRT(株)取締役副社長/医師)が登壇。遠隔診療システムを手がける2社の代表者が対談した。大西氏の司会で進められた対談では,診療報酬における遠隔診療加算新設の可能性や遠隔診療を始めるタイミング,遠隔診療の効果,医薬品の送付などについて意見が交換された。両者からは,遠隔診療は対面診療だけでは診療の継続が困難な患者の受診機会を増やすコミュニケーションツールであり,糖尿病などの重症化の予防にもつながるといったメリットが紹介された。
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今回のセミナーは,医療分野で注目のキーワードが取り上げられたこともあり,医師をはじめ,多くの参加があった。会場後方には,展示コーナーが設けられ,(株)エグゼメディカル,MRT,ブラザー販売(株),シェアメディカル,メドレーが出展した。次回は,日程が未定ではあるが,医師を補助するための人材育成をテーマに開催される予定である。
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