2015-8-11
MediGuideテクノロジーを導入した装置外観
セント・ジュード・メディカル(株)は2015年8月5日(水),カテーテル手術などでのX線透視による被ばく線量を低減することができる「MediGuideテクノロジー」を発表した。同日,アジア初の導入施設である杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)において記者視察発表会を開催し,革新的な被ばく低減技術の有用性をアピールした。
MediGuideテクノロジーは,心臓カテーテル手術などにおける被ばく線量を低減させるシステム。同システムでは,まず手技開始前にナビゲーションの基本画像となるX線透視画像を録画する。基本画像は,手技中は心拍に同期してループ再生される。この基本画像上に専用カテーテルの先端の位置と方向が表示されることで,X線透視を行わなくてもカテーテルの状態を把握することができるようになる。このカテーテルの先端が表示される原理はGPSと似た仕組みで,専用カテーテルに超小型センサが内蔵されており,X線透視装置のディテクタ部に内蔵された3つの専用コイルから発生する周波数の異なる微弱な電磁場により,カテーテルとコイルまでの位置と距離を正確に把握し,リアルタイムに基本画像上に反映させている。これにより,従来の手技よりもX線透視時間が大幅に短縮され,被ばく線量を低減することができる。また,心拍数の変化や呼吸変化,患者の動きに応じて基本画像を自動補正する機能のほか,必要があればX線透視画像を追加撮影することも可能となっている。
発表会では,まずはじめに杏林大学医学部放射線医学教室主任教授である似鳥俊明氏が,「医療被ばくとあたらしい低減化技術」をテーマに,医療被ばくの歴史とインターベンショナルラジオロジー(IVR)でのMediGuideテクノロジーによる被ばく低減に対する期待について講演した。似鳥氏は,冠動脈治療やシャント形成術など,さまざまなIVRに応用が可能であるとし,まだ9例という少ない使用経験ながら,従来の手技に比べて約12.5%に被ばく線量が低減されたことを紹介した。
続いて同大学医学部第二内科学教室臨床教授の副島京子氏が,「不整脈治療における放射線被曝低減の重要性」と題し,MediGuideテクノロジーを使用した臨床経験から,そのメリットを紹介した。副島氏は,不整脈治療において医療被ばくとマッピングシステムの精度が課題であるとした上で,MediGuideテクノロジーでは2〜3秒の術前に撮影した基本画像でカテーテル手術を行えるため,被ばく低減が実現できると同時に,基本画像の撮影の際に造影することで弁などX線透視では映りにくい部位についても同定することが可能となるというメリットを挙げた。また,患者の呼吸なども補正してカテーテルの位置を表示するため,安全で正確な治療にも貢献していると語った。さらに,MediGuideテクノロジーでは新しいツールや穿刺法などが必要ないため,従来の手技を変えることなく被ばく低減が実現できるということも大きなメリットであると述べた。
次に,ライプチヒ大学心臓病センター循環器科准教授のフィリップ・ソマー氏が「MediGuideテクノロジーのご紹介」として,MediGuideテクノロジーを使用した臨床成績からの見地を報告した。ソマー氏は,自身が行った400例を超えるMediGuideテクノロジーを使用したカテーテル手術におけるX線透視時間の学習曲線を示し,現在では1分未満で手技を終えることができるようになったと述べた。また,MediGuideテクノロジーと従来型のX線透視装置によるカテーテル手術を比較した臨床成績を提示し,X線透視時間,X線照射量が90%低減できるだけでなく,合併症についても低減されている可能性があることを示唆した。
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最後に,セント・ジュード・メディカル日本代表の笹井英孝氏とAF/CRMマーケティングの浦崎 学氏による同社の製品戦略とMediGuideテクノロジーの説明が行われた。説明では,MediGuideテクノロジーについて「あらかじめ録画したシネ画像をループ再生することによる被ばく低減」「PRS(患者リファレンスセンサ)とECG(心電図)の同期による補正」「磁場内でセンサ内蔵の専用デバイスを正確に誘導」の3つのポイントをアピールした。
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なお,現在MediGuideテクノロジーを搭載できるのはシーメンス社の装置だけに限られているが,今後は他社製の製品にも対応する予定となっている。
●問い合わせ先
セント・ジュード・メディカル株式会社
http://www.sjm.co.jp/