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第34回医療情報学連合大会(その3)
地域包括ケアや医療IDなどの医療施策に関するテーマを取り上げる

2014-11-17

活発に意見交換された大会企画3「在宅医療連携とはなにか」

活発に意見交換された大会企画3
「在宅医療連携とはなにか」

第34回医療情報学連合大会(第15回日本医療情報学会学術大会)3日目の11月8日(土)には,大会企画3が9時からA会場で行われた。セッションのテーマは「在宅医療連携とはなにか」。このテーマについて,高林克日己大会長が座長を務め,地域包括ケアシステムの整備が進む中,在宅医療や介護との連携について,ITをどのように活用していくべきか,その事例が発表された。

まず,高林大会長がセッションの目的を説明するためにわが国の在宅医療の動向について説明し,多職種連携を円滑に行うためにはITの活用がカギを握ると説明。情報共有の仕組みとしてShow型とSend型という2つについて解説した。次いで登壇した小笠原内科の小笠原文雄氏は,携帯電話のビデオ機能を用いた遠隔診療の事例を紹介した。小笠原氏は,遠隔診療は保険診療にはならないが,患者や家族の満足度が高く,安心して生活でき,職員側の満足度も高くなると述べた。次いで,平野医院の平野 清氏は,千葉県柏市における医師会と行政などが連携して取り組んでいる,クラウドによる在宅医療での多職種連携について報告した。平野氏は,職員間のコミュニケーション強化の施策を紹介した上で,タブレットやPCで情報共有を行うシステム運用について報告。1市民あたり年間2.5円のコストがかかるが,これを氏が負担し,参加施設は通信費だけで運用できていると述べた。また,最後に登壇した桜新町アーバンクリニックの遠矢純一郎氏は,多職種連携を行うには,日々記録された情報を共有することが重要であると説明。地域間で情報を共有できる「EIR」を紹介した。また,遠矢氏は,最近では「LINE」の活用も進んでおり,患者ごとにグループを作成し,多職種間での情報を共有していると説明。SNSの有用性を示唆した。

次いで,A会場では,東北大学の中谷 純氏が座長を務め,日本地域医療福祉情報連携協議会との共同企画12「日本地域医療福祉情報連携の実像」が設けられた。このセッションでは,始めに兵庫医科大学の宮本正喜氏が,地域医療再生基金を基に兵庫県が構築した阪神医療福祉情報ネットワークシステム「h-Anshinむこねっと」について解説した。むこねっとでは,情報共有システムに加え,二次救急システム,医療機関機能情報システムを地域の医療機関が利用している。また,続いて登壇した島根県立中央病院の小阪真二氏は,島根県が運用している「まめネット」に関して発表した。小阪氏は,まめネットは県内の医療機関にとっての公共インフラであり,まめネットを活用して遠隔画像診断や感染症対策などが行われていると説明。現在,28医療機関のカルテ情報が参照できるようになっていると報告した。さらに,最後の発表では,東京医科歯科大学の田中 博氏が「地域医療福祉情報連携の世代的発展と次世代への展望」をテーマに登壇した。田中氏は地域医療連携システムについて,第一世代,第二世代,第三世代に分けて,それぞれの特長を説明。第一世代は集中型,センター型とし,第二世代は分散型,診療情報参照型であると述べた。田中氏は,第三世代のシステムは,医療と介護の連携させるものであると述べ,将来展望として圏域階層的な地域総合医療総合システムへの展開を説明した。

共同企画12「日本地域医療福祉情報連携の実像」の総合討論

共同企画12「日本地域医療福祉情報連携の実像」の
総合討論

 

 

B会場では,長崎大学の松本武浩氏を座長として,ワークショップ7「地域医療ICT連携の真価と可能性〜長崎県『あじさいネット』における価値ある活用法とその評価」が行われた。あじさいネットは,情報参照型の地域医療連携システムとして,NEC系のID-Linkと富士通系のHumanBridgeの両方のシステムをNTTデータのポータルサイトを利用して相互利用できる仕組みを構築し,現在では長崎県全域で薬局を含め267施設が参加,登録患者数4万人で運用されている。ワークショップでは,あじさいネット構築・運用の中心的役割を担ってきた松本氏がこれまでの経緯と運用のポイントを説明し,実際の活用状況について保険薬局,在宅医療,大学を中心としたカンファレンス,リウマチの専門診療とそれぞれの立場から発表された。

座長の松本武浩 氏

座長の松本武浩 氏

講演者によるディスカッションの様子

講演者によるディスカッションの様子

 

午後からはA会場で産官学共同企画1「産官学共同公開討論会」が設けられた。この討論会のテーマは,「地域連携とそれにまつわる政策〜医療とID,その先〜」。厚生労働省の中安一幸氏が座長を務めた。パネリストとしては日本医師会の石川広己氏,厚生労働省の芝 真理子氏,高林大会長,内閣審議官の向井治紀氏,国立成育医療研究センターの矢作尚久氏,医療情報システム開発センターの山本隆一氏が参加。医療分野のID活用について,「番号」と「電磁的符号」の特性と利用場面,プライバシーの考え方,地域連携・医学研究への活用などについて,意見が交わされた。

参加者の関心を呼び多くの参加があった産官学共同企画1「産官学共同公開討論会」

参加者の関心を呼び多くの参加があった
産官学共同企画1「産官学共同公開討論会」

 

 

今回の連合大会には,約2800人が参加。「医療情報学が医生物学を造る〜医療情報学による医学の革新〜」というテーマの下,5日のプレコングレスも含め,密度の濃い4日間となった。なお,第35回医療情報学連合大会(第16回日本医療情報学会学術大会)は,2015年11月1日(日)〜11月4日(水)の4日間,沖縄コンベンションセンターとカルチャーリゾートフェストーネ(沖縄県宜野湾市)で開催される。大会長は,山本隆一氏。テーマは「医療情報の利活用とプライバシー保護〜二兎を追え〜」である。

2015年の第19回春季学術大会大会長を務める中谷 純氏

2015年の第19回春季学術大会大会長を務める
中谷 純氏

次回大会長の山本隆一氏

次回大会長の山本隆一氏

 

 

●問い合わせ先
千葉大学医学部附属病院 企画情報部内
TEL 043-226-2346(代表)
http://www.ho.chiba-u.ac.jp/jcmi2014/

 

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