2016-2-29
163名が参加し盛況な会場
医療放射線防護連絡協議会は,2016年2月25日(木)に首都大学東京荒川キャンパス(東京都荒川区)において,第37回「医療放射線の安全利用」フォーラムを開催した。
今回は「歯科領域の医療放射線の利用と防護」をテーマに,主題として全面的に取り上げるのは初めてとなる歯科領域での講演が設けられ,学生98名を含む,163名が参加した。同フォーラムは,長年医療放射線防護連絡協議会に貢献し,2015年4月10日に逝去された島野達也氏の追悼フォーラムも兼ね,基調講演とパネルディスカッションが設けられ,最後に参加者を交えた総合討論が行われた。
フォーラムでは開催に先立ち,医療放射線防護連絡協議会会長の佐々木康人氏が開会の挨拶を行った。佐々木氏は,今回のフォーラムが医科放射線診療・歯科放射線診療の放射線利用・防護管理・教育で連携・協力する契機になってほしいと抱負を語った。
基調講演では東京歯科大学の西川慶一氏が座長を務め,国立保健医療科学院生活環境研究部の山口一郎氏が「歯科エックス線の現状と問題点」と題して講演した。講演は,歯科領域を中心とした国内外における事例・トピックを供覧しながら,歯科関係者が放射線防護についてどのように考えていくべきかについて参加者の意見を随時確認しながら進められた。山口氏は,歯科関係者には放射線安全文化醸成のために,放射線管理の共有と改善が常に求められていると述べた。また,患者が放射線に対して不安を抱いていることを踏まえて対応していく放射線リテラシーも必要になるとした。さらに,歯科領域での放射線防護において,最新装置の線量に関する情報のフィードバックと臨床現場で役立つ歯科診療ガイドラインの実効性が不十分であるとし,これらの課題を解決していく必要性を訴えた。
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続いて,明海大学歯学部の奥村泰彦氏が座長を務め,「歯科領域の医療放射線の利用と防護」をテーマに,パネルディスカッションが行われた。
鶴見大学歯学部附属病院画像検査部の三島 章氏は「歯科領域における撮影の実際と防護」と題して,同大学で行われている各撮影法と防護に対する取り組みについて講演した。三島氏は,口内法X線撮影やパノラマX線撮影,歯科用コーンビームCTの撮影法の特徴と課題,防護への取り組みを紹介した後,故島野氏の調査である1998年までの日本における歯科放射線検査件数に,新たに1996年〜2014年を追加した資料と歯科大学における防護衣着用状況のアンケートを供覧し,歯科放射線検査における利用と防護の実態を報告した。
朝日レントゲン工業(株)技術部の野津雅和氏は「エックス線撮影装置の開発と防護の取り組み」と題し,メーカーの立場として,いかにJIS規格やIEC規格などに対応しつつ線量と画質のバランスを保ちながら,X線撮影装置の開発に取り組んでいるかを紹介した。
新潟大学大学院医歯学総合研究科の林 孝文氏は「歯科医学生への放射線学教育と防護」と題し,放射線学教育の実際についてを報告した。林氏は,放射線学教育が教科書やガイドラインでどのようにカリキュラムが組まれているかを紹介した上で,新潟大学における放射線防護教育について,その特徴と課題を提示した。
医療法人社団庸明会つきおか歯科医院の月岡庸之氏は「歯科臨床現場でのエックス線撮影と防護の実際」と題し,開業医の視点から放射線利用の際に考慮すべき院内環境や患者視点での防護の必要性を述べた。月岡氏は,一般歯科臨床の現場ではインプラント治療の増加によりコーンビームCT撮影が増加しており,このような新技術に対する適正な正当化と線量制限の策定が急務であると訴えた。
長瀬ランダウア(株)の小林育夫氏は「放射線従事者の防護」と題し,線量測定を専門とする企業の観点から放射線従事者がどのように被ばくし,どう防護していくべきかを講演した。小林氏は,被ばく低減には散乱線の分布を測定しグラフ化するなど,リスクを「見える化」して認識させることで放射線防護の意識を向上させていくことが重要であると述べた。
日本歯科大学生命歯学部の佐藤健児氏は「歯科エックス線防護の取り組みと課題」と題し,歯科X線検査におけるDRLの設定や2015年9月に出された「歯科エックス線撮影における防護エプロン使用についての指針」(https://www.jsomfr.org/images/pdf/bougoepron.pdf
)を中心とした線量最適化に関連する日本歯科放射線学会防護委員会の取り組みと,「歯科X線検査におけるDRLの設定」「歯科用コーンビームCTにおけるDRLの設定」「歯科用コーンビームCTの安全運用ガイドライン」「DRLに代わる最適化ツールの検討」「顎顔面CTにおけるDRLの設定」という今後の課題について報告した。
最後に,明海大学歯学部の原田康雄氏が学生向けにEPR(ESR)測定について解説した後,パネルディスカッションの演者と座長2名,医療放射線防護連絡協議会総務理事の菊地 透氏による総合討論が行われた。総合討論では,歯科領域における防護エプロン使用の是非やポータブルX線撮影装置におけるフィルムバッジの必要性など,会場との活発な意見交換がなされた。
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●問い合わせ先
医療放射線防護連絡協議会 (日本アイソトープ協会内)
TEL 03-5978-6433(月・火・木・金の午後のみ)
FAX 03-5978-6434
Email jarpm@chive.ocn.ne.jp
http://www.fujita-hu.ac.jp/~ssuzuki/bougo/bougo_index.html