2014-7-29
会場の様子
(株)フィリップスエレクトロニクスジャパンは,2014年7月26日(土)に東京カンファレンスセンター有明(東京都江東区)にて「Philips 前立腺MRI Update 2014」を開催した。講演は2部構成で,総論として第1部にMRIの基礎についての講演が1題,各論として第2部に前立腺MRIについての講演が3題行われた。初めに,今回代表世話人を務めた川上 理氏(埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科)が挨拶に立ち,本講演会は,各分野の第一人者による実践的で詳細な講演を聴講でき,かつ,泌尿器科医と放射線科医の知識や情報をフュージョンできる貴重な機会であると述べた。
第1部では,川上氏が座長を務め,高原太郎氏(東海大学工学部医用工学科)が「泌尿器科医にとってここは押さえるべきMRI画像の原理と全身拡散強調画像をわかりやすく」と題して講演を行った。高原氏はまず,MRIの原理について解説した上で,T2強調画像(T2WI),T1強調画像(T1WI)を中心に基本的な画像コントラストを紹介。さらに,拡散強調画像(DWI)の原理や病変検出における有用性を示し,computed DWI(cDWI)により短時間撮像でSNRの良い画像を得られるようになったと述べた。また,DWIとADCを合わせて評価に用いることは有用ではあるものの,ADCは,腫瘍だけでなくT2強調画像で信号が抑制される部分もそのまま黒く描出される弱点があることから,cDWIで病変を見つけてADCでROIを設定する方法が推奨できるとした。高原氏は最後に,最近取り組んでいる全身DWIによるがんスクリーニングを紹介。PETでは不可能な毎月の経過観察もできる方法であり,PETと比べて検出率に遜色はない傾向であること,また,専用コイルがなくても撮像可能であることなどを説明した。この全身DWIは参加者の高い関心を集め,質疑応答でも活発な意見交換が行われた。
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休憩を挟んで行われた第2部では,大家基嗣氏(慶應義塾大学医学部医学研究科泌尿器科学教室)を座長に3題の講演が行われた。
まず,高橋 哲氏(神戸大学医学部附属病院放射線科)が「前立腺MRI診断〜Tステージの前立腺がんを中心に」と題して講演を行った。前立腺がんでは,本来であればステージングの前段階にかかわる病変検出(T1c)と局在診断(T2a/b/c)がTステージに含まれるという特殊性を説明した高橋氏は,前立腺がんの画像診断では高コントラスト分解能と高空間分解能が求められていると述べ,T1c,T2a/b/c,T3aのそれぞれのステージにおける画像診断のポイントを解説した。病変検出には,高いb値のDWIが有用であることや,移行領域のがん検出には,T2WIに高b値のDWIを加えることで検出率が向上することを紹介した。また,局在診断においては,技術進歩によりDWIの空間分解能も向上しつつあり,DWI,ADCの閾値設定に留意すれば病変の広がりや輪郭評価に用いることができるとした。高橋氏は,前立腺外進展についても,三次元撮像で高空間分解能画像が得られつつある現状を説明。MRIでは診療戦略の決定に寄与する有用な画像情報を提供できるとまとめ,臨床と画像診断の密な連携を求めた。
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次に,鴨井和実氏(京都府立医科大学附属病院泌尿器科)が「MR/US Fusion Biopsyの現状と将来展望〜US Fusion Biopsyの技術的最新情報や今後の動向を含めて」を講演した。鴨井氏はまず,multiparametric MRI(mMRI)を撮像し,PI-RADS(ESURスコア)により判定した337例をフォローアップした検討を紹介。MRIで異常部位を認識しても,ターゲットが小さい場合には超音波ガイド下生検では正確な穿刺が困難であり,MRIと三次元超音波画像を同期させるMR/US Fusion Biopsyを用いることで,より精密な生検の計画とターゲッティングが可能になることや,PSA値から前立腺がんが疑われる場合には,mMRIを撮像することで不必要な生検を減らすことが可能であることを報告した。さらに,mMRIに基づいたターゲッティング生検を行って病理診断を加味した3D cancer mapについて述べ,正確な局所診断やindex tumorの性質の予測において有用であるとし,最適な治療方法選択と治療効果向上に貢献する可能性があると締めくくった。
最後に,片平和博氏(熊本中央病院放射線診断科)が「MR Guided Biopsy〜国内での最新の知見と海外での見解を含めて」と題して講演を行った。片平氏は,ルーチン生検には経直腸超音波検査(TRUS検査)を実施しつつ,臨床的に強く前立腺がんが疑われながら生検陰性が続く症例については,ターゲット部位へのヒットを確実に確認できるMRIガイド下生検を検討することが良いと述べ,MRIガイド下生検の実際や利点,短所を説明した。MRIガイド下生検には,生検ヒット率が高い,尖部腹側の確実な生検が可能,significant cancer率が高い,小さい病変でも穿刺可能,生検回数が少ないといった利点があり,自由診療であることや検査時間延長の傾向があるといった短所があるものの,MRIガイド下生検を診断フローに組み込むことで,治療が必要な症例を早めに治療へとつなげることができると述べた。
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