2016-3-30
ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
保険適用までのロードマップ
2016年度の診療報酬改定において,ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が保険適用となった。「da Vinci Surgical System(da Vinci)」(Intuitive Surgical社製)を用いて行うこの手術は,今春の改定において,K773-5「腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)」として加算が新設され,7万730点が算定できるようになった。原発巣が7cm以下で転移病巣のない腎悪性腫瘍に対して施行した手術で算定できるようになる。
このロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術の普及に向けて,一般社団法人日本泌尿器科学会は2016年3月30日(水)に,ホテル東京ガーデンパレス(東京都文京区)で記者会見を開催。同学会理事長の藤澤正人氏(神戸大学大学院医学研究科腎泌尿器科学分野教授)が,保険適用までの経緯と手術の安全性,患者QOLの向上などの有用性を説明した。
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内視鏡下腎部分切除術は,全摘出術と比べ低侵襲で安全性が高く,合併症を軽減するなどのメリットがある。米国では2011年に,ロボット支援による内視鏡下腎部分切除術が開腹手術とほぼ同じ件数になり,2012年には上回っている。一方,わが国でも内視鏡下腎部分切除術の件数が増えており,2009年には腎悪性腫瘍の手術件数1万1845件のうち2481件(21%)であったが,2012年には1万3482件のうち4247件(32%)となった。さらに,2014年9月からロボット支援内視鏡下腎部分切除術が先進医療に認められ,2015年には14施設で382例が施行された。
こうした背景の下,同学会では,保険適用に向けた活動を行い,14施設による多施設共同研究を実施。内視鏡下腎部分切除術では,根治性を示す切除標本のがんの断端陽性率,腎機能温存につながる25分以内の阻血時間が重要なポイントとなるが,da Vinciを用いることで従来の内視鏡下腎部分切除術よりも良好な成績が得られた。藤澤氏は,この有用性が認められ,今回の保険適用につながったと説明した。
同学会と一般社団法人日本泌尿器内視鏡学会では,ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を施行しようとしている医療機関に対し,厚生労働省が示す施設基準と両学会が策定した「泌尿器科領域におけるda Vinci支援手術を行うに当たってのガイドライン」を順守すること,1例目には,腎部分切除に対応した「泌尿器ロボット支援手術プロクター」を招へいすることを要望している。両学会では,これにより安全で精度の高いロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を標準術式として広め,患者の早期回復,早期社会復帰に寄与することをめざすとしている。
●問い合わせ先
一般社団法人日本泌尿器科学会
事務局
TEL 03-3814-7921
https://www.urol.or.jp