2016-1-25
回を重ねるごとに規模を拡大するADCT研究会
2016年1月23日(土),東京大学伊藤国際学術研究センター(東京都文京区)において第7回 ADCT研究会が開催された。同研究会は,Area Detector CT(ADCT)の技術や臨床応用に関する情報共有の場として設立され,年1回のペースで研究会を催している。今回もADCT研究会と東芝メディカルシステムズ(株)が共催。日本放射線技術学会東京支部が後援した。
当番世話人の井野賢司氏(東京大学医学部附属病院放射線部)の挨拶で始まった研究会は,東芝メディカルシステムズの情報提供,一般演題6題,同研究会からの報告,特別講演2題というプログラムが組まれた。また,会場の外にある多目的スペースでは,ポスター展示と企業展示が行われた。
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一般演題は,越智茂博氏(東千葉メディカルセンター放射線部)と赤城輝哉氏(三井記念病院放射線検査部)が座長を務めた。1演題目は,大原千季氏(医療法人社団清風会五日市記念病院技術部画像診断技術科)による「4D-CTAによるMatas Test~脳動脈瘤術前における血行動態評価~」であった。この発表では,血管撮影装置を用いて行うMatas TestをCTで行った経験が報告された。大原氏は,CTAでの評価により,検査中の脳梗塞などの合併症のリスクを抑え,簡便に血行動態を評価できると述べた。一方で,血流量の変化や神経症状の評価はできないとし,CTはあくまでも簡易的な検査であると説明した。続いて,鈴木勝久氏(慶應義塾大学病院中央放射線技術室)が「Lung Subtraction 撮影のポイント」と題して発表した。同院では,胸部CT画像からサブトラクション処理を行い肺のヨードマップを作成するソフトウエアである“Lung Subtraction”を診断に用いている。鈴木氏は,デュアルエネルギー撮影とLung Subtractionのヨードマップ作成を比較した上で,造影のタイミングなどを解説した。さらに,まとめとして,精度の高い位置合わせを行うためには,患者への十分な説明と最適な造影タイミングが重要であると述べた。
3番目に登壇した芳賀喜裕氏(一般財団法人厚生会仙台厚生病院放射線部)は,「新しい冠動脈サブトラクションCTA法の構築」をテーマに発表した。芳賀氏は,東芝社の“Real Prep.”を用いて造影画像とその6秒後の遅延画像(マスク画像)を1呼吸で短時間撮影し,位置ズレのない高精度のサブトラクションができる検査技術を紹介した。続く4番目の発表では,木口雅夫氏(広島大学病院診療支援部画像診断部門)が登壇。「FIRSTを用いた冠動脈解析画像の評価」と題して,東芝社製「Aquilion ONE/ViSION FIRST Edition」に搭載された逐次近似画像再構成法である“FIRST”のノイズ低減やコントラストなど,冠動脈領域における画質を評価した。木口氏は,FIRSTの画質について,FBP法とAIDR 3Dと比較した結果を示し,コントラストはFBP法と比較して約70%改善したと報告。空間分解能が飛躍的に良くなり,診断能が向上するとまとめた。
次に,「4DCTによるエンドリークタイプ診断」をテーマに,藤代 渉氏(平塚市民病院医療技術部放射線技術科)が発表した。藤代氏は,同院におけるEVARとTEVARの28症例におけるエンドリークのタイプ診断について,3D-CTAと4D-CTの正診率を報告した。その結果は3D-CTAは約69%で,4D-CTは約78%となった。また,4D-CTは,type IIの区別の精度が高いという結果が出た。一方で,type Iとtype IIIが血管造影の結果と異なることがあることから,今後の技術開発に期待したいと述べた。一般演題の最後は,柳川康洋氏(大阪大学医学部附属病院医療技術部放射線部門)が,「国内初となる心カテ領域へのIVR-CTシステム導入~IVR担当技師の新たなる挑戦~」と題して発表した。同院は,2015年2月に東芝社製「Aquilion ONE/ViSION Edition」と「Infinix Celeve-i INFX-8000C」を組み合わせたIVR-CTを導入し,慢性完全閉塞病変(CTO)のPCIなどにおいて,心電図同期CT撮影を行っている。柳川氏は,ガイドワイヤの先端の確認などにIVR-CTは有効活用されていると説明する一方,人員を確保することやシステムの稼働率を上げることを今後の課題に挙げた。
●一般演題
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この後,休憩を挟み,同研究会の理事長である井田義宏氏(藤田保健衛生大学病院放射線部)が今後の活動を報告した。井田氏は,ADCTの普及とともに研究会の参加者も増えていることから,今後は8ブロックからなる全国組織とするほか,ワーキンググループの活動を活発にすると述べた。
次いで,特別講演が行われた。特別講演1では,神山 浩氏(日本大学医学部医学教育企画・推進室/附属板橋病院小児科)が,「ADCTによる小児CT検査について」をテーマに登壇した。座長は,君島正一氏(日本大学医学部附属板橋病院放射線部)が務めた。神山氏は,CTの技術開発の歩みを紹介した上で,小児冠動脈CT検査の変遷を説明。さらに,現在の対象疾患として,先天性冠動脈奇形,先天性心疾患,後天性冠動脈異常を挙げた。そして,後天性冠動脈異常の一つである川崎病の冠動脈障害について,石灰化病変,側副血行路の形成といったCT所見の特徴を解説した。また,現在の小児冠動脈CT検査の課題として,β遮断薬,造影剤,放射線被ばくをキーワードに挙げて, 医師と診療放射線技師が協調して,年齢特性・臨床情報,目的を共有することが重要だとまとめた。
特別講演2では,梁川範幸氏(東千葉メディカルセンター放射線部)が座長を務め,赤羽正章氏(NTT東日本関東病院放射線部)が「画質を担保した線量最適化戦略」をテーマに講演した。赤羽氏は,放射線防護体系の三原則やICRP Publicationにおける医療被ばくの特殊性などを解説。その上で,医療被ばくの正当化と最適化,診断参考レベル(DRLs 2015)についての見解を示した。さらに,被ばく低減のための技術として,FIRSTの原理などを解説した。また,赤羽氏は,施設内に線量管理委員会を設けて,DRLs 2015を参考にして,撮影条件を変更した場合には診断能の評価を行うことが大切であると述べた。
●特別講演
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すべてのプログラム終了後には,ポスター展示の受賞者が発表され,井田氏から表彰状と記念品が贈られた。次回は,井田氏が当番世話人を務め,2017年の1月をめどに開催される。脳血流や心臓CTなどのワーキンググループからの発表があるほか,GE社製「Revolution CT」に関する演題も盛り込まれる予定である。
●ポスター展示
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●企業展示
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●問い合わせ先
ADCT研究会 事務局
(藤田保健衛生大学病院放射線部内)
http://adct.kenkyuukai.jp