2016-7-12
20回を迎えたCTサミット会場
第20回CTサミット(主催:CTサミット,協力:インナービジョン)が2016年7月9日(土),日本教育会館一ツ橋ホールを会場に開催された。CTサミットは,1997年に愛知県名古屋市で「ヘリカルスキャンの基礎と臨床」をテーマに第1回全国X線CT技術サミットが開催されたことに端を発する。その後,規模を拡大しながら回を重ね,2012年からは名称を現在のCTサミットへと変更。翌2013年からは東京での定置開催となるなど,20年の歩みの中でCT技術の進歩とともに変遷を見せてきた。そして今回から,CTサミットが単独主催となり,プログラムごとに協賛企業が共催する運営方式となる。関係者はそろいのユニフォームを着て,“新たな出発”に臨んだ。
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今回のテーマは「Starting over―次世代技術への第一歩―」。20回の節目のCTサミットのテーマに「Starting over(新たなる旅立ち,再出発)」を掲げたことについて,当番世話人の平野 透氏(札幌医科大学附属病院放射線部)は,運営方法が変わり今後はCTサミットが単独主催になることから,新たなステージに向けて出発する意味を込めたとしている。また,平野氏は,現在のCTの革新的な技術は1990年代に生まれ,その後,技術的・臨床的なハードルを越えて臨床現場に普及してきたとし,未来を見据えて技術の新しい活用を模索していく必要があるとの考えから,サブテーマを「次世代技術への第一歩」にしたと説明している。
このような観点から,今回のプログラムは「QDCTユーザーからの臨床報告」「機器メーカーによる最新技術紹介」「エキスパートによる新たな技術の展開」「特別講演」で構成された。開会に先立ち挨拶した代表世話人の辻岡勝美氏(藤田保健衛生大学)は,「20年前にCTに関するおもしろい研究会をつくろうと始まったCTサミットは,学会とは異なるスタンスで,CTの最新技術について情報交換する場として活動してきた。運営方法は変わっても,そのスタンスは変わることなく,これからも新しい技術を話し合っていただきたい」と述べた。
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この後,「QDCTユーザーからの臨床報告」へと進んだ。東芝メディカルシステムズ(株)との共催となる本コーナーでは,宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生病院)が座長を務め,佐々木忠司氏(岩手医科大学循環器センター)が「超高精細CTの初期使用経験」と題して,東芝メディカルシステムズ社製の超高精細CT(QDCT)「TSX-304R」による検査の実際について講演した。医療機器の認証を受けているTSX-304Rは,0.25mm×128列の検出器を搭載し,チャンネル数は1792に上る。従来のCTと比較して高いコントラスト分解能を有するが,一方でデータ量増大によるネットワーク負荷も増加している。佐々木氏は,ノイズ特性や高コントラスト分解能というメリットを示し,冠動脈や大動脈弁,アダムキュービッツ動脈の画像を供覧しながら,微小な構造物の描出に優れていると説明した。
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次いで,小川正人氏(産業医科大学若松病院)と大沢一彰氏(済生会中和病院)が座長を務め,「機器メーカーによる最新技術紹介」が行われた。まずはじめに,会場内で東芝メディカルシステムズとアミン(株)/ザイオソフト(株)の技術紹介が行われ,その後,機器展示会場に場所を移して,シーメンスヘルスケア(株),リマージュジャパン(株),GEヘルスケア・ジャパン(株)(株)根本杏林堂,(株)フィリップスエレクトロニクスジャパン,(株)日立製作所がプレゼンテーションした。
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次に,第一三共(株)共催の「エキスパートによる新たな技術の展開――その1」が行われた。座長は村上克彦氏(福島県立医科大学附属病院),梁川範幸氏(東千葉メディカルセンター)が務め,3題の講演が設けられた。
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最初に登壇した山口隆義氏(JCHO北海道病院)は,「FFR(機能的血流予備能比)CT,サブトラクション冠動脈CT」をテーマに講演した。この講演で山口氏は,冠動脈CTAにおける石灰化やステント描出の限界を超えるための技術として,dual energy CTとarea detector CTの説明を行い,さらに,テストボーラストラッキング法を用いた冠動脈サブトラクションCTAも症例画像を提示して解説。また,FFR-CTについては,血管造影による侵襲的なFFRと異なり,1回の解析で全血管のFFR値を評価できることなどのメリットを説明した。
