2014-3-24
未来医療開発センターのねらいと推進体制
富士通(株)は,ヘルスケア事業の売上高を2018年度に2000億円にまで伸ばすことを発表した。2014年3月18日(火)に,富士通トラステッド・クラウド・スクエア(東京都港区)で行われた記者説明会において,執行役員の合田博文氏が明らかにした。
記者説明会では,この目標に向けた取り組みとして,同社が社長直轄の組織として昨年12月に設立した「未来医療開発センター」が,合田氏より紹介された。同センターは,政府が掲げる「日本再興戦略」の柱の1つである「健康寿命の延伸」への貢献をめざしている。健康増進や重症化予防,早期発見,新薬創出,個別化医療のために,同社のICTを活用するとしている。また,新技術の開発スピードを強化し,ビジネスの拡大を図るとともに,大学や研究機関,製薬企業,医療機器メーカーとの連携・協業に取り組んでいく。具体的なミッションとして,合田氏は,次の5点を挙げた。
(1)国家プロジェクト(文部科学省COI STREAM:革新的イノベーション創出プログラム拠点事業など)から創出される次世代医療情報システムビジネスの開拓
(2)ゲノムなどのバイオバンク,コホートによる健康情報,電子カルテ診療情報を統合した医療ビッグデータビジネス(健常者〜患者までをカバー)
(3)シミュレーションビジネスの企画・推進
・放射線画像などと連動した臓器シミュレーションの臨床活用(診断支援)
・スパコン活用
(4)IT創薬を目的とした化合物設計サービスの事業化推進
(5)電子カルテなどのグローバル展開
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これらを踏まえた上で,同社では,現在,電子カルテや地域医療ネットワークシステムなどを中心としたビジネスをさらに発展させるとともに,バイタルセンシングや生体シミュレータ,1細胞診断など長期的な技術開発を進める。これにより,医療ビッグデータ,次世代電子カルテ,治験・創薬をキーワードとした情報活用基盤を構築していくこととしている。そのために,2014年度から5年間で300億円程度をヘルスケアビジネスに投資。2014年度1100億円の事業規模を2018年度には2000億円にまで成長させる。このうち,未来医療開発センターの新しいビジネスとして700億円を見込んでいる。
合田氏の事業説明に続き,同センターSVPの佐藤秀暢氏が,これまでの医療分野における取り組みを紹介した。佐藤氏は,大規模病院で34%,このうち大学病院で48.6%のシェアを持つ電子カルテ事業や,全国で採用されている地域医療ネットワーク「HumanBridge」,治験業務支援システムや安全性情報管理システムなどの現状を解説した。続いて,同じくSVPの松本俊二氏が,新たなヘルスケア事業創出に向けた取り組みとして,1細胞診断システム,IT創薬,心臓シミュレータ,個別化医療のためのデータ解析基盤構築などを紹介。さらに,同社ヘルスケア・文教システム事業本部生体シミュレーション開発室室長の門岡良昌氏が,心臓シミュレータの技術について説明を行った。
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最後に,来賓である東京医科歯科大学大学院難治疾患研究所生命情報学教授の田中 博氏が登壇。「ゲノム医療の国際的状況と統合データベースの必要性について」をテーマに講演した。田中氏は,米国では20以上の医療機関でゲノム医療が日常臨床実践業務として行われているなどの現状を説明。ゲノム医療の基礎となるデータベースやバイオバンクの概念,英国や欧州での普及状況について言及した。
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説明会の後の質疑応答で,合田氏は,電子カルテなどの医療情報システムで培った「情報プロセス」のノウハウを生かし,同社の持つ基礎技術やスパコンなどを組み合わせるという富士通のアドバンテージを強調した。
●問い合わせ先
富士通株式会社
未来医療開発センター
TEL 03-6252-2701