2015-9-3
開所式でのテープカット
(株)日立製作所と日本アキュレイ(株)は,2015年9月2日(水)に(株)日立メディコの柏事業場内に放射線治療システム「トモセラピーシステム」の実機を設置した「日立高精度放射線治療研修センター」(研修センター)を開設し,同日に開所式とメディアセミナーを行った。
研修センターでは,トモセラピーシステムの実機を用いて,実際に治療ビームを出力して操作方法や装置の管理を学ぶことができる。また,隣接する日立メディコのショールーム「日立メディカルフォーラム柏」内に,放射線治療計画システム8台を設置したトレーニングルームを設けており,装置の操作・管理から治療計画,品質管理まで,放射線治療に関する一連の研修プログラムを行える環境を整えている。研修センターでは,放射線治療計画を立てる医師や医学物理士を対象としたプログラムと,機器管理・照射操作を行う診療放射線技師や医学物理士を対象としたプログラムを用意しており,新規ユーザーに対する基礎研修だけでなく,既存ユーザーに対するフォローアップ研修などの開催も予定している。
トモセラピーシステムは,ヘリカルCTとの融合により強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)などの高精度な治療を実現する,米国Accuray Inc.(アキュレイ社)が供給する放射線治療システム。日本国内では,日本アキュレイが輸入・据付・保守を,2012年7月からは日立メディコが独占販売を行っており,2015年8月末現在で42施設46台が稼働している。
日立グループは,2014年4月にヘルスケアグループおよびヘルスケア社を設立し,2016年4月には日立メディコ,日立アロカメディカルの日立製作所への吸収合併を予定しており,事業体制の再編によりグループ全体でヘルスケア事業の展開を加速させている。放射線治療システム事業としては,自社製造・販売の陽子線がん治療システムと,アキュレイ社とのパートナーシップによるトモセラピーシステムの販売・サポートに取り組んでおり,国内での放射線治療の需要が伸びると見込まれることから,事業の強化・拡大をめざしている。
開所式には,日立製作所執行役常務ヘルスケアグループ長,ヘルスケア社社長の渡部眞也氏,アキュレイ社CEOのジョシュア H.レヴィン氏,日本放射線腫瘍学会(JASTRO)理事長の西村恭昌氏(近畿大学医学部附属病院がんセンター長),JASTRO監事・代議員の早川和重氏(北里大学病院副院長・放射線治療科科長),JASTRO代議員の唐澤克之氏(東京都立駒込病院放射線治療部部長)と古平 毅氏(愛知県立がんセンター中央病院放射線治療部部長)が出席した。はじめに日立製作所ヘルスケア社副社長,日立メディコ代表取締役取締役社長の山本章雄氏が挨拶した。山本氏は,もともと放射線治療装置マイクロトロンの製造・調整をしていた建物を,今回研修センターとして整備したことを説明し,需要が伸びていく放射線治療を高精度に提供できるよう,ユーザーのスキル向上に活用してもらいたいと述べ,引き続きの支援を呼びかけた。そして,開所式出席者によるテープカットで開設を祝した後,施設内の見学会が行われた。
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メディアセミナーでは,はじめに渡部氏が挨拶し,ヘルスケア事業と放射線治療システムの取り組みについて述べた。渡部氏は,放射線治療システム事業の今後の展望として,産学連携で最先端,高精度のシステムを提供していくことと,臨床での活用を教育面も含めてサポートしていくことを挙げ,その一環として今回の研修センターの開設に至ったと述べた。続いて,レヴィン氏が挨拶し,日本の放射線治療市場と,アキュレイ社の日本市場への展開について説明した。そして,今後は中小規模の施設が成長市場になるとの考えを示し,新製品「Onrad(オンラッド)」を世界で初めて日本に投入することで新市場に参入すると述べ,2017年には同社放射線治療システムの国内稼働台数100台をめざすとの展望を語った。
このあと,日立製作所ヘルスケア社X線治療システム営業本部本部長の河野克典氏による,研修センターでの研修内容説明に続き,放射線治療に携わる3名の医師による講演が行われた。
最初に,中川恵一氏(東京大学医学部附属病院放射線治療部門)が「日本のがんと放射線治療」と題して講演した。中川氏は,日本では環境や生活習慣の欧米化により,胃がんが減少して大腸がん,前立腺がん,乳がんが増加するなど,がんも欧米化が進んでいると説明。治療にも欧米化が必要であるとし,今後,放射線治療のニーズが高まると述べた。そして,国民にがん治療についての正しい知識を身につけてもらうため,2017(平成29)年度から小中高校でがん教育が取り入れられることを紹介した。
2題目に芝本雄太氏(名古屋市立大学大学院医学研究科放射線医学分野)が登壇し,「トモセラピーの概要とこれからの放射線治療」をテーマに発表した。芝本氏は,トモセラピーでの治療法や装置構造について説明し,非常に複雑な照射ができる治療法であり,普及が望まれると述べた。そして,もう一つの放射線治療として粒子線治療を紹介し,2013年から名古屋陽子線治療センターで行われているスポットスキャニング照射法について説明した。
最後に,大西 洋氏(山梨大学医学部放射線科)が「体幹部定位放射線治療とその保険適用拡大の必要性について」と題して講演。医療費を抑制でき,侵襲性の低い定位放射線治療の有用性について解説し,現在は頭蓋内,肺,肝臓に限られている保険適用を拡大する必要性と意義を強調した。
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●問い合わせ先
(株)日立製作所 ヘルスケア社 X線治療システム営業本部 【担当: 加納川,加藤】
TEL 03-3526-8340
http://www.hitachi.co.jp/
日本アキュレイ(株)(マーケティング担当)【担当: 武田】
TEL 03-6265-1526
http://www.accuray.co.jp/