2016-4-14
ニーズが高まるPOCUSに焦点を当てた研究会
救急医療や在宅医療などの現場で医師らが施行するPoint-of-Care超音波検査(POCUS)が増えている。こうした状況を踏まえ,POC超音波研究会が2016年に設立された。その第1回目の研究会が2016年4月9日(土),10日(日)の2日間,富士ソフトアキバプラザのアキバホール(東京都千代田区)において開催された。
装置の小型化といった技術の進歩により,救急医療,在宅医療などのプライマリケアだけでなく,麻酔や集中治療,整形外科領域などにおけるPOCUSが広がっている。今後もその普及が見込まれるが,一方で,検査技術を学ぶ機会はまだ少ないのが現状である。そこで,POC超音波研究会では,急性期医療やプライマリケアでのPOCUSを主体とした臨床応用と研究のための情報交換の場となるよう,系統立った内容での講習会などを開催していくという。
第1回目の研究会は,「今求められるPoint-of-Care超音波検査」をテーマに,初日に講演,パネルディスカッション,特別講演がプログラムされ,2日目にはハンズオンセミナーが設けられた。初日の冒頭に挨拶を行った代表世話人の谷口信行氏(自治医科大学臨床検査医学)は,研究会の目的として,「POCUSの有用性の提示」「機会の提供」「コースの作成,提示」の3つを挙げ,ハンズオンセミナーなどPOCUSを学ぶための機会を提供していきたいと述べた。また,同じく挨拶した世話人の木村昭夫氏(国立国際医療研究センター救命救急センター)は,救急医療において自身が取り組んできたPOCUSの経験について紹介した。この挨拶に続き,真弓俊彦氏(産業医科大学救急医学)が座長を務め講演が行われた。まず,畠 二郎氏(川崎医科大学検査診断学)が登壇し,「急性腹症におけるPoint-of-Care超音波の活用」をテーマに講演した。畠氏は,急性腹症における超音波検査には高度な検査技術が求められるとして,5分以内の検査時間で素早く診断を行うためのテクニックについて,症例画像を提示しながら解説した。そして,医師が行うべきPOCUSのポイントとして,検査前に診断仮説を立てること,その仮説に関連する臓器を見ること,棄却された場合に次の仮説を立てることを挙げた。2番目には,「総合診療におけるPoint-of-Care超音波―外来から往診まで」と題して,白石吉彦氏(隠岐島前病院)が講演した。同院の外来では,整形外科の患者が多く,その診断にはPOCUSが多く施行されている。白石氏は,超音波検査を施行することで,患者自身の満足度が向上すると述べた。
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続くパネルディスカッションでは,森村尚登氏(横浜市立大学救急医学)が座長を務めた。最初に登壇した鈴木昭広氏(東京慈恵会医科大学麻酔科)は,「Peri-operative Evaluation of the Airway via Sonography~気道超音波PEASプロトコール~」と題して発表した。鈴木氏は,気道管理をPOCUSで行っているとし,その検査法であるPEASプロトコールを用いた超音波ガイド下での輪状甲状靱帯切開例などを紹介。PEASプロトコールにより,高精度で安全な手技が可能になると説明した。次いで,「Focused Cardiac Ultrasound―ジェネラリストが行うことについての科学的考察」をテーマに,亀田 徹氏(安曇野赤十字病院救急科)が発表した。亀田氏は,循環器内科医以外の医師がベッドサイドで行う心臓超音波検査について,観察断面と評価項目を絞ることが重要だと述べた。3番目には,小形幸代氏(自治医科大学循環器内科)が登壇し,「Focused Cardiac Ultrasound―心エコー専門家が奨める急性期における実践的活用法」と題して,発表した。小形氏は,救急の心臓超音波検査について,ポイントを絞り迅速かつ正確に行うためのノウハウを説明。その上で,患者の症状や身体所見から疾患を考慮して短時間で検査を施行し,画像の描出が困難な場合には熟練者の支援を求めることが大切だとまとめた。
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初日の最後に行われた特別講演では,石田秀明氏(秋田赤十字病院消化器内科)と谷口氏が座長を務め,フランスから来日したDaniel Lichtenstein氏(アンブロワーズ・パレ病院集中治療部)が,「Lung Ultrasound ―Past, Present and Future」をテーマに,救急領域などにおける肺の超音波検査技術を紹介した。Lichtenstein氏は,BLUEプロトコール,FALLSプロトコールを確立した。講演では,胸部疾患におけるBLUEプロトコールを用いた場合の画像の特徴や病変の鑑別方法などが解説された。なお,2日目に行われたハンズオンセミナーでは,「Lung Ultrasound Workshop」と題して,Lichtenstein氏がチーフインストラクターを務めて,BLUEプロトコール,FALLSプロトコールの操作実習などが行われた。
このほか,初日の開会前にはGEヘルスケア・ジャパン(株)によるランチョンセミナーが行われ,石井浩統氏(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)による「救命救急とPoint-of-Care超音波―親和性と可能性―」が設けられた。また,ホールロビーでは,企業による機器展示も行われた。
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POC超音波研究会では,今後年2回のペースで研究会を開催していくとしており,次回は2016年秋以降の予定している。
●企業展示
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●問い合わせ先
POC超音波研究会
事務局(自治医科大学臨床検査医学講座内)
TEL 0285-58-7386
http://www.jichi.ac.jp/usr/cpc/clipatho/poc/