2016-12-22
24回目となる東芝メディカルシステムズの「画論」
東芝メディカルシステムズ(株)は,2016年12月18日(日),東京国際フォーラム(東京都千代田区)で,「画論 The Best Image 2016」を開催した。画論は,同社のモダリティを利用して作成された医療画像について,画像の美しさだけでなく,診断や治療にもたらす価値や,患者へのメリット,撮影技術の工夫などをトータルに評価し,ディスカッションしながら“Best Image”を決定するイベントで,1993年にスタートし今年で24回目となる。今回は,CT,MR,超音波の3部門に493件の応募があり,その中から一次,二次の審査を通過した54施設が参加して最終選考となるプレゼンテーションが行われた。
CTは,1〜32列部門,64〜160列部門,64列〜160列(心血管)部門,Aquilion ONE部門,Aquilion ONE(心血管)部門の5つの部門で19件が入賞。MRは,1.5テスラ以下MRと3テスラMRの2部門で15件が入賞。超音波は,血管部門,心臓部門,表在部門,腹部部門の4部門で20件の入賞があった。
審査は,二次までは施設名を隠し,審査員はどこの施設からの応募かわからないブラインドの状態で行われ入賞が決められる。最終審査では,ディスカッションでの発表の内容(プレゼンテーションのわかりやすさや時間,質疑応答など)を加味して判断され,最優秀賞などが決定される。当日のプログラムは,午前中にディスカッション,昼食を挟んで特別講演,表彰式の順番で行われた。
|
|
|
|
特別講演は,CT/MR,超音波(心臓・血管部門),超音波(腹部・表在部門)の3会場で行われた。
CTは,東京ミッドタウンクリニック検診センター長の森山紀之氏を座長として,藤田保健衛生大学医学部先端画像診断共同研究講座教授の片田和広氏が「超高分解能CT−現在から未来へ」と題して講演した。片田氏は,東芝メディカルシステムズが開発を進めている超高分解能CTについて,技術的な概要と現状について最新の症例を含めて紹介した。2001年から座長の森山氏を中心とする国立がん研究センター東病院などと共同開発が行われてきた超高分解能CTは,現在,藤田保健衛生大学など世界4施設で臨床試験が進められている。現在のスペックは,検出器0.25mm×128,空間分解能はコンベンショナルスキャンで0.14mm,ヘリカルスキャン0.20mmとなっている。片田氏は,頭頸部,胸部,心臓,腹部など領域ごとに超高分解能CTの臨床画像を提示し,形態学的検査では“革命的”と言っていい診断能を持っていると述べた。
|
|
続いて行われたMRでは,杏林大学医学部放射線医学教室教授の似鳥俊明氏を座長に三井記念病院糖尿病代謝内科の岸智氏が「The impact of Cardiac MRI Non-invasive Coronary & Myocardial Deformation」を講演した。岸氏は,心臓MRI,特にCoronary MRAとシネMRI解析から得られるMyocardial strain解析の有用性について概説した。Coronary MRAでは,高度石灰化症例,腎不全症例や造影剤禁忌症例などの冠動脈評価で有用であり,診断能は冠動脈CTに比べても遜色ないことを紹介した。その上で,従来のステント(BMS)や薬剤溶出性ステント(DES)ではステント内評価が困難なことが課題だったが,新たなデバイスとして時間の経過とともに体内で分解・吸収される生体吸収性薬剤溶出性ステント(Bioresorbable Vascular Scafforld,:BVS)が登場しており,そのフォローアップにも有効であると述べた。Myocardial strain解析については,心筋構造を概説し,東芝メディカルシステムズのMR-WMT(wall motion tracking)は従来の超音波やMRによる解析よりも短時間で簡便に心機能障害を評価できると述べた。
|
|
