2015-12-3
独自開発の仮想化技術を搭載した
新バージョンの「SYNAPSE 5」
RSNA 2015[第2日目:11月30日]
FUJIFILM Medical Systems(富士フイルム)は,同社のPACSであるSYNAPSEのソフトウエアアーキテクチャを一新した,新しいバージョンである「SYNAPSE 5(バージョン5)」を発表した。SYNAPSE 5は,日本でも2016年度から投入予定である。
SYNAPSE 5の特長は次のとおり。
1) 超高速画像表示
2) 従来比50%のネットワーク利用帯域の削減
3) クライアントにビューワソフトダウンロード不要のZERO VIEWERシステム
4) サーバサイドレンダリング
5) 従来バージョンからのアップグレードの提供
SYNAPSE 5では,高速化や細い帯域のネットワークでも快適に利用できるように,プラットフォームの機構を一から作り直し,サーバですべての処理を行うサーバサイドレンダリングと,クライアントには特別なアプリケーションを必要としないZERO VIEWERシステムを採用。画像に対する処理をすべてサーバ側で行うことでクライアントの負荷を減らし,2000枚を超えるようなCTデータでも一瞬で読み込み,表示することが可能になった。また,クライアント側のブラウザのプラグインなどへの依存性をなくし,IEやChromeにも対応するマルチプラットフォームを実現した。こういった仮想環境の構築では,サードパーティ製の製品が使われることが多いが,クライアント数の増加によってライセンス料も増加するという問題があった。SYNAPSE 5では仮想環境の仕組みを独自に開発し,コストの低減にもつながる。また,クライアントはデータを持たないため,画像データはもちろん,履歴などが残らないなどセキュリティが担保されている。
さらに,従来バージョンからのアップグレードを提供するほか,バージョン5上で前バージョンのビューワなどのアプリケーションを動かすことが可能になっている。1つのSYNAPSE 5のサーバで3つのSYNAPSEシステムまで動かすことができる。SYNAPSEは国内のPACSではトップシェアと多くのユーザーを持っており,既存のユーザーに対して,システムの移行やバージョンアップがしやすい環境を提供する。
富士フイルムは,2015年5月に米国においてVNA(Vendor Neutral Archive)でトップクラスの実績を持つTeraMedica社を自社化した。VNAは,これまで別々のサーバで管理されていたPACS,循環器動画像,非DICOM画像などをベンダーにかかわらず,統合的に管理することで,データの移行や運用,システム更新などの手間やコストを抑える。ヘルスケアグループによる病院運営が多い米国では,以前からベンダーの違うシステムの運用や管理が問題になっており,VNAへの取り組みが先行していた。TeraMedica社は,Mayo Clinicと協力してVNAを開発し,システム設計や拡張性で高い評価を受けており,富士フイルムも2013年から提携を行い,VNAの導入を進めてきた経緯がある。日本での導入についても進められており,2016年1月から大阪大学で国内第1号システムが稼働の予定となっている。
3D画像処理システムの「SYNAPSE VINCENT」は,2015年末にリリース予定のバージョン4.4で追加される新機能を中心に紹介した。
“嚢胞腎解析”(オプション)は,難病指定されている多発性嚢胞腎(ADPKD)に対して,進行を抑制する治療薬が承認されたが,その処方のために両腎体積の測定が条件となっていることから,それに対応したアプリケーション。非造影のCT画像を読み込むと腎臓を自動認識し長径をプロットするだけで自動的に体積を計測することができる。そのほか,新機能として“腹部パフュージョン(CT)”,“心筋パフュージョンCT”(ともにオプション)が紹介された。
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