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医療分野のICT利活用をテーマに「第6回JIRA画像医療システム産業研究会」が開催

2016-12-21

多くの参加者が集まった会場

多くの参加者が集まった会場

一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)は2016年12月16日(金),日中友好会館地下大ホール(東京都文京区)で「第6回JIRA画像医療システム産業研究会」を開催した。2011年にスタートし,年1回開催されている本研究会は,画像医療システム産業を取り巻くさまざまな環境変化を踏まえて毎回テーマを設定している。今回は「医療分野のICT利活用」をテーマに掲げ,基調講演1題と,「病院のICT利活用」「医用画像処理」「遠隔画像診断」についての計4題の講演が行われた。
はじめにJIRAの小松研一会長が開会挨拶に立ち,「JIRAは2017年で50周年を迎える。画像医療産業の次の半世紀が始まるにあたり,“ICT利活用”はふさわしいテーマであると考えている。ICTにより時間と空間を越えて医療情報を利用できることで新たな医療の仕組みが数多く提案されつつあり,より安全で効率的な医療を提供できる次の半世紀のビジネスチャンスになると考える。本研究会が,会員企業の新たな技術開発と産業活動の活性化につながることを祈念する」と述べた。

研究会の座長は,JIRA理事/政策企画会議議長の和迩秀信氏が務めた。
1題目に,内閣官房健康・医療戦略室次長の藤本康二氏が「医療・介護・健康ICT基盤の構築」と題して基調講演を行った。2017年春に施行される改正個人情報保護法は,匿名化情報の利活用をコンセプトとしているが,病歴などの医療情報は「要配慮個人情報」に分類されるためオプトアウト(本人への通知と本人の求めに応じて第三者への提供を停止することをルールとする,情報収集・利用の方法)が不可となり,利活用が難しくなる。そこで,健康・医療戦略推進本部の下に設置されている次世代医療ICT基盤協議会では,研究開発など医療の進歩を目的とする場合に限り,オプトアウトで医療情報の収集・利用を可能にする特別法を立案し,2017年の通常国会での成立をめざしている。藤本氏は,この特別法制定に向けた背景を説明した上で,オプトアウトでの医療情報収集・利用を実施するための「代理機関(仮称)制度」案について説明した。この仕組みでは,代理機関(仮称)は国の認定を受け,医療機関からのデータ収集と匿名加工したデータの第三者への提供を行う。また,各代理機関(仮称)がどのような情報を保存しているかを把握する支援機関の設置も検討している。藤本氏は,代理機関(仮称)のセキュリティ確保の考え方や具体的な対策案を説明し,集めた情報を利活用するICTシステム例や,製薬企業,医療機器企業,研究などにおいて想定される代理機関(仮称)の活用例について紹介した。

続いて,「病院のICT利活用」をテーマに,京都大学医学部附属病院医療情報企画部教授の黒田知宏氏が「病院のICT化の現状と未来ーIoTが拓く情報化医療の未来ー」と題して講演した。黒田氏は,医療現場では無数のセンサーがHISに結びつき,リアルタイムで位置情報に応じた情報の記録や提供を行うContext-Aware IT Systemが実用化されている現状を説明。これにより容易に業務効率を向上できることや,患者やスタッフのライフログを集めることで新たなエビデンスを構築できる可能性があるなど,医療現場が変化してきている現状を述べた。そして,データの質を担保するために,EHR,EMRに加え,PHRのプラットフォームを構築する必要があると指摘し,すべての情報を合わせることで,医療機関,家庭,地域がネットワークに組み込まれ,ひとつの大きな病院のように機能するソーシャルホスピタルが実現するとした。情報化医療が進む今,新しい社会のあり方を考えるステージに来ているとし,情報化医療の中核である医療機器については,オープンアーキテクチャで開発を行い,情報化医療を推進してほしいと述べた。

3題目は「医用画像処理」をテーマに,奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科生体医用画像研究室教授の佐藤嘉伸氏が「治療に直結した医用画像処理とビッグデータ解析〜CT画像からの人体解剖の自動認識と治療支援〜」を講演した。佐藤氏は,2009〜2014年に行われた文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化」の「計算解剖学の基盤技術」研究の代表者を務め,個体差がきわめて大きい解剖構造を,CT画像の三次元画像からベイズ推定に基づいて自動認識するシステムを構築した。講演では,腹部臓器と下肢筋骨格の統計モデルの構築と自動認識の研究について説明した上で,計算解剖学を活用した治療支援システムとして,手術ナビゲーション,カテーテル術前シミュレーション,人工関節について解説した。最後に,ビッグデータ解析の観点からの将来展望として,統計モデルに基づく循環型手術支援を紹介し,症例データのさらなる蓄積や施設間での共有により精度の高い統計モデルを作成でき,手術の品質安定に貢献できると述べ,医療機関の枠を越えて安全にデータベースを構築できる技術の整備の必要性を訴えた。

最後の演題として,「遠隔画像診断」をテーマに,日本遠隔医療学会常務理事/群馬大学医学部附属病院システム統合センター研究員の長谷川高志氏が「遠隔医療の大潮流と遠隔画像診断の将来展望〜遠隔画像診断サービスの普及に向けて〜」を講演した。長谷川氏は,遠隔医療については産業界からの推進機運は高く,2016年10月の未来投資会議でも取り上げられるなど期待は大きいが,診療報酬が認められ広く普及している画像診断以外の遠隔医療については,実施状況を正確に把握することができず,診療報酬や診療の質の担保,臨床評価・定量的評価などの課題があること指摘した。そして,遠隔医療に関する現状の制度について整理した上で,定量的根拠に基づいた戦略の重要性やポイント,地域医療介護総合確保基金の活用,倫理や質管理,産業の課題について説明した。まとめとして長谷川氏は,今後,バランスの良い精密な視座で遠隔医療を推進する人々が増えることを期待すると締めくくった。

小松研一 氏(JIRA会長)

小松研一 氏
(JIRA会長)

和迩秀信 氏(JIRA理事)

和迩秀信 氏
(JIRA理事)

藤本康二 氏(内閣官房健康・医療戦略室)

藤本康二 氏
(内閣官房健康・医療戦略室)

     
黒田知宏 氏(京都大学医学部附属病院)

黒田知宏 氏
(京都大学医学部附属病院)

佐藤嘉伸 氏(奈良先端科学技術大学院大学)

佐藤嘉伸 氏
(奈良先端科学技術大学院大学)

長谷川高志 氏(日本遠隔医療学会)

長谷川高志 氏
(日本遠隔医療学会)

 

●問い合わせ先
一般社団法人 日本画像医療システム工業会
TEL 03-3816-3450
http://www.jira-net.or.jp

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