2014-8-5
基調講演などが行われたメイン会場
シーメンス・ジャパン(株)は2014年8月3日(日),東京コンベンションホール(東京都中央区)において,「Advanced Breast Conference」を開催した。同社では,乳がん診療を対象としたイベントとして,2010年から「Breast Imaging Workshop」を開催してきた。Advanced Breast Conferenceは,それを発展させる形で開催された。同日は,NPO法人乳がん画像診断ネットワークの「乳腺画像診断ワークショップ」も開催され,基調講演は合同プログラムの形がとられた。
その基調講演は,2つの講演が設けられた。司会は,乳がん画像診断ネットワークの副理事長で,医療ジャーナリストの増田美加氏が務めた。先に登壇した昭和大学病院の中村清吾氏は,「日本人の乳がん—現状と今後の対策—」をテーマに講演した。中村氏は,まず日本人の食生活が戦後から現在に至る中で,畜産物や油脂類が増加し,それに起因してがんの罹患者が増えていると述べた。特に乳がんは,出産の高齢化や初潮の低年齢化,閉経年齢の高齢化などの要因に加え,高脂肪食,肥満などにより,リスクが高くなっているとし,運動と罹患リスクの関連を見るためのmetabolic equivalents(METs)について説明した。さらに,検診の受診率が低いことも問題であると指摘した。中村氏は,乳がん診療の歩みとして,1900年初頭に乳房切除術が登場し,1980年代から乳房温存療法が進み,2000年以降は分子遺伝学的アプローチが登場したというパラダイムシフトについて説明。The National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のスクリーニングガイドラインを取り上げた上で,BRCA1とBRCA2陽性者に対する対応について解説した。さらに,中村氏は,HER2陽性乳がんに対する分子標的薬である「T-DM1」などを紹介し,今後の乳がん診療には,分子生物学の理解も重要であるとまとめた。
次の講演では,亀田京橋クリニックの戸﨑光宏氏が登壇。「NPO法人乳がん画像診断ネットワークの活動について」とのタイトルで講演した。戸﨑氏が理事長を務める乳がん画像診断ネットワークは,2012年11月に設立された。その目的・コンセプトとして,医師や診療放射線技師,企業と患者を含む医療消費者が双方向で情報交換を行い,活動を共にすることで,医療消費者が「自分に合った乳がん診断を受ける環境やシステム」をつくり出すことを掲げている。これにより,医療消費者目線での乳がん画像診断の実現をめざしている。戸﨑氏は,この活動を通じて,地域間・施設間の乳がん画像診断の格差を埋め,乳がん画像診断の拠点施設と一般施設とのネットワークを構築するという考えも示した。そこで現在,乳がん画像診断ネットワークでは,検討会,Webでの情報発信,出版活動,画像診断のネットワーク構築,という4形態での活動を展開している。検討会としては,アカデミックセミナーやこの日開催されたワークショップが挙げられる。また,出版活動としては,「乳がん 検診と診断 知っておきたいこと」(非売品)を2014年6月に発行している。講演の中で戸﨑氏は,これらの活動への理解と協力を求めた。
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続いて,同社クリニカルプロダクト事業本部超音波ビジネス本部本部長の下山俊介氏が挨拶した後,最新技術に関する臨床講演が行われた。2題の講演のうち,まず「トモシンセシスの有用性」をテーマに,国立病院機構東名古屋病院の遠藤登喜子氏が登壇した。遠藤氏は,マンモグラフィのデジタル化によって登場したトモシンセシスについて,メーカーによって,振り角が小さい装置と振り角の大きな装置があると説明。振り角の小さな装置は“厚い画像”となり2Dに近い画像が期待できると述べ,振り角の大きな装置では断層面での詳細な情報を期待できると,それぞれの特性を解説した。そして,2種類の濃淡情報のトモシンセシス画像25例の比較結果について,腫瘤や構築の乱れ,石灰化などの評価を説明した。遠藤氏は症例画像を供覧した上で,トモシンセシスの臨床応用について,2Dマンモグラフィに追加することで,感度が確実に上昇すると述べる一方,良性病変が視認できることから特異度が下がる可能性を示唆した。また,トモシンセシスにより,組織性状を加味した診断に進むことができると述べた。これらを踏まえ,遠藤氏は,診断の有効性についての定量的評価と使用法の検討が今後必要であるとまとめた。
2題目の臨床講演では,医療法人成和会山口病院の栗栖美穂氏が,「超音波画像診断装置自動乳房ボリュームスキャナ(ABVS)の有用性」をテーマに講演した。栗栖氏は,同院におけるABVSを用いた検査プロトコルについて,乳房中央・内側・外側各1スキャン1分,両側6スキャンで,合計約10分で行っていると説明した。また,手動での検査と比較し,ABVSは検査者に依存することなく,高い再現性を得られることを特長に挙げた。一方で,検査時には,圧迫感が伴いやすいことについても言及した。栗栖氏は,同院において2010年7月の導入以降,2014年6月までに5402例に対して,ABVSを施行し,要精査率3.7%,乳がん発見率1.4%になったという結果を示した。そして,表皮所見,多発病変・大きな病変,病変の広がりなどの診断におけるABVSの有用性について,症例を提示しながら解説した。
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この講演の後,参加者はあらかじめ申し込んでいたグループに分かれて,3テーマのハンズオントレーニングをそれぞれ受講した。「デジタルマンモグラフィ読影のポイント学習」では,トモシンセシス画像の読影も含めて行われ,医療法人明和病院の岸本昌浩氏と国立病院機構姫路医療センターの小倉信子氏が講師を務めた。また,「マンモグラフィ装置ハンズオントレーニング」では,装置を使い,ベテランユーザーが手技のポイントを解説する「マンモグラフィポジショニング検討会」と,同社技術者が解説する「デジタル・ブレスト・トモシンセシスの基礎」に分けて行われた。「超音波装置ハンズオントレーニング」では,専用ワークステーションを用いた「ABVS Workplace症例解説」とモデルを使った操作実演を行う「ABVSハンズオントレーニング」が用意された。
充実したプログラムの中,150名の参加者は,各々自らの知識を深めるとともに,技術向上のために最後まで熱心にトレーニングに取り組んでいた。
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●問い合わせ先
シーメンス・ジャパン株式会社
へルスケアマーケティングコミュニケーショングループ
TEL 0120-041-387
http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging