2017-2-21
会場風景
東芝メディカルシステムズ(株)は,2017年2月18日(土),「Advanced Application CT Symposium」を品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)で開催した。同社CT装置の最上位機種である320列Area Detector CT「Aquilion ONE」は,登場から約10年が経過し,これまでにさまざまな新技術が開発され進化を続けている。本シンポジウムでは,それらの中からDual EnergyとSubtractionの技術を中心に8名の演者が講演した。
講演に先立ち,同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,「当社は,2018年2月に社名をキヤノンメディカルシステムズ株式会社に変更するが,今後も“Made for Life”というスローガンに込められた経営理念に基づき,皆さまとともに歩んで参りたい」と挨拶した。
|
続いて,本社CT営業技術 兼 臨床アプリ研究担当の津島 総氏が,「当社CT技術紹介」を講演した。同社CTのAdvanced Applicationは,部位別・技術別に30種類以上あり,Area Detectorとの組み合わせによって高い臨床価値や相乗効果が得られる。講演ではAdvanced Applicationの中から,特にraw dataベースのdual energy解析ツールである“rDE”と,非剛体・非線形位置合わせにより高精度なサブトラクション画像が得られる“SURESubtraction”の有用性が紹介された。
|
プログラムは2部構成で,Session1が「Dual Energy Technology」,Session2が「Cutting Edge Technology」をテーマに,それぞれ4題の講演が行われた。
Session1は,慶應義塾大学医学部放射線科学教室放射線診断科の陣崎雅弘氏が座長を務めた。講演1は,広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門放射線診断学の檜垣 徹氏が,「rDEを用いた基礎画質改善と電子密度による脳腫瘍評価」について講演した。rDEはraw dataベースでのdual energy解析により,解析結果や基礎画像に複数のメリットをもたらすとされる。檜垣氏は,Image-based DEと比較したrDEの特徴として,アーチファクトの影響を受けにくく,Image-based DEで可能な解析に加えて仮想単色画像や,実効原子番号(EZ)画像,電子密度(ED)画像,基準物質によるmaterial decompositionが可能になると概説。その上で,仮想単色画像はビームハードニング補正効果が高く画質改善が期待でき,ED画像ではX線吸収係数とは異なるコントラストが得られるため新たな診断法につながる可能性があるとし,脳腫瘍の悪性度評価に有用であると述べた。
講演2は,日本医科大学付属病院放射線科の喜友名 一氏が「rDEを用いたBasis Material解析の有用性:非造影胆石評価への応用」と題して,Basis Material解析の概要および性能,臨床応用について述べた。Basis Material解析は物質弁別における解析手法の一つであり,同等のCT値を示す物質の弁別が可能である。講演では,実際の解析手法や,dual energy CTの線量変化に伴うファントムを用いた物質弁別の検討結果などが示され,低線量下でも詳細な物質弁別が可能なほか,非造影胆石の評価にも有用であると述べた。
講演3は,自治医科大学附属さいたま医療センター放射線科の濱本耕平氏が「腹部インターベンションにおけるDE物質弁別の有用性」を講演した。IVR領域で物質弁別が必要な高吸収体のうち,リピオドールの弁別について実効原子番号解析による弁別の可能性を実際の症例画像で検討したほか,リピオドールとヨードの弁別についても検討。それらの結果から,物質特異的DE係数を用いたDE物質弁別は,IVR診療において有用なツールとなりうるとの見解を示した。
講演4は,鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻腫瘍学講座放射線診断治療学の福倉良彦氏が,「rDEを用いた腹部疾患評価」と題して,副腎腫瘍,膵がん,肝臓疾患におけるDEの有用性を講演した。このうち,肝臓疾患においては肝硬変にて鉄沈着が増加すると肝細胞がんの発生率が向上することから,鉄の沈着程度をDEにて定量化可能かどうかの基礎検討について示し,DE撮影にて鉄を定量化できる可能性を示唆した。
|
|
|
|
|
Session2は,東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野の高瀬 圭氏が座長を務めた。講演5は,島根大学医学部附属病院放射線科の吉田理佳氏が,「FIRSTを用いた低電圧撮影による低被ばくと造影剤低減の両立」を講演した。腎機能低下患者の撮影における造影剤量低減には,低管電圧撮影が有用であるが,CT値や低コントラスト分解能は向上するもののノイズが上昇し,被ばく線量が増大するなどのデメリットもある。こうした症例にFull IRの「FIRST」を適用することで,造影剤量を大幅に低減しても,画質改善や被ばく低減が可能となることが,実際の症例を提示して紹介された。
講演6は,国立がん研究センター東病院放射線診断科の関谷浩太郎氏が,「頭頸部画像診断における最新技術」と題して講演した。物質弁別についてはDECTとSubtraction,金属アーチファクトについてはDECTと“SEMAR”を比較。物質弁別におけるそれぞれの特長を紹介した上で,頭頸部領域におけるrDEによる病変以外の多様な物質の弁別への期待を述べた。また,金属アーチファクトにおいては,特に口腔内金属のアーチファクト除去におけるSEMARの効果が大きく,撮影の工夫でさらなる効果の向上が期待できると述べた。
講演7は,神戸大学大学院医学研究科内科系講座放射線医学分野機能・画像診断学部門の大野良治氏が,「最新技術がもたらす胸部CTの新たな潮流」と題して講演した。胸部診断におけるSURESubtractionの有用性として,COPD症例のXenon CTにおける換気の評価が簡便に可能であると述べ,Subtraction CTで得られる情報は放射線科医にとって非常に大きなアドバンテージであると評価した。
講演8は,福岡大学医学部放射線医学教室の吉満研吾氏が,「Aquilion ONEを用いた腹部画像診断(腹部サブトラクション)」と題して,SURESubtractionによるIodine mappingとECV mapの臨床応用について述べた。ECVは組織全体に対する細胞外液容積比であり,線維化の指標となることから,吉満氏はこれまでにもECV mapを肝線維化判定に応用してきたが,ECV mapにSURESubtractionによるIodine mappingを応用することで,ECV mapの精度を向上できる可能性があると述べた。
|
|
|
|
|
●問い合わせ先
東芝メディカルシステムズ株式会社
http://www.toshiba-medical.co.jp/