超音波の心臓・血管部門は,日本大学板橋病院循環器内科の竹中克氏を座長として,「今なぜ成人先天性心疾患診断が必要なのか」と題し,筑波大学医学医療系循環器内科の石津智子氏が講演を行った。先天性心疾患は,1970年代に心臓手術の成績が大きく向上したことで,現在では約90%の患者が思春期,成人期まで到達可能となった。初期手術症例はすでに40歳代であり,成人の先天性心疾患の評価が求められている。石津氏は,先天性心疾患は複雑なことが多く,特に重要な右心系の評価には三次元エコーが必須であるとし,その評価に有用な技術として東芝メディカルシステムズ社の3Dスペックルトラッキングエコー技術を紹介した。3Dスペックルトラッキングエコー技術により,ストレイン値による収縮能・拡張能の評価や,心筋の収縮・伝播を三次元的にマッピングするActivation Imagingが可能になるとし,実際の症例を示してその有用性と期待を述べた。
|
|
超音波の腹部・表在部門は,川崎医科大学検査診断学内視鏡超音波部門教授の畠 二郎氏を座長として,日本大学病院消化器内科科長/超音波センターセンター長の小川眞広氏が「Aplio i-Seriesの挑戦」と題して,「B-mode」「Data管理」「硬さ表現」「血流評価」「3D」の5つのカテゴリにわけて,Aplio i-Seriesに搭載されている最新技術を紹介した。小川氏は,これからの時代は「記憶より記録」として客観性・再現性の重要性について述べ,それらを向上させる日本大学病院超音波センターの取り組みを紹介した。また,その取り組みをサポートする機能として,Aplio搭載の“Protocol assistant”をはじめとしたソフトウエアや技術,アプリケーションの有用性を示し,今後の技術開発と,メーカー主導による超音波検査の撮影の標準化に期待を示した。
|
|
特別講演の終了後に,メイン会場で各部門の上位入賞者の表彰式が行われた。最優秀賞など審査結果が発表され,同社代表取締役社長・瀧口登志夫氏から表彰状が贈られた。表彰はCT,MR,超音波の順番で行われ,それぞれの部門で審査員が講評を述べた。最後に瀧口社長が挨拶し,RSNA2016で4つのモダリティで新製品を同時に発表したことを紹介し,Made for Lifeの理念の下に開発された製品は,さまざまな臨床的な価値だけでなく経営への貢献,ワークフローの効率化など医療現場に貢献できると述べた。さらに,画論は来年2017年に25回を迎えるが,画論25thは新生・東芝メディカルシステムズとして新しい姿を見せられるのではとキヤノンによる株式取得が順調に進んでいることを示唆した。
|
|
|
|
|
|
【受賞施設】
〈CT部門〉
●1~32列部門
【優秀賞/テクニカル賞】
医療法人やわらぎ会 やわらぎクリニック
「左橈骨頭骨折」
医療法人 慈風会 白石病院
「頚椎椎間孔の形態評価法の新しい切り口(頚椎症性神経根症のCT評価法)」
●64~160列(心血管)部門
【最優秀賞】
平塚市民病院
「下腿の穿通枝動脈描出を目的とするニトログリセリン舌下スプレー剤を用いたCTA」
【優秀賞/テクニカル賞】
社会医療法人社団カレスサッポロ 北光記念病院
「80列Volume Scanによる冠動脈subtraction CTA」
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
「腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後におけるtype2 endoleak」
●64~160列部門
【最優秀賞】
国家公務員共済組合連合会 新小倉病院
「第十二胸椎圧迫骨折」
【優秀賞/テクニカル賞】
特定医療法人社団 松愛会 松田病院
「Real Prep.を応用したCT-Colonography」
【優秀賞】
札幌医科大学附属病院
「左頸静脈孔腫瘍」
福山市民病院
「右主気管支に接した肺野内腫瘤病変」
●Aquilion ONE(心血管)部門
【最優秀賞】
公益社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立市民病院
「冠動脈瘤の疑い」
【優秀賞/テクニカル賞】
済生会横浜市東部病院
「ウィンスロー孔経由、右腎動脈-総肝動脈バイパス再建術後」
【優秀賞】
医療法人社団 千栄会 高瀬クリニック
「単純CTによるクライオバルーンアブレーション術前評価」
足利赤十字病院
「坐骨動脈遺残およびその閉塞疑い」
獨協医科大学病院
「極型ファロー四徴症」
●Aquilion ONE部門
