2016-3-7
会場風景
東芝メディカルシステムズ(株)は,2016年3月5日(土),「TOSHIBA FIRST Symposium 2016」を品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)で開催した。FIRSTは,Full IRの被ばく低減技術として同社のArea Detector CTの最上位機種である「Aquilion ONE/ViSION FIRST Edition」に搭載された。同社が進めてきた被ばく低減への取り組みの中で,AIDR 3Dに次ぐ新しい被ばく低減技術として期待が大きい。今回のシンポジウムでは技術的評価や臨床応用について,導入施設から最新の事例が報告された。
開会に先立ち挨拶した代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,2015年が東芝が最初のX線管開発で医療分野に参入して100年,CT事業開始から40年の節目となったことを紹介し,「CTをはじめとする医療事業が大きく発展することができたのは,多くのユーザーとのネットワークと,そこから生まれるさまざまな要望に真摯に向き合い,妥協することなく開発に取り組み,実現してきた結果だ」と述べた。さらに,昨年来の東芝本体ならびに東芝メディカルシステムズの一連の経緯に触れ,一刻も早く新たな体制に移行し「次の100年も同様の価値を提供できるように努力していきたい」と展望を述べた。続いて,CT営業部の津島総氏が「FIRST技術紹介」を講演した。FIRSTの開発コンセプトとして,(1)空間分解能の向上,(2)低コントラスト検出能の向上,(3)被ばく線量の低減,(4)ワークフローを重視した再構成速度,(5)対象臓器に合わせた最適パラメータの適用の5つを挙げて,画像再構成法のポイントを概説した。
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プログラムは,Session1と2の2部構成で技術評価2題,臨床応用4題の講演が行われた。
Session1は,広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門放射線診断学の粟井和夫氏を座長として,3題の講演が行われた。最初に「FIRSTの物理評価」を産業医科大学病院放射線部の小川正人氏が講演した。小川氏は,FIRSTとFBP法(一部AIDR 3Dを含む)について,CT値,ノイズ,空間分解能の各特性評価の結果を示し,FIRSTはFBP法に比べて空間分解能の大幅な向上,ノイズ低減によるCNRの向上,被ばく線量の低減が可能であると述べた。その上で,FIRSTに限らず,逐次近似画像再構成法を用いた画像処理の画質の評価方法がまだ確立しておらず,さらなる検討が必要だとした。
技術評価の2題目として,「FIRSTのワークフロー」を東海大学医学部付属八王子病院放射線技術科の遠藤和之氏が講演した。遠藤氏はFIRSTを用いたワークフローの構築について,FIRSTを適応する部位ごとに画質や画像再構成時間の検討を行った。その上で緊急性・即時性がないこと,体軸方向の撮影範囲が短いことなどを考慮し,整形,内耳,冠動脈,肺がん検診,頸部血管,小児でFIRSTを組み込んだプロトコールを作成した。例えば,低線量肺がん検診では,画像確認用にはAIDR 3Dを,HRCTにFIRSTのBody,Lungなどを使用する。そのほか,FIRSTではアーチファクト除去の効果が大きいことから上肢挙上困難例などに適応が期待されると述べた。
Session1の最後の演題は,臨床応用として佐世保市立総合病院放射線科の城戸康男氏が,「整形領域を中心としたFIRSTの初期経験」を講演した。同院では,診断用と救急用に2台のAquilion ONE/ViSION Editionを導入し,このうち診断用のViSIONでFIRSTを利用している。城戸氏は,腰椎,腓骨,踵骨,胸椎,大腿骨などの骨折症例について,AIDR 3DとFIRSTの画像を供覧し,FIRSTではアンダーシュートが目立たず,骨折線の同定が可能になることを評価した。さらに,FIRSTでの空間分解能の向上によって,拡張した腸管の評価が容易になることも期待できると述べた。
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Session2では,慶應義塾大学医学部放射線科学教室の陣崎雅弘氏を座長に3題の講演が行われた。最初に登壇した独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)九州病院小児科の宗内淳氏は,「小児領域におけるFIRSTの臨床応用」を講演した。小児循環器を専門とする宗内氏は,川崎病をはじめとする先天性心疾患の診療では,治療や経過観察のため繰り返しCTを撮影する必要があることから,被ばく線量を低減できるFIRSTへの期待は大きいとして,主要体肺動脈側副血管(MAPCA)の診断,フォンタン手術(右心バイパス)での適用について紹介した。さらに,今後の期待として4DCTの利用,容量計測への応用などを挙げた。
続いて,熊本大学大学院生命科学研究部放射線医学の宇都宮大輔氏が「循環器領域のFIRSTの臨床応用」について紹介した。冠動脈CTは,狭窄度の評価から機能情報や定量評価,予後や治療方針の決定に移行しており,特にプラークの評価は性状だけでなく詳細な計測に基づいた定量化が求められている。宇都宮氏は,FIRSTによるプラークの質的評価,冠動脈ステントの内腔評価,心筋ダメージ評価における検討結果を紹介し,FIRSTは低被ばくで冠動脈や心筋の評価が可能になると述べた。
最後の演題として粟井和夫氏が,「全身領域におけるFIRSTの臨床応用」を講演した。初期の段階からFIRSTの共同開発に携わってきた粟井氏は,頭頸部,胸部(肺がん),循環器,腹部の各領域の最新の臨床画像を供覧し,FIRSTがversion2にバージョンアップしたことで,特に頭部CTでは強力なビームハードニング補正とノイズ抑制効果で,1mm前後のスライス厚でもコントラスト分解能が向上し,急性期脳梗塞の診断に寄与する可能性があると述べた。その上で,FIRSTは従来のFBP法の線形画像とは異なる非線形画像であり,画質の評価においてNoiseやSNR,NPSなどの指標だけではない,総合的な評価方法を検討する必要があると述べた。
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●問い合わせ先
東芝メディカルシステムズ株式会社
TEL 0287-26-5100
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