2015-12-22
定員を超える参加者が集まった会場
(株)フィリップスエレクトロニクスジャパン(以下,フィリップス)は2015年12月19日(土),ステーションコンファレンス東京(東京都千代田区)にて「Parallel Imaging Symposium in Tokyo」を開催した。代表世話人を今井 裕氏(東海大学)が務め,「Neuro imaging and Science」をテーマに,2部5題の講演が行われた。会場に集まった約200人の参加者に加え,今回は福岡と沖縄でサテライト中継も行われ,多くの参加者が脳神経領域のMRIに関する最新の知見や臨床に生かせるテクニックを学んだ。なお,前週の12月12日(土)には,大阪にて「Neuro & Bady Imaging and Science」をテーマに「Parallel Imaging Symposium in Osaka」が行われ,定員を超える200人以上が参加した。
会の冒頭,今井氏が開会挨拶に立った。1999年にチューリッヒ大学のPruessmannらがISMRMで初めて報告し,“SENSE:sensitivity encoding for fast MRI”というタイトルでMagnetic Resonance in Medicine誌に掲載されたParallel Imagingは,マルチコイルを用いることで高速撮像と高いSNRを両立する撮像法として,現在では臨床で一般的に用いられている。MRIが登場したころから携わってきた今井氏は,「撮像時間の短縮と高いSNRは相反するという印象で,これらを両立することの難しさをよく知っていたので,Parallel Imagingはすばらしい技術であると感じた。MRI技術の進歩に最も貢献した撮像法であり,Parallel Imagingを名称に冠したこのシンポジウムも,MRI診療におけるリーダーとしての役割を担っている」と,Parallel Imagingと同シンポジウムへの思いを述べた。
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第1部は「Neuroimaging technique and clinical」をテーマに,座長の國松 聡氏(東京大学医学部附属病院)の下,MRIの技術や臨床応用に関する3題の講演が行われた。
最初に,福澤 圭氏(虎の門病院)が「ルーチン+ASL〜臨床医が求めるもの,技師が提供できるもの〜」と題して講演した。同院では,フィリップスのIngenia 3.0Tを用いて,検査目的に応じて頭部MRIのルーチン検査にASLを追加する運用を行っている。福澤氏は,同院における検査状況とASLの手法について説明した上で,ASL追加の実践例として,血流の存在診断と動態評価について,臨床医が求める情報に応じた検査プロトコールを症例を示して紹介。ASLは,簡便,非侵襲的,MRIの“ついで”にできることが臨床医からも評価されていると述べ,診療放射線技師として検査手法の情報を臨床医に提供し,患者にとって最良の選択ができるようにしていくと展望した。
次に,丹治 一氏(北福島医療センター)が「MSDEによるMRNeurographyの展望」と題して,同院にて研究目的に行っているMSDE(motion sensitized driven equilibrium)法を用いた3D GRE系の神経描出法“pcMSDE(phase-cycling MSDE)”について技術的な解説を行った。pcMSDEは,3D TSE系の“SHINKEI”と比べるとコントラストは下がるものの,背景組織画像と神経画像の2種類の画像を得られ,Multi bの運用で神経と血管の同時・分離描出が可能というメリットがある。丹治氏は,撮像法や再構成法を説明し,装置の進化により短時間で診断に有用な画像を得られるようになったと述べ,今後の展望として,T2マッピングとの同時収集による診断能の向上や,高b値による四肢末梢への応用の可能性を挙げた。
3題目に,藤間憲幸氏(北海道大学)が「ASLの応用技術がもたらす一歩先の血行動態評価」と題して講演した。藤間氏は,ASLの一つである4D-MRA“CINEMA”についての概説した上で,CINEMAは基本的な使い方以外にも,シーケンスデザインの組み立てによりさまざまな情報を得られるとして,そのテクニックを紹介した。labeling slabの厚さや配置を工夫することで標的血管のみを描出するVessel selective 4D-MRAや,時間分解能向上のための工夫として空間分解能などを妥協することや,ボーラス性を高めるためpCASLのデザインを4D-MRA用にする,ターゲットを絞るといった方法を説明。また,1 phase目をコントロール画像とすることで撮像時間を約半分に短縮するSingle look lockerモデルについて解説した。
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第2部は,水村 直氏(東邦大学医療センター大森病院)が座長を務め,「Neuroscience」をテーマに2題の講演が行われた。
1題目に,丹羽 徹氏(東海大学医学部付属病院)が「位相情報の活用:PADREを中心に」と題して,通常の強度画像と位相画像を組み合わせることで,さまざまなコントラスト画像を作成するPADRE(位相差強調画像化法)の有用性を中心に講演した。丹羽氏は,磁性や磁化率についての基本を説明した上で,症例画像を示しながら,PADREによる磁化率強調画像や組織強調画像の有用性,注意点などについて説明した。さらに,1回の撮像でポストプロセッシングに各コントラスト画像を作成するSynthetic MRIについても触れ,機能解析やセグメンテーションが可能であることや,画像のコントラストを変えて総合的に見ることで微小な脳転移の拾い上げが可能といった臨床的な有用性を示した。
最後の演題として,瀧 靖之氏(東北大学加齢医学研究所)が「大規模脳画像データベースから見る脳発達と加齢」をテーマに講演した。認知症や軽度認知障害(MCI)の患者が増加する日本において,疾病の発症を未然に防ぐ一次予防に必要な個別化医療・予防を実現するために,東北大学では脳画像データベース研究に取り組んでおり,講演ではその内容や,脳の発達と加齢についての知見を紹介した。そして今後の展望として,認知症の超早期二次予防(発見)としてアミロイドβイメージングの可能性や,Ingenia 3.0Tを2台導入している東北メディカル・メガバンク機構で取り組んでいる一次予防をめざした脳画像データベースの構築について説明した。
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なお,講演に先立ち,ヘルスケア事業部MRモダリティスペシャリストの中村理宣氏がRSNA 2015の報告を行った。MRIのトピックスとして,シンプルかつ安全にインプラントMRI検査を行うための“ScanWise Implant”や,「In-bore experience」の新機能,“3D-CINEMA”などの次世代アプリケーション,MRIをガイドとした放射線治療などについて紹介した。閉会にあたり,IS統括部部長の小山克彦氏が閉会の挨拶に立った。小山氏は,日本で事業を開始して62年となるフィリップスが,MRI分野についても日本国内の医師や診療放射線技師とともに研究開発に取り組み,日本発信のアプリケーションなどが世界で活用されるようになっていると述べ,今後も医療の質の向上や早期診断の実現,個別化医療に貢献していくと挨拶し,シンポジウムは盛況裏に閉会した。
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