【最優秀賞/テクニカル賞】
聖マリアンナ医科大学病院
「右環指MP関節部AVM」
【最優秀賞】
名古屋鉄道健康保険組合 名鉄病院
「4DCTAによる腹腔内動脈瘤コイリング後のfollow up(SEMERとTimeMIP像使用)」
【優秀賞】
自治医科大学附属さいたま医療センター
「腹部大動脈瘤術後乳び腹水」
大阪府立母子保健総合医療センター
「喉頭軟化症」
神戸大学医学部附属病院
「左上葉肺癌におけるXenon CT」
〈MR部門〉
●1.5テスラ以下MR部門
【最優秀賞】
医療法人 畏敬会 井野辺病院
「敗血症性ショック後 両足趾壊死症例に対する3D-ASL法による血流評価」
【最優秀技術賞】
名古屋徳洲会総合病院
「陳旧性心筋梗塞(右冠動脈CTO)」
【Elan of the year】
医療法人井上会 篠栗病院
「肘窩皮静脈高速撮像」
【優秀賞】
医療法人社団 千栄会 高瀬クリニック
「巨大な静脈瘤様構造を合併した右冠動脈-冠状静脈洞間の冠動静脈瘻」
三喜会 横浜新緑総合病院
「神経膠腫」
三喜会 横浜新緑総合病院
「多発性硬化症(MS)」
金沢医科大学病院
「肺癌多発脳転移」
金沢医科大学病院
「下垂体腺腫(Volume-dynamic-scan)」
梶井町 放射線診断科クリニック
「胸郭出口症候群」
医療法人社団 新風会 玉島中央病院
「AVM post radiation」
●3テスラMR部門
【最優秀賞】
自治医科大学附属さいたま医療センター
「肺動静脈奇形コイル塞栓後」
【最優秀技術賞】
医療法人 住友別子病院
「血液透析上肢シャント部の血流評価」
【優秀賞】
杏林大学医学部付属病院
「言語野領域の手術にむけて~弓状束・ファンクショナルMRIのフュージョン画像の有用性~」
社会福祉法人恩賜財団済生会高岡病院
「DTTを用いた詳細な腰部神経根障害の高位診断」
藤田保健衛生大学病院
「海綿状血管腫(疑い)」
〈超音波部門〉
●血管部門
【最優秀賞】
北播磨総合医療センター
「頸動脈仮性動脈瘤」
【特別賞】
徳島大学病院
「SMIが治療効果判定に有用であったIgG4関連動脈周囲炎の1例」
【優秀賞】
社会医療法人鳩仁会 札幌中央病院
「上腕外転で生じる鎖骨下静脈狭窄をリアルタイムでとらえたPaget-Schroetter症候群の1例」
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「大動脈解離(Stanford B型)」
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「Jellyfish plaque」
●心臓部門
【最優秀賞】
愛仁会高槻病院
「WPW症候群に対するカテーテルアブレーションにより左室収縮能ならびに左室同期不全の改善を認めた1例」
【特別賞】
岸和田徳洲会病院
「陳旧性心筋梗塞・左室自由壁の心破裂(oozing rupture→blow‐out rupture)」
【優秀賞】
医療法人 北関東循環器病院
「左上肺静脈切離断端に認めた粘液腫」
紀南病院
「心室中隔欠損(肺動脈弁下型)に合併した肺動脈弁感染性心内膜炎の1例」
国立循環器病研究センター
「偶然に発見された冠動脈瘤の1例」
●表在部門
【最優秀賞】
医療法人 豊田会 刈谷豊田総合病院
「頬粘膜癌の一例」
【優秀賞】
医療法人 清仁会 北海道内科リウマチ科病院
「関節リウマチの骨びらん(Smart3D cSMIを用いて)」
大和市立病院
「腱鞘線維腫」
医療法人 豊田会 刈谷豊田総合病院
「離断性骨軟骨炎の肋軟骨移植の症例」
地方独立行政法人 りんくう総合医療センター
「非浸潤性乳管癌」
●腹部部門
【最優秀賞】
岩手医科大学
「Budd-Chiari症候群」
【優秀賞】
医療法人社団 長尽会 長久保病院
「透析腎癌」
日本大学病院
「SMIが診断に有用であった肝AV shuntの1例」
紀南病院
「遺伝性出血性毛細血管拡張症(Rendu-Osler-Weber病)」
医療法人 秋芳会 秋吉病院
「腎細胞癌による大腸転移」
●問い合わせ先
東芝メディカルシステムズ株式会社
「画論ザ・ベストイメージ」事務局
TEL 03-6369-9400
http://www.toshiba-medical.co.jp/