2番目には,笹森大輔氏(札幌白石記念病院)が登壇し,「数値流体力学(CFD)解析の活用」をテーマに講演した。笹森氏は,まず脳動脈瘤治療について説明し,破裂する危険性の高い動脈瘤を予測して積極的に治療をするための予測技術としてcomputational fluid dynamics(CFD)を用いた脳動脈瘤の解析法を解説した。CFD解析には解析結果にバラツキが生じるという結果も示し,計算値と実際の測定値との整合性が重要であるとまとめた。
次いで登壇した大橋一也氏(名古屋市立大学病院)は,「Dual Energy Imaging」をテーマに講演した。大橋氏は,まず高速スイッチング方式や2層検出器,2管球方式(dual source CT)などのイメージング法を解説。さらに,シーメンスヘルスケアのdual source CTによるdual energy撮影について,仮想単色X線画像の最新アプリケーションである“Monoenergetic Plus”を紹介したほか,同社の装置に搭載される金属アーチファクトを低減させる“iMAR”などを説明した。
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引き続き,村上氏と梁川氏が座長を務め,CTサミット主催の「エキスパートによる新たな技術の展開――その2」が行われた。先に,近藤康洋氏(ザイオソフト)が登壇し,「脳血管動静脈分離」をテーマに講演した。近藤氏はまず,ザイオソフトの“PhyZiodynamics”を用いた画質改善技術を説明した上で,脳血管CTAの2相撮影を1相での撮影にして,ポストプロセッシングにより動脈と静脈を分離する手法を解説した。さらに,“PhyZiodynamics”の基幹技術をベースにして,新たに開発された三次元形状認識に基づくテクノロジー「RealiZe」(Recognition of Extract Anatomical Landmark Information with Ziosoft Enhancement)を紹介した。
次に「ベイズ推定脳perfusionほか」と題して,堤 高志氏(東芝メディカルシステムズ)が講演を行った。堤氏は,まず超高精細CTを取り上げて,優れた分解能により頭部領域などでの微細構造の描出能が向上したことを説明した。さらに堤氏は,ベイズ推定を用いたperfusion解析について解説。ベイズ推定を用いるメリットとして,tracer delayの影響がなく,解析結果のCBF,MTTが正解値に近いこと,高度虚血領域でも正確にMTTを解析できること,ノイズに対するロバスト性が高いことなどを挙げ,“4D-perfusion”などのアプリケーションを紹介した。
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最後に,アミン共催による特別講演が行われた。座長を平野氏が務め,「循環器系疾患のための次世代診断治療支援技術:血流解析シミュレーション」をテーマに,八木高伸氏(イービーエム)が登壇した。八木氏は,航空機の設計や天気予報など社会での応用が進むCFDを診断・治療支援に用いる研究に取り組んでいる。その研究者の観点から,医療機器開発や医療機器産業発展,医療費削減につながるための研究のあり方を解説した。さらに,八木氏は,流れ場を数学的に解くというCFDの概念を説明した上で,開発した血流解析専用ソフトウエア“hemoscope”を紹介した。hemoscopeは,血流の三次元シミュレーションを行う世界初のソフトウエアである。
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20回目の区切りで,新たな運営方法へと移行した今回のCTサミットであるが,サブテーマの「次世代技術への第一歩」のとおり,今後臨床現場に普及していくであろう新たな技術が取り上げられ,充実した内容となった。次回の第21回CTサミットは,2017年7月8日(土)に広島県で開催される予定である。
協賛企業(順不同)
アミン/ザイオソフト,AZE,根本杏林堂,日立製作所,フィリップスエレクトロニクスジャパン,GEヘルスケア・ジャパン,シーメンスヘルスケア,東芝メディカルシステムズ,リマージュジャパン
●機器展示
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●問い合わせ先
第20回CTサミット
http://ctsummit